第1回石川県国民保護実動訓練」監視行動(2006.10.29)について
「監視行動報告書」(06.11発行)目次
目次
はじめに
監視行動にあたって
訓練の概要
1.事態の想定
2.訓練の項目
具体的とりくみ
実動訓練の問題点
資料
実動訓練の問題点 より
1.石油コンビナート災害に至るテロとの想定だが、石油コンビナート災害対策としては、昨年までおこなってきた「石油コンビナート等防災計画」に基づく訓練の方が充実した内容である(応急防油堤構築訓練、海上流出油防除訓練等が含まれる)。参観者に対して最も見栄えのする最新の大型高所放水車やはしご車を使った消火訓練を見せて、C会場に移動するという流れであった。
2.大型バス(北陸鉄道)4台で移動する「避難住民」は、消防団関係者とその家族、町内会長がほとんどであった。避難車両は白バイを先頭に出発。前2台はパトカーが先導、後ろ2台は陸上自衛隊の軽装甲車が前後に着き、交差点は信号調整と警察官の指示により一般車両を止めての「避難」であった。
避難住民を乗せたバスの先導は警察で対応できるものである。むしろ、自衛隊の先導は国際人道法の軍民分離の原則に反し、かえって住民を危険にさらすシナリオとなっている。白旗や赤十字マークさえつけていない。
3.「国民保護総合訓練」といいつつも、前記避難にかぎらず、国民保護計画を適用しなくても行える訓練ばかりである。(自衛隊がいなくてもできる訓練ばかりである)
(1)不審者や不審船に対する対応は、従来から国民保護法とは関係なく県警や海上保安庁が、業務として行ってきている。
(2)海難救助についても、従来から総合防災訓練等において県消防防災航空隊や小松救難隊が対応してきた。
(3)爆発物、化学剤の対応についても県警機動
隊や消防署が対応してきている。
以上から考えて、今回の訓練の第一の狙いは、有事体制の一環としての国民保護実動訓練の実績づくりである。第二の狙いは、自衛隊を街や住民の中に登場させるための訓練である。街に現れる銃を携帯した自衛隊員(写真班以外は銃を携帯)や軽装甲車は、当初は恐怖感をもって見られるが、テロリストから住民を守る存在と印象づけ、住民に受け入れられるようになっていくのである。
4.緊急対処事態の認定や、自衛隊の避難誘導を要請するに至る事態の設定があいまいである。この箇所は図上訓練でおこなわれているとはいえ、現地のどのような情報が緊急対処事態の認定につながったのか、あるいはどのような事態となったから自衛隊の出動を要請したのかわからない。これらは国民(住民)の権利義務との関係でも重要な節目である。防災無線で避難指示がなされたが(10時00分)これでは住民にとっては何が起こったのか分からないまま訓練にかり出され、人権侵害が平然と行われかねない。
5.訓練終盤は海上保安庁による「海上警戒警備訓練」として、巡視船、巡視艇が不審船を追跡、停船させ、巡視艇から海上保安官が不審船に移乗する訓練が盛り込まれていた(上記写真)。巡視船は銃撃態勢をとっているとのことであった。参観者からは「すぐに撃ってしまえ」との声もあがる。
さらに最後の訓練項目として爆発物、化学剤の処理訓練が警察機動隊と金沢市消防局によっておこなわれた。訓練全体としては子どもの見学もありなごやかな雰囲気であったが、訓練の締めくくりは近隣諸国に対する脅威をあおる「見せ物」として十分の内容であった。
6.日米両国政府が一体となり朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する
制裁を叫び、北朝鮮を追い込み、東北アジアの軍事的緊張を高めているい
ま、自治体がさらに脅威を助長している。時期的にも最悪の訓練であった
といえる。
7.今回はバス4台の避難であるが、規模を大きくしたときに都市部では現実的に対応できないことは明らかである。こういう事態を招かないよう自治体としても平和外交に努力することが大切である。有事法発動を招くシナリオは米軍の先制攻撃とそれに追随し後方支援する政府の対応によって現実味を帯びるのであり、自治体としても日米同盟の強化反対、米軍への後方支援反対を政府に働きかけていくべきである。
8.金沢市あるいは石川県としては、万が一の時に攻撃対象となり、県民の安全を脅かす金沢駐屯地や小松基地、さらには志賀原発の存在自体を問題にしていくべきである。