志賀原発運転停止の申し入れ 県、北陸電力
2006年5月11日
石川県知事
谷 本 正 憲 様
石川県平和運動センター
代表 嶋垣 利春
社会民主党石川県連合
代表 宮下登詩子
申 入 書
金沢地方裁判所は3月24日、志賀原子力発電所2号機をめぐる住民訴訟で、耐震設計指針の不備を指摘し、被告(北陸電力)に対し運転の差し止めを命じる判決を下しました。
判決は志賀2号機の耐震設計について、①直下地震の想定が小規模すぎる、②M7.6が想定される邑知潟断層帯による地震を想定してない、③原発敷地での地震動を想定する計算方法に妥当性がない-などと明解に耐震設計の手法を否定したのです。
原発の耐震安全性の問題点はかねてから指摘されており、高速道路の高架橋が倒れ、新幹線も寸断された阪神・淡路大震災を契機に、原発の耐震性への国民の関心もかつてなく高まりました。ところが、ここで一般建築物の耐震基準は見直されたものの、原子力安全委員会や電力会社は原発に関しては現行指針で問題ないと強弁してきたのです。
その論拠は私たちを次々と襲う地震によって突き崩されていきました。2000年の鳥取県西部地震や2004年の新潟県中越地震は地震学の「直下地震」の知見を覆しました。2005年8月の宮城県沖地震では女川原発の想定地震動を越える地震動が測定され原発に適用されている耐震指針の不備も明らかになりました。原子力安全委員会は鳥取県西部地震後、ようやく重い腰を上げ、2001年7月から耐震指針検討分科会を開催してきました。しかし、現行指針でも耐震性は確保できるという基本認識であったため、最新の知見を取り入れた指針の見直し作業は遅々として進みませんでした。
一方、阪神・淡路大震災後に制定された「地震防災対策特別措置法」にもとづき、文部科学大臣を本部長とした「地震調査研究推進本部」が設置され、昨年3月には邑知潟断層帯の新たな評価として、M7.6程度の地震の発生を推定し(30年以内の発生確率2%)、公表しました。これは国や自治体の地震防災に役立てることを念頭に置いたものですが、志賀原発もこの研究成果を踏まえた施設とすることは当然のことです。
今回の判決は、最新のデータに立脚することなく、新たな地震学の知見も踏まえない、まさに欠陥だらけの28年前の耐震指針に基づいて建設された志賀原発に対し運転差し止めを命じたのです。国民の安全を守るために必要な耐震対策を取ろうとしない電力会社や国の姿勢を厳しく批判し、原発震災の危険性に対し強く警鐘を鳴らしたものといえます。
訴訟の対象は2号機ですが、以上の指摘は1号機にもそのまま当てはまります。
県民のいのちと暮らしを守る立場から考えるならば、志賀1,2号機の運転を現状のまま継続するという選択肢はありません。「安全性に問題はない」とする北陸電力の主張とは裏腹に国は耐震設計指針の見直し作業を急ピッチで進めています。4月末にまとめられた「改訂耐震設計審査指針(案)」が果たして妥当なものかどうか、仮に指針が最新の知見に照らして妥当なものであったとして、志賀1,2号機が指針に適合するかどうか再評価が求められます。そして必要な耐震工事がおこなわれ耐震安全性が確認されるまで、運転を停止するのは当然のことでしょう。
ところが北陸電力は運転停止どころか、プルサーマル計画の2010年度の導入に不退転の決意で望むと表明しています。プルサーマル計画はその危険性、エネルギー収支、経済性、廃棄物問題などエネルギー政策として新たな問題が多数存在します。さらに国も認めざるをえない欠点として「安全余裕の低下」があります。耐震面での危険性が問われているときに、さらに危険性が増す計画を受け入れることなどできるわけがありません。安全性を追及する姿勢が全く感じられない北陸電力に原発という危険な施設を扱う資格はないと私たちは考えます。
県民のいのちと暮らしを守るため、下記項目について対応されますよう申し入れます。
記
1.金沢地裁判決で指摘された耐震設計指針の不備を踏まえ、安全協定第12条(適切な措置の要求等)にもとづき、北陸電力に対し志賀原発1、2号機の運転停止を求めること。
2.耐震対策に欠陥のある志賀原発で、さらに「安全余裕」を引き下げるプルサーマル計画の導入など論外である。プルサーマル計画に同意できない立場を明らかにすること。