再び示された沖縄の民意を尊重し名護市辺野古新基地建設の中止を求める声明

再び示された沖縄の民意を尊重し

名護市辺野古新基地建設の中止を求める声明

平和フォーラム

2月24日、名護市辺野古の米軍新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票が投開票された。その結果、投票資格者の過半数を超える投票によって、新基地建設反対72%、賛成19%どちらでもない9%の結果となり、新基地建設に対する県民の圧倒的反対という意思が示されることとなった。

国土の0.6%に在日米軍施設の70%が集中することによって、沖縄では自由、平等、人権、民主主義がはく奪され、日本がアメリカの属国であるかのようなしわ寄せが、理不尽に沖縄に集中してきた。

この間、2度にわたる沖縄県知事選挙で「基地はいらない」とする民意が示されてきたが、ことあるごとに安倍政権は、これらの公職選挙では新基地建設以外にも「様々な争点がある」ことを理由に無視し、また、法律を濫用し基地建設を強行してきた。

しかし、今回の県民投票はまさに新基地建設のみを対象にしたものであり、いかなる言い逃れも許されない。政府は新基地建設反対の圧倒的な民意に向き合わなくてはならない。

また、辺野古新基地建設については、埋め立て海域の軟弱地盤や活断層の存在、360件に及ぶといわれる高さ制限を超えた基地周辺建造物の存在など物理的に建設が不可能なことは明らかであり、さらに、埋め立て工費についても当初防衛省が示していた2400億円の10倍にも上る2兆5.500億円に膨らむと、沖縄県が試算していることからも、政府は速やかに建設計画を中止すべきである。

一方、来る2月27~28日に、第2回米朝首脳会談が開催されるなど東アジアは非核・平和の実現に向けて大きく動き出している中で、新基地建設がこうした流れに逆行するものであることも強く指摘しなければならない。

平和フォーラムは、この度の県民投票をしっかり受け止め、引き続き新基地建設反対の取り組みを日本の民主主義、立憲主義、地方自治を取り戻す闘いと位置づけるとともに、普天間基地の「5年の運用停止」という政府と県との約束履行を求め闘いを強化していく。

 

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首相官邸の質問制限に抗議する 2019年2月5日新聞労連HPより無断転載

首相官邸の質問制限に抗議する
2019年2月5日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 南 彰
首相官邸が昨年12月28日、東京新聞の特定記者の質問行為について、「事実誤認」「度重なる問題行為」と断定し、「官房長官記者会見の意義が損なわれることを懸念」、「このような問題意識の共有をお願い申し上げる」と官邸報道室長名で内閣記者会に申し入れたことが明らかになりました。 記者会見において様々な角度から質問をぶつけ、為政者の見解を問いただすことは、記者としての責務であり、こうした営みを通じて、国民の「知る権利」は保障されています。政府との間に圧倒的な情報量の差があるなか、国民を代表する記者が事実関係を一つも間違えることなく質問することは不可能で、本来は官房長官が間違いを正し、理解を求めていくべきです。官邸の意に沿わない記者を排除するような今回の申し入れは、明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の「知る権利」を狭めるもので、決して容認することはできません。厳重に抗議します。官房長官の記者会見を巡っては、質問中に司会役の報道室長が「簡潔にお願いします」などと数秒おきに質疑を妨げている問題もあります。このことについて、報道機関側が再三、改善を求めているにもかかわらず、一向に改まりません。

なにより、「正確な事実を踏まえた質問」を要求する官邸側の答弁の正確性や説明姿勢こそが問われています。2017年5月17日の記者会見で、「総理のご意向」などと書かれた文部科学省の文書が報じられた際に、菅義偉官房長官は「怪文書のようなものだ」と真っ向から否定。文書の存在を認めるまで1カ月かかりました。こうした官邸側の対応こそが、「内外の幅広い層に誤った事実認識を拡散させる」行為であり、日本政府の国際的信用を失墜させるものです。官邸が申し入れを行った18年12月26日の記者会見でも、菅官房長官は「そんなことありません」「いま答えた通りです」とまともに答えていません。

日本の中枢である首相官邸の、事実をねじ曲げ、記者を選別する記者会見の対応が、悪しき前例として日本各地に広まることも危惧しています。首相官邸にはただちに不公正な記者会見のあり方を改めるよう、強く求めます。

《追記》

そもそも官邸が申し入れのなかで、東京新聞記者の質問を「事実誤認」と断じた根拠も揺らいでいます。
記者が、沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設をめぐり、「埋め立て現場ではいま、赤土が広がっております」「埋め立てが適法に進んでいるか確認ができておりません」

と質問したことに対して、官邸側は申し入れ書のなかで、

「沖縄防衛局は、埋立工事前に埋立材が仕様書どおりの材料であることを確認しており、また沖縄県に対し、要請に基づき確認文書を提出しており、明らかに事実に反する」「現場では埋立区域外の水域への汚濁防止措置を講じた上で工事を行っており、あたかも現場で赤土による汚濁が広がっているかのような表現は適切ではない」

――と主張しました。

しかし、土砂に含まれる赤土など細粒分の含有率は、政府は昨年12月6日の参議院外交防衛委員会でも「おおむね10%程度と確認している」と説明していましたが、実際には「40%以下」に変更されていたことが判明。沖縄県が「環境に極めて重大な悪影響を及ぼすおそれを増大させる」として立ち入り検査を求めていますが、沖縄防衛局は応じていません。「赤土が広がっている」ことは現場の状況を見れば明白です。偽った情報を用いて、記者に「事実誤認」のレッテルを貼り、取材行為を制限しようとする行為は、ジャーナリズムと国民の「知る権利」に対する卑劣な攻撃です。

新聞労連は今年1月の臨時大会で、「メディアの側は、政治権力の『一強』化に対応し、市民の「知る権利」を保障する方策を磨かなければなりません。(中略)いまこそ、ジャーナリストの横の連帯を強化し、為政者のメディア選別にさらされることがない『公の取材機会』である記者会見などの充実・強化に努め、公文書公開の充実に向けた取り組みを強化しましょう」とする春闘方針を決定しています。今回の東京新聞記者(中日新聞社員)が所属する中日新聞労働組合は新聞労連に加盟していませんが、国民の「知る権利」の向上に向けて、共に取り組みを進めていきたいと考えています。

以上
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放射線医療総合研究所(放医研)複数の内部告発(北陸中日新聞19.2.18朝刊)

フクイチ(福島第一原発事故)の被ばく線量測定、「意図的」な「測定せず」「問題なし」、経産省の強い指導か。

20190218複数の内部告発 放医研の苦悩 採られなかった被ばくデータ 結論ありき、国の避難者支援版の文書 原発事故一カ月で幕引き準備 詳しく調べず「問題なし」

カテゴリー: PEACE石川(機関紙), トピックス, 住民の暮らしに直結する課題, 全国・中央・北信越, 反核・脱原発, 核兵器・放射能・核開発, 環境(原水禁、核燃、放射能・食品汚染), 脱原発・核燃, 護憲・憲法改悪反対・教育・歴史 | 放射線医療総合研究所(放医研)複数の内部告発(北陸中日新聞19.2.18朝刊) はコメントを受け付けていません

軍隊は国民を守らない -1969.2.8ジェット機墜落に関する国会答弁-

1969.2.8ジェット機墜落に関する国会答弁

○議長(重宗雄三君) 日程第三、緊急質問の件。

杉原一雄君から、自衛隊機墜落事故に関する緊急質問が提出されております。

杉原君の緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。発言を許します。杉原一雄君。〔杉原一雄君登壇、拍手〕

○杉原一雄君 私は、社会党、公明党、民社党を代表いたしまして、緊急質問をいたします。

それは、二月八日正午、金沢市の住宅密集地帯のどまん中に自衛隊機F104ジエット機が墜落し、自衛隊機の事故として最大の被害を与えた、惨たんたるF104ジェット機の墜落事故についてであります。

まず、被害者の皆さんに心からのお見舞いを述べるとともに、とうとい命を失われた四人の犠牲者の冥福を心から祈ります。そしてまた、二度とこんなおそるべき事故が起こらぬように心から念願しながら質問に入りたいと思うのであります。

まず第一に、なぜこのような大事故が起こったのかということであります。

私は、二月十日、社会党の堂森代議士を団長とする調査団に参加いたしました。それより先、先発隊の一人として、事件の起こった当日、二月八日午後三時に現地に入り、社会党石川県本部の協力で調査に入りました。爆発三時間後の現地は、氷雨降る中に、金沢市消防隊の努力にもかかわらず、もうもうと煙が立ち上がり、黒焦げになって倒壊した人家、へし折られた電柱、倒れかかっている人家の姿は、悲惨そのものであったのであります。この悲惨な廃墟の中から、被害者は怒りをこめて訴えました。ある人は、パイロットはどこへ行ったのだ、パイロットは無事だそうだ、どうして機体を海上か田や畑へ向けるように最善の努力をしなかったのだ、そしてまた、パイロットを警察に渡すことなく小松基地に連行したのは警察権の侵害ではないか、といった怒りであります。そしてまた、ある者は、自衛隊はかけつけてきた、しかも、カービン銃を肩にしながらかけつけてきてくれた、だが、消火などの努力をしないで、散乱する機体の破片を集めることに一生懸命であったのは一体どうしたのか、現場検証も終わっていないのに実にけしからぬという、素朴な疑惑と激しい怒りであったのです。

二月十日、防衛庁発表の見解によりますと、「経二尉の操縦する事故機は、小松基地に対し着陸姿勢に入った時点において落雷を受け、操縦不能になり、墜落したものと思われます」と述べています。現地をたずねた有田長官も談話の中で、「墜落は落雷のためだ」と述べておられるのであります。それはF104ジェット機に問題はない、そしてまた機体を放棄し、脱出した経二尉にも刑事上の責任がないという決定的判断を下そうとしておるのではないでしょうか。だが、はたしてそうだろうか。

第一点として、気象の判断に絶対ミスがなかったのかどうか。私たちの調査によると、気象観測は小松基地が独自に行ない、小松軍事基地に隣接する民間航空に対し、航空気象協定なるものによって、常にその情報を提供いたしておるのでありますが、民間航空飛行場をたずねたときに、金沢気象台の出張所の所長は、この情報をいただいて、その情報の判断に基づいて、東京羽田を立った民間飛行機を名古屋空港に着陸させることに決定し、現に着陸して無事であったと言っているのであります。なお重大なことは、二月十一日、経二尉が、金沢中警察署において取り調べを受けている中において、経二尉は、気象予報班から雷雲発生の連絡はなかったと言っているのであります。しからば、気象判断と、その気象についての緊急連絡の責任が欠けていたのではないだろうか。とすれば、その責任は一体どこにあるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。

第二点として、飛行訓練計画に重大なミスがあったのではないか。と申し上げますのは、従来、日本と同様にF104ジェット機を採用している西ドイツでは非常に事故率が多い。そうして、日本は幸いにして事故率年間五ないし六であるということが伝えられているが、はたしてどうか。それは一体なぜか。西ドイツと日本とを比較検討したことがあるのかどうか。私のつかんでいる情報では、昭和三十八年三月二十日、わが党の大森創造議員が、国会の中で、政府委員伊藤三郎との間における問答の中で、西ドイツでは空中から地上の目標に向かって降下爆撃、低空飛行などの訓練が多いので、事故がどうしても多発するおそれがある。だが、日本は従来、空対空、敵機の侵略を迎えて撃つということに重点を置いて訓練計画をしたから事故が少なかったのだと、説明をしているわけであるけれども、その説明を是とするならば、最近の訓練計画に重大な変更を来たし、迎撃戦から海外攻撃に向けての戦略戦術のおそるべき転換があるのではないかと思われる節があります。すなわち、防衛から海外攻撃への戦術転換は一体ないのかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思うのであります。

第三点として、機体についてであります。ジェット機についてであります。

現地において高橋中部方面航空隊司令官が、F86は雷に強いけれども、F104ジエツト機と民間のフレンドシップ機は雷に弱いという、記者団に対する公表をしているのであります。はたして、F104ジェット機が雷に弱いのかどうか、もしそうだとするならば、一昨年の十二月、小松基地において落雷により海上に自衛隊機が墜落しております。パイロットはヘリによって助けられておるのでありますけれども、その時点においても、そのことによって、すでにF104の弱点がはっきりしているはずであります。しかるに、今日まで、それに対する機体改造の努力がなされたのかどうか。もしかりに、なされていないとするならば、その責任はきわめて重大であると思います。

第四点として、なぜ金沢に落ちたかということである。一つは、小松基地は市街地に近接しております。二つには、滑走路の方向と気象条件等から、どうしても金沢を含む市街地上空を通らねばならぬと、調査の結果、判断されるのであります。しかもまた、現地において、基地の責任者の一人である佐藤一佐にいろいろ質問をした中で、彼は、市街地上空を通らぬということを皆さんに約束することはとてもできませんと、告白いたしておりました。だが、有田長官が、困難な国会事情の中から、当日現地に飛んでいかれたことに対し、私は敬意を表します。しかし、その中において、また、その後の国会の中においても、今後市街地上空を通らぬという言明をしているが、はたして、それが可能かどうか。この点、明確に答弁をしてほしいと思います。現に、昭和三十四年十二月四日、防衛庁名古屋建設部長と小松市小松飛行場対策協議会長との間にかわされた約定書があります。その約定書第二十二項の中に、飛行中、学校、工場、特に市街地上空の通過を避けることの確約が、すでに十年前に、小松市長、小松市議会議長立ち会いのもとにかわされているが、現実にほとんどそれが守られていないのであります。それは、問題の本質は、基地と市街地との距離の問題であります。大きくは、日本列島の持っている自然地理的条件がそうさせているのではないか。要するに、飛行機墜落事故ゼロへの道を進むためには、自衛隊基地をゼロにすることではないだろうか。小松はじめ付近の市町村が、熱烈な陳情を防衛庁当局にかけられると思うが、それに対し、どのように対処するか、伺いたい。

次に問題は、事故に対する調査と処理の問題であります。防衛庁発表のように、事務次官を長とする事故対策委員会はすでに設置されました。しかし、その機能、運営ともに、国民に納得させ信頼させるには不十分ではないかと考えます。だから、あえて提案いたします。委員会を拡大強化し、学者、科学者等、第三者を加えて、国民の不安と疑惑を解消する意思はないかどうか、伺いたいのであります。

次に、死亡者四名を含む被害者の補償についてただしたいと思います。すでにどのような緊急措置をとられたかを、まず伺いたい。事故の当日、被害者の一人が、千円の金にも困り、夕食の準備もできず、親類から届けられた冷たい握りめしをかじりながら、寒風の中でふるえて一夜を過ごしたことを訴えました。今後いろいろ論議はありましょう。一日もすみやかに、そして最大限のあたたかい補償を心から期待するのであります。とともに、大まかな具体的な方針を示してほしいと思います。

自治大臣にただしたいことがあります。基地と町づくりの問題であります。

先ほどの質問と問題提起でおわかりと思うが、小松基地側と小松市代表との間に取りかわされた約定書も一部不履行であります。すなわち、要望地上空の通過を避けるという確約はみごとにじゅうりんされているのであります。地方自治のサービス機関である自治省、そうして地域住民の命と暮らしを守る計画と努力に指導助言を与えるべき自治省が、小松市民のこの不満、この不安に対し、同一政府内の防衛庁に対し、いかなる勧告と措置要求をとってきたか、その経過を承りたい。

第二点として、基地と町づくりの問題です。基地ができて市街地ができる場合も、市街地があって基地ができる場合もありましょう。いずれにしろ、基地との関連においての都市計画について何らかの基準を設定し、行政指導を行なった実例があるかどうか、あればその具体例を簡単に示してほしい。この大事故が密集地帯に起こったという高価な教訓に対し、今後、都市計画、町づくりに対し、いかなる助言と指導をしようとしているか、大体でよろしいが、大臣の所感を伺いたいと思います。

最後に、最高責任者である佐藤首相の所信を伺いたい。あなたは、私の論理と言外の言を十分に政治的に洞察されるとともに、有田、野田各大臣の答弁をしんしゃくされ、高邁な政治的判断に基づき、最後に答弁されることを要求したい。

あなたが総裁である自民党調査団は、十一日、現地において、敏速に最大の補償を実現させるため政府に働きかけますと、池田清志代議士が言明しています。御承知でしょう。最大の補償実現に努力中であると信じます。いかがでしょうか。しかし、一人の生命は地球より重いといいます。また、小松市長佐竹弘造氏が、十万市民を代表して、小松基地司令永田良平に対し、二月十日、次の四項目の申し入れをしているのであります。

一、離着陸はすべて海側で行ない、更に訓練飛行は一切海上で行なうこと。

二、緊急な場合といえども市街地上空の飛行は絶対さけること。

三、気象状況の悪い場合は飛行を中止する等安全確保に万全を期すること。

四、飛行器材の整備点検を一層厳格にし、更に飛行時間を消化するための無理な運用を行なわないこと。

これはぎりぎりの要求だと思います。そうしてまた、小松市民はもとより、被災地金沢市四十万市民の熱望であると言わなければなりません。総理は、あなたのかつての部下である佐竹弘造氏が、自民党員であることを十分自覚しながら、声なき声、市民の不安と怒りを代表してぎりぎりの要求をしているのであります。小松基地司令が回答できるものとは思いません。最高責任者であるあなたの決断が要求されていると思います。誠意ある回答を要求いたします。今日の金沢の悲劇は、あすの東京の危険であることを否定する者は一人もないでしょう。金沢四十万の不安は、全国民の不安であり、怒りであります。総理、あなたも、私も、太平洋戦争の悲劇とその自己批判の中から、非武装、絶対平和主義の条項を持つ日本国憲法の精神に立ち返り、この惨害を天から与えられた教訓として、四名の死者を含むこのとうとい教訓を生かしながら、米軍基地を含む基地撤去、軍備撤廃の方向に向かって、英知と勇気を持って立ち向かう考えがないか、この際、議場を通じて全国民に明らかにされんことを期待申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)

〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕

○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。

あるいは私が最後に演壇に立ってお答えするほうがいいのかと思いましたが、いま議長から指名されましたので、一応お聞き取り願いたいと思います。

過日の自衛隊機が金沢市上空におきまして雷撃にあい、これが墜落事故を起こし、とうとい人命並びに財産に多大の被害を与えましたことは、私はまことに残念、遺憾に存じております。まず、この機会に、とうとい生命を失われた方々に対しまして御冥福を祈り、御遺族の方々にもつつしんでお悔やみを申し上げる次第であります。また、負傷された方も多数ございます。これらの方々が一日も早く全快され、また、多数の家を焼かれた、あるいはこわされた、こういうような方々に対しましても、心からお見舞いを申し上げる次第であります。

次に、ただいまのお尋ねでありますが、まず、この事故から私どもがなさねばならないことは、ただいまのような被害をこうむられた方々に対する補償をできるだけ早くやることであります。池田清志代議士が詳細に現場の報告もしておりますし、また、政府といたしましても、さっそくこれと取り組む決意でございますし、話は円満なうちに、そういう点を、十分罹災者の方々の実情を考え、そうしてこれに対処するつもりであります。また、自衛隊自体におきましても、その原因の調査にただいま取りかかっておりますから、これまた隊内だけでなく、御指摘のように、皆さん方が納得のいくような調査、これを行ないたいと、かように私は考えております。そうして原因を究明して、再びこの種の事故が起こらないように最善を尽くすこと、これは政府の使命だと、かように心得ておりますので、その点ではいろいろ御心配でもございますが、この上とも努力したいと思います。

また、佐竹市長からの要求書、小松市民の要求書、これについていろいろ出ております。佐竹君は、もと私のところで一緒にいた関係もありますし、率直に話のできる間柄であります。私は、これらの要求書につきましても、自衛隊の航空隊の現地司令が申しておるような点もありますし、全部が要求どおりのものができるとは思いませんが、とにかく最善を尽くしてこの要求にこたえるつもりでございます。次に、わが国の自衛隊について考えろ、もう少し基地を撤去しろ、こういう御意見でございますが、いわゆる非武装中立とは違いまして、私どもは、いわゆる自衛権、その範囲において最小限のものは持つつもりでございます。したがって、自衛隊のいまあります基地を全部はずすということは、遺憾ながら社会党と立場が違いますので、それに賛成するわけにはまいりません。この機会にはっきり申し上げておきます。(拍手)

〔国務大臣有田喜一君登壇、拍手〕

○国務大臣(有田喜一君) 答弁に先立ちまして、一言申し上げます。

去る二月八日の航空自衛隊機F104Jの金沢市墜落の事故によりまして、地元住民の方々のとうとい生命財産に多大の被害を与え、各方面に御迷惑をおかけいたしましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。ことに、不幸にしてとうとい生命を失われた四名の方々に対し、ここにつつしんで哀悼の意を表し、その御冥福をお祈りいたしまするとともに、負傷された方々が一日も早く全快されるよう心から祈念してやみません。ここに、被害を受けられた方々はもちろんのこと、広く国民の皆さまに対して深くおわびを申し上げる次第でございます。

政府といたしましては、何よりもまず、御遺族をはじめ被害を受けられた方々に対する補償について最善の措置を講じ、誠意をもってこれに当たるとともに、鋭意事故の原因を究明し、再びこのような事故が発生しないよう万全の策を講ずる所存でございます。

事故の当時の気象判断がはたして適切であったか、飛行訓練計画に無理はなかったかというお尋ねでございますが、当日、百里基地出発前に小松地方の気象を検討いたしました結果、一たんは出発を延期したのでありますが、その後、飛行可能な程度に天候が回復したとの通報を受けたので、約一時間後に出発いたしたものであります。自衛隊機と一般旅客機との間には趣を異にいたす点もありますけれども、しかし訓練を終わったあとでの帰り道において発生したのでございますから、もっと気象条件に周到な注意を払うべきでなかったか、こういう考え方もできるのでありまして、今日、事故調査委員会におきまして、今回の飛行訓練計画及び気象条件の判断の当否につきまして、目下鋭意検討中であるのでございます。で、われわれは、航空自衛隊があくまで防衛的の立場であることは、これはもう十分御承知のことと思います。

次に、F104J機が機体そのものに事故の原因があったのではないか、こういうお尋ねでございますが、今回の事故はF104Jの機体構造上の欠陥によるものとは思われません。しかしながら、事故の直接の原因が落雷にあったことは確かのようでございます。かつてこのF104Jが落雷で事故を起こしたこともありますので、その後、落雷に対する防護装置の改善をはかっておったのでございますが、まだ十分でなかったと思うのであります。したがって、落雷に対する防護対策について別途専門家に研究をさせることといたしておりますので、その結論を待って善処いたしたいと思っております。

次に、市街地と基地の関係についてでございますが、自衛隊の航空基地の設定にあたりましては、防衛上の見地ばかりでなくて、周辺地域への安全なども十分配慮することといたしておりまするが、今後一そう進入経路の選定などにつきましては、各基地の総点検をやりまして、そうして市街地住民の安全について一そうの留意をいたしたいと考えております。

次に、事故調査会に一般の学識経験者を入れたらどうか、こういうお尋ねでございまするが、とりあえず防衛庁におきまして事務次官を長とする事故対策委員会を設けまして、原因の究明と将来の対策について徹底した調査をいま実施しておりますが、国民の皆さんの納得の得られるようなことをいたしたいと考えております。さらに、今回は特に落雷対策、それから気象条件の変化に対する技術的見地からの検討を進めるために、先ほどの事故対策委員会とは別に、特別の機関を設けまして、部外の学識経験者にも委嘱いたしまして、徹底的に対策を講ずることといたしておりますから、事後措置については広く国民の納得が得られるものと期待しております。

死亡された方々その他の被害者に対する補償の問題でございますが、先ほど来申しますように、私どもは誠意をもってこれに当たっておるのでありまして、地元の要望もございまして、金沢市長を窓口として話をせよということでございまして、明日金沢市長も上京してくれることになっておりますが、とりあえず内金といたしまして、死亡者一名に対しまして三百万円、火災でこわれた家屋について平均百万円、入院されておる方々に二十万円をとりあえず支払いをいたしまして、引き続き現地における被害の状況を調べまして、そうして誠意をもって、しかも迅速なる解決をはかっていきたいと考えておるのであります。さようなことでありまして、私どもは今後万全の措置を講じて、御迷惑をふたたびかけないようにやっておるのでございます。

右、御了承願いたいと存じます。(拍手)

〔国務大臣野田武夫君登壇、拍手〕

○国務大臣(野田武夫君) お答え申し上げます。

地域住民の安全、福祉の観点からいたしまして、今回の事故はまことに遺憾千万に存ずる次第であります。なお、この事故は自衛隊に関連するもので、直接は防衛庁の所管ではございますが、自治省といたしましては、地域住民の安全にかかる重大な問題でございますから、今後このような事故が起きないように、特に地域住民の意向を尊重して、関係省庁と連絡いたしまして、十分対策を講じてまいりたいと存じております。

次に、お尋ねのございました基地周辺市町村の町づくりの問題でございますが、従来から基地周辺整備事業が行なわれていることは御承知のことと存じます。で、自治省といたしましても、基地の特殊性から生ずる障害を防止し、これを軽減するように、基地交付金及び特別交付税の増額をはかることにより、基地市町村の一般的な振興整備を一そう推進してまいりたいと存じております。(拍手)

○議長(重宗雄三君) 本日はこれにて散会いたします。

午後一時四十一分散会

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2019.2 米国のINF廃止条約からの離脱に抗議する

米国のINF廃止条約からの離脱に抗議する

原水爆禁止日本国民会議

議  長  川野浩一

事務局長  藤本泰成

    米国ポンペオ国務長官は、2月1日、ロシアとの中距離核戦力(INF)廃止条約からの離脱を正式に表明した。2日には条約履行義務を停止し、ロシア側に通告した。米国は、オバマ前政権時代からロシアに対し、「条約に反して中距離ミサイルの開発を続けている」と非難してきた。トランプ大統領は声明で「ロシアは長きにわたり条約に違反してきた」「米国は一方的に条約に縛られる唯一の国ではいられない」と主張している。米ロ両国は、次官級協議を重ね、ロシアは今年1月23日に条約違反とされる新型の地上発射型巡航ミサイル「9M729」を報道陣などに公開したが、両国の主張はかみあわず議論は平行線に終わっていた。米ロ両国は、しかし、首脳会談などを行おうとはせず、米国の今回の判断となった。原水禁は、短慮とも思える米国政府の判断に強く反対し、抗議する。

    INF廃止条約は、1987年に米ロ(旧ソ連)両国で調印され、91年までに両国合わせて2692基のミサイルが廃棄された。地上配備の中距離ミサイルに特化された同条約は、核軍縮の潮流を形成し、アジア・ヨーロッパ地域の安全保障に貢献してきた。今後、米国は中距離ミサイルの本格的開発に入ると考えられ、昨年発表された「核体制の見直し(NPR)」に示された核弾頭の小型化や海洋発射型巡航ミサイル(SLCM)の開発を加えて、オバマ前政権の掲げた「核なき世界」への構想から大きく後退する。ロシアのプーチン大統領は、条約破棄の通告に対して「自国の安全を強化する追加措置をとる」と述べ、条約の義務履行を停止すると表明した。INF廃棄条約に加盟していない中国の、中距離弾道ミサイル「東風」の配備なども含め、アジア・ヨーロッパ地域の安全保障の後退は必至と言える。また、2021年には米ロで結ばれた新戦略兵器削減条約(新SATRT)の期限を迎え、その協議にも大きな影響を与えることが予想され、軍拡競争の時代に戻ることさえも懸念される。

    トランプ政権は、イランの核兵器開発を大幅に制限する「イラン核合意」や地球温暖化対策の国際ルールである「パリ協定」からの離脱など、 自国の利益最優先する「アメリカ・ファースト」の姿勢に終始している。国際協定を順守し、発展させて平和を構築しようとの姿勢は見られない。圧倒的軍事力を誇る米国は、第2次大戦後も1950年の朝鮮戦争に始まりベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン・イラク戦争と繰り返してきた。そのいずれもが、平和をつくり出したとは言えない。米国は、構造的暴力を排除する「積極的平和」を立ち位置として、持続可能な社会の構築のためにこそ、その国力を国際社会へ惜しみなく注ぐべきだ。

    米国とロシア・中国の対立は、「アジアでのミサイル配備競争のドアを開く」(米シンクタンク「軍備管理協会」ダリル・キンボール会長)との指摘もある。その時には日本も蚊帳の外にいられまい。INF廃止条約離脱に際して、日本を含む同盟国の協力と政治的問題の克服を求める声もある。日本への配備要求が高まっていくことが懸念される。米国が国際社会でのリーダーとしての役割を失いつつある今、日本は、毅然とした態度で、米国と中国・ロシアの対話と協調を図り、アジアの平和への視点を持って対処しなくてはならない。河野太郎外務大臣は、「条約が終了せざる得ない状況は、世界的に望ましいものではない」との立場を表明している。被爆国日本としての役割を自覚し、条約の維持と拡大に向けての努力を怠ってはならない。

    原水禁は、米国政府のINF廃止条約離脱を許さず、日本政府に対してその維持に努めるよう要請する。加えて、核兵器禁止条約への署名・批准が進む中にあって、核廃絶への道を決して後戻りさせないようとりくみの強化をめざす。

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平和フォーラム 沖縄事務所より

2019年の闘いはじまる!

2019年1月8日

1月1日午前6時30分、太陽がまだ上がらない辺野古の浜に県民らが続々と集まる。毎年この浜から新基地建設阻止の闘いがはじまります。「初興し」だ。ヘリ基地反対協による新年の闘いは400人が参加しました。会場においてもカヌーチームは75艇を並べて闘いへの強い決意をみせました。主催者を代表して安次富共同代表は「沖縄の未来は、沖縄の人が決める闘いだ」と新年にふさわしいあいさつをしました。今年の闘いにより新基地建設を決着させようと沖縄平和運動センターの山城議長も強い決意を表明しました。参加者も今年こそ断念を勝ち取ろうと誓いを新たにしたところです。午前7時ころから少しづつ明るくなり太平洋の東の空に太陽が昇るころには、何とも美しい海、空が現れました。
現在の辺野古の浜は、漁港とキャンプ・シュワブとの間の100メートルくらいしかありません。米軍が沖縄を占領支配し、1949年ごろから本格的な基地建設が始まる前までは、辺野古崎が太平洋に突き出た美しい浜でした。この美しさのため米軍に強制収容されてしまいました。この基地を撤去させ、リゾート地として開発されれば、経済、雇用に大きく貢献し、観光拠点になると専門家は断言しています。
その海をつぶして、米軍基地として日本政府が建設して100年も200年も使ってくださいというのだから、県民は怒っています。だからこの浜で毎年1月1日に「初興し」を執り行うのは意義深いものです。

2019年、沖縄県民の課題
①辺野古新基地建設を断念させる。
②普天間基地を即時返還させる。
③高江のヘリパッド建設につづいて、伊江島では米軍の強襲揚陸艦を模した着陸帯が完成し、北部における米軍機能が強化され、オスプレイやF35ステルス戦闘機などの訓練が激化すると予想されています。ここでも基地の撤去を求める声が強くなっています
④米軍嘉手納基地も最近においては基地所属機だけで年間9万回の離発着を繰り返し、町民のいのちを脅かし続けいます。外来機も頻繁に飛来し訓練するなど、嘉手納基地返還が最も県民が望んでいます
⑤昨年6月那覇市沖80kmの海上にF15戦闘機が墜落し、市民はドキッとしたと言われています。こうした墜落事故は普天間や嘉手納基地に所属するオスプレイや戦闘機が、米国本土での事故も含め11機墜落しています。日本国内においてもヘリやオスプレイの不時着が多発しています。いつ県民の上に落ちるかと不安はいつも感じています。
こうした騒音、墜落、不時着の原因となっているのが、沖縄本島周辺海域、空域での訓練によると指摘されています。こうした訓練域こそ今すぐなくしてもらいたいです。
若い人たちが中心となって92848筆の署名を集めて県民投票を求めた闘いは、2月24日に実施されることになりました。沖縄県全市町村で実施されるべきが、普天間基地がある宜野湾をはじめ、1月8日現在で6市町村において県民投票を拒否しています。これらの市町村においては、「投票権を奪わないで」と抗議行動を展開しています。
また、県内の大学教授や写真家ら26人がよびかけ「県民投票の全市町村実施を求める会」が1月4日に結成され「戦後、沖縄住民の血のにじむ思いで獲得し、築き上げてきた民主主義の歴史を自ら否定するものだ」と全県民の投票の権利を行使できるように訴えています。
県内のメディアが実施した世論調査でも、全市町村で「実施」が71%、投票に行くと答えた人は77.9%、「行かない」9・81%となっています。拒否をしている市長さんはこうした世論があるとしてぜひ協力してほしいものです。
⑦終わりに。今年は選挙の年でもあります。玉城デニー知事誕生による3区の補選が4月、8月は参院選もあります。勝利したいものです。2019年、県民の安心・安全を取り戻す重要な年でもあります。

全国の皆さんご協力をお願いして新年のあいさつとします。

沖縄だよりNo.78(PDF)

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6度目の防衛大綱 中期防衛力整備計画を閣議決定 2013年から5年での策定

薩南諸島(馬毛島、種子島、奄美大島など)の基地強化と沖縄                                        湯浅一郎  2018年12月31日

18年12月18日、政府は6度目となる防衛大綱と、中期防衛力整備計画(中期防)を閣議決定した。2013年に10年を見通すものとして発表してから、まだ5年での策定である。日本を取り巻く安全保障環境が過去にないスピードで「厳しさと不確実性を増している」との分析を前提に、宇宙、サイバー、電磁波などの新たな領域を含め、「全ての領域の能力を融合させる領域横断作戦などを可能とする」防衛力として、「多次元統合防衛力の構築」を目指すとした。

その中で、馬毛島、種子島、奄美大島、沖縄島へと連なる薩南諸島に陸自を中心とした一連の部隊新設計画が盛り込まれている。中期防には「初動を担任する警備部隊、地対空誘導弾部隊及び地対艦誘導弾部隊の新編等を行い、南西地域の島嶼部の部隊の態勢を強化する」とある。この背景には、中国を敵視し、米軍との軍事一体化を前提とした軍拡路線がある。鹿児島県の種子島、奄美には、その重要な要として、南西諸島における島嶼防衛線の後方支援拠点として自衛隊、米軍の基地に組み込む多方面からの動きが襲い掛かっている。その全体像を見据えた取り組みが求められる。

奄美大島で進む陸海空自衛隊の基地や演習機能の強化

陸自では、警備部隊、地対艦ミサイル、地対空ミサイル基地の新設が進んでいる。奄美市名瀬の大熊と瀬戸内町節子で現在、配備に向けた土地造成と施設整備が2018年度末を目途に急ピッチで進んでいる。大熊に約350人、節子に約210人を配置予定という。いずれも、広域監視や武装ゲリラ侵攻への初動対処を担う警備部隊を配備し、大熊に中距離地対空ミサイル(中SAM)部隊、節子には地対艦ミサイル(SSM)部隊を併設する。しかし、これにより山を削り、水系を破壊することで、奄美の自然がはぐくむ希少なアマミノクロウサギなどが生息する独特の生態系への大きな影響が懸念される。

その他にも、2014年5月10日から27日まで、陸海空3自衛隊による初の着上陸訓練が奄美群島の1つ江仁屋離島(えにやばなれじま)で実施されている。本訓練は、「島嶼防衛に係る自衛隊の統合運用要領を演練し、その能力の維持・向上を図る」との目的が掲げられている。訓練に参加したのは、陸自では西部方面隊等の人員約500名、航空機6機(CH-47JA×2機、AH-64D×2機、UH-60J A×2機)、海自は、人員約820名、艦艇4隻(護衛艦「くらま」(佐世保)、護衛艦「あしがら」(佐世保)、掃海母艦「ぶんご」(呉) 及び輸送艦「しもきた」(呉))及び搭載航空機である。さらに空自は人員約10名、航空機2機(F-2×2機)で、陸海空計で約1330名が参加した。具体的には、5月18-19日、海からの強襲作戦を担う陸自特殊部隊約100人が、大型輸送艦「しもきた」からボートやヘリコプターによる上陸訓練を行なった。「しもきた」搭載のLCACエアクッション型強襲上陸用舟艇は航走訓練を行ったとされる。

他にも、湯湾岳への空自通信施設の設置も計画され、南西諸島における島嶼防衛線の後方支援拠点としての基地強化が一気に進んでいる。

馬毛島の基地強化と種子島の訓練場化

もう1つの大きな動きが、馬毛島での基地強化と種子島での統合、共同訓練の定例化である。種子島の西12キロの沖合にある無人島の馬毛島には、南北に1本(約4千メートル)、東西に1本(約2千㍍)と十字を切るように滑走路が造られている。米軍再編で、米空母艦載機の厚木から岩国への移駐が浮上した際、馬毛島は、空母艦載機のFCLP(陸上空母離着陸訓練)用施設の候補地として名指しされている。陸上滑走路を空母の飛行甲板に見立ててタッチアンドゴーを繰り返す飛行訓練である。地元自治体を初め、強い反対の声で計画は遅れているが、ここに来て、土地の買収にめどが立ったとの報道がある。

これとは別に、同島は、自衛隊の事前集積拠点、「島嶼防衛戦」の上陸訓練施設としての活用がもくろまれている。馬毛島は文字どうり日米の軍事要塞になりかねない。

仮に馬毛島が計画どうりになれば、それは、隣接する種子島にも大きな影響をもたらすことになる。実際、既に種子島では水陸機動団による着上陸訓練が17年から始まっている。

17年11月16日、自衛隊統合演習の一環として、南種子町の前之浜海浜公園で着上陸訓練が行われた。さらに、18年5月8日には、九州西方沖や種子島周辺で、離島奪回作戦を念頭に、海自輸送艦からの水陸両用車の発進や上陸訓練を行っている。この時、海自は、輸送艦「しもきた」(呉)、護衛艦「ひゅうが」(横須賀)を派遣している。

そして、18年10月5日~19日、「水陸機動団」は、種子島の旧種子島空港の跡地、及び長浜海岸において、米海兵隊第3海兵師団(沖縄)と島しょ奪還に向けた共同訓練を実施した。尖閣諸島を巡る緊張の高まりを背景に、中国に対し日米の連携強化をアピールする狙いがあるとみられる。日米共同での訓練は国内では初めてである。14日には、陸自約220人、海兵隊約10人のほか、海自輸送艦「おおすみ」などが参加している。

奄美、種子島における一連の着上陸訓練は、陸自の水陸機動団と呉配備の「おおすみ」型大型輸送艦との連携が基本になっている。「おおすみ」型輸送艦は、英語では、LST、Landing Ship Tankで、軍事的には戦車揚陸艦である。LCAC2隻を有し、大型戦車や装甲車を強襲上陸させることができる能力を持っている。米軍が、沖縄の海兵隊を佐世保配備の強襲揚陸艦に搭載して世界中の戦場に輸送するのと構図は全く同じである。島嶼奪回を理由に、海外進行もできる演習が、薩南しょ島において始まっている。

米軍輸送機オスプレイの低空飛行訓練ルートの新設

奄美は、沖縄の米軍基地との間に、相互に影響しあう問題を抱えている。一つは、普天間基地配備のMV22オスプレイの低空飛行訓練ルートが、近年、奄美大島の上空に設定されたことである。これは、米軍監視を目的とした市民団体リムピースが、16年12月13日、名護市安部の海岸にオスプレイが墜落した事故報告書を分析し、当日のオスプレイの飛行経路をたどった結果、判明した。米軍は、このルートを公表していないが、図のような閉じた南北に細長い長方形のルートが浮かび上がった。事故機は、午後6時過ぎ、普天間基地を離陸したあと、宇検村の西海上から奄美大島上空に飛来し、島の上空を図のルートに沿って反時計回りに2周し、その後、沖合での夜間空中給油訓練に移行し、事故を起こしたのである。報告書によれば事故機は、高度500フィート(約152メートル)、速度240ノット(時速444キロ)で飛行していた。

米軍は、オスプレイの普天間配備に際し公表した「環境レビュー」で6本の低空飛行訓練ルートを初めて明らかにし、普天間配備後、岩国基地などを使いながら、本州や九州での低空飛行訓練を実施するとした。このうち、鹿児島から南西諸島を経由して沖縄島に至る主に海上を使った「パープルルート」は、奄美大島では宇検村がチェックポイントとなっている。ところが、2013年3月にオスプレイが初めて岩国基地に飛来してからこの方、6本の低空飛行訓練ルートでの低空飛行訓練は行われてきた気配が全くない。この間、オスプレイは低空飛行訓練をしていないのか、または、どこか不明なルートがあるのかわからないままであった。皮肉なことに、那古沖での墜落事故の報告書から新たな訓練ルートが見えてきたのである。これにより、一つの謎が解けた。米軍は、普天間に近い奄美大島の上空に一方的に訓練ルートを新設することで、オスプレイの運用を実現していた。奄美大島における住民の目撃情報を整理することで、島内上空で低空飛行訓練が常態化していることがわかるはずである。オスプレイを巡っては、17年6月、計器が機体の異常を示した1機が奄美空港に緊急着陸する事例があるが、今後、このような事態が頻繁に起っていくことが予想される。自治体や住民への説明もないまま、一方的に奄美大島が米軍基地の運用に組み込まれているのである。

辺野古の海をつぶす岩ズリの奄美からの搬出

一方、奄美が沖縄の豊かな海を破壊することに関与してしまう問題が、辺野古埋め立て用岩ズリの奄美からの持ち出しである。12月14日 沖縄防衛局は、辺野古への土砂投入を開始した。10月の沖縄県知事選で玉城デニー候補を圧勝させ、辺野古新基地建設を拒否するという沖縄県民の民意を一方的に踏みにじるものであった。ここで使われる土砂は、沖縄島の本部から運び込まれたものである。周知のように大浦湾側の海底には、厚さ40mとも言うマヨネーズ上の軟弱地盤があることが防衛省の調査からわかっており、計画変更の許可を沖縄県知事から受けない限り、本格工事はできないことが明らかになっていることを承知で、見切り発車した。

辺野古・大浦湾は、ジュゴンやウミガメの生息地として知られ、調査のたびに新種が発見される。国際的に見ても生物多様性の豊かな海である。政府は、それを承知で埋め立ててしまうということは、生物多様性基本法や国家戦略よりも、米軍基地の新設を優先するという選択である。政府が、中長期的な未来を見るのでなく、「抑止力を保持するため」を理由に目先の都合によって政策を押し付けている様子が見えている。

このままだと、早ければ2019年中にも、沖縄島以外からの土砂搬入が始まる。その候補の1つが鹿児島県の奄美と南大隅である。防衛省資料には、奄美大島では、奄美市住用町、大島郡瀬戸内町、龍郷町の3箇所の砕石場が示されている。既に岩ズリが海岸線付近に山積みされている。これを止めるため、2015年5月、搬出予定地の市民グループが奄美に集結し、「どの故郷にも、戦争に使う土砂は一粒もない」をスローガンに辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会を発足させた。土砂全協は、沖縄県の土砂搬入に伴う外来生物の持込みを規制する条例を活かして、土砂の搬出をとめる運動を精力的に行っている。12月の沖縄県議会に鹿児島県を含む7地点から条例の強化を求める陳情書を提出したが、継続審議となっている。19年の早期に条例の強化がされることを期待したい。

以上、見てきたように、尖閣諸島における対立を理由に、九州から与那国島への琉球弧を基地化し、又日米併せ持っての軍事訓練の場とする政策が系統的に進められている。その中で、馬毛島から奄美にかけての薩南諸島は、後方支援物資の集積拠点、輸送中継拠点として基地強化が進められつつ、あわせて、着上陸訓練の演習場として一方的に使用されつつある。基地建設のために奄美の山の頂を削り、ウミガメの産卵場でもある砂浜は、着上陸訓練の場として荒らされている。外国軍威信基地を提供せんがために、生物多様性の豊かな辺野古の海の埋め立てにまい進する政府は、同じ思想で、薩南諸島の自然を破壊しようとしているのである。地域の住民が、将来に向けて活かしていくべき自然をないがしろにする国の防衛政策とは何かを問い、薩南諸島のそれぞれの住民が連携して国の防衛政策を変えていくよう求めていくことが求められている。

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「緊急事態条項の創設」の危険性 安倍政権はステルス作戦実行中!

「緊急事態条項の創設」の危険性・・永井幸寿弁護士

<ステルス作戦実行中!>

安倍首相は、憲法9条を初めとした改悪を成し遂げるため、「緊急事態条項の新設」という「真の狙い」については「だんまり・ステルス作戦」を決め込んでいる。憲法9条に衆目の関心を引き寄せ、事実、多くの労組、民主勢力は「9条改悪阻止」に全力を投入している。しかし、「緊急事態条項 新設」の危険性は焦点化されていない。

<災害とは、自然災害のみならず、戦争=武力攻撃事態も含む!>

第73条の2  (第1項)大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。

(第2項)内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。(※内閣の事務を定める第73条の次に追加)

第64条の2  大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。(※国会の章の末尾に特例規定として追加)

この案に、2012年改憲草案どころではない「危険」が潜んでいるのです。

改憲発議が迫っている!(2019年通常国会か秋の臨時国会)

2018年10月24日に臨時国会が召集され、安倍総理は所信表明演説において、憲法改定について「憲法審査会で政党が具体的な改正案を示すことで、国民の理解を深める努力を重ねていく」と述べ「国会議員の責任を果たそう」と呼びかけるなど、自民党案をもとにした今国会での改憲論議とその発議に強い執念を見せた。

ほとんどのメディア、知識人、野党も、改憲発議が目前に迫っていること、しかもその中に民主主義を瞬殺してファシズムを一夜にして実現することができる緊急事態条項が含まれていることに対して、呆れるくらいに警戒心が足りない。本来なら最大限の警戒、抗議、反対、自民案の撤回と破棄を求める発言と行動がおこなわれてしかるべきだ。

さかのぼること今から7か月前、2018年3月25日、自民党大会において、9条への自衛隊明記」、「緊急事態条項創設」、「参院選『合区』解消」、「教育の充実」4項目からなる「改憲たたき台素案」が条文の形で発表された。

前年の2017年5月3日の憲法記念日に、改憲派の集会に送ったビデオメッセージの中で、安倍総理が「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と発言して以来、党内の改憲への動きは一気に加速。同年2017年12月20日には、自民党憲法改正推進本部が「憲法改正に関する論点取りまとめ」として、この「改憲4項目」を掲げていた。

安倍総理の設定した「2020年施行」に向けて、早ければこの臨時国会中に、いよいよ改憲の国会発議に踏み切るつもりと思われる。

法整備で十分対応可能なはずのダミー項目であることは丸見えの「参院選『合区』解消」と「教育の充実」についてはさておき、改憲に反対する人々の関心は、いつものように「9条への自衛隊明記」に集まった。実際、9条が改悪されれば、集団的自衛権を際限なく認めることにつながりかねない危険な憲法改悪となり、何より安倍総理がそればかりを口にしてきたのであるから、世の注目を集めるのは当然といえる。

国民投票に持ち込んだ場合の自民党の最大の売り!「参院選『合区』解消」「教育の充実」

ところが、大災害や外国武力攻撃などの「緊急事態」を名目に内閣に強大な権力を付与するものとして、激しい非難を巻き起こしていた「緊急事態条項創設」については、今回もまた、なぜか話題にも上らない。今年の憲法記念日ですら、どこの集会でもメインに取り上げなかった。野党もマスメディアも、労組も、知識人も、一般の市民も、反応がきわめて鈍い。

考えられる理由は、一つある。「緊急事態条項」新案は、2012年に発表された自民党憲法改正草案のあの居丈高なトーンとは打って変わって、一見すると大変「おとなしい」文面に変わっており、警戒心が解かれてしまったのではないか。

「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱」「法律と同一の効力を有する政令」「(国の指示に)何人も従わなければならない」「(地方自治体に内閣は)指示できる」といった、戦争やナチ独裁を彷彿させるあの強権的な文言は条文案の表面上から消え去り、かわって「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる」といたって簡潔にまとめられている。言葉遣いも平易である。猛々しさは伝わりにくい。

そのうえ、旧案では緊急事態条項専用に「98条・99条」を新設し、憲法の一大要素のように位置づけていたものを、このたびは、内閣の事務を定める73条と国会の章の末尾にあたる64条という離れた二つの条文の、それも各々の追加項目として添えるという、ちょっとした微修正のようにも見えるのである。そして、「大地震その他の異常かつ大規模な災害」であるから自然災害時と理解している方も大勢いるかもしれません。

この「改憲4項目」を目にした人の中には、「危険性はひとまず取り去られた」と安堵する人も少なくなかったであろう。そうした人々は、こう思ったかもしれない。「安倍自民党が国民の非難の声に珍しく耳を傾け、独裁を可能にするような条文の書き込みを諦めたのかもしれない、ひとまずは放っておいていいだろう」と。

だが、国民を安心させるその柔らかい文面も、永井幸寿弁護士の目は誤魔化せはしなかった。永井弁護士は災害問題のエキスパートで、自らも阪神・淡路大震災の被災者として災害の現場を熟知している。最も早くからこの条項の危険性に警鐘を鳴らしてきた人物である。

 

自民党改憲素案【緊急事態条項の創設】の全文

第73条の2

(第1項)大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。

(第2項)内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。

(※内閣の事務を定める第73条の次に追加)

第64条の2

大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。

(※国会の章の末尾に特例規定として追加)

【その問題性】

【1 国家緊急権】

緊急事態条項とは「国家緊急権」を憲法に創設する条項と一応は定義できる。

国家緊急権とは、戦争・内乱・恐慌ないし大規模な自然災害など、平時の統治機構を持ってしては対処できない非常事態において、国家権力が国家の存立を維持するために、立憲的な憲法秩序を(人権の保障と権力分立)を一時停止して非常措置を執る権限を言う。つまり、非常事態において、国家のために、憲法の定める人権保障権力分立を停止する制度である。

人権とは、人が自立的な個人として、自由と生存を確保し、尊厳を持って生きるために不可欠な基本的権利を指す。

権力分立とは、権力に対する懐疑にある。天使ならいざ知らず、人は何どきも権力を獲得したがり濫用する性向をもつ。したがって、権力分立は人間の本性への深い反省と権力に対するリアルな認識から、血みどろの闘いの末、獲得したもの。

これに対し、立憲的な憲法秩序を(人権の保障と権力分立)を一時停止して非常措置を執る権限であることから、その危険性はきわめて高い。

【2 政令の効力】

「政令」とは内閣が制定する命令であるが、「唯一の立法機関」である国会の立法からすれば例外的な権限である。それゆえ、内閣の発する政令は立法権そのものを行使する、簒奪することは許されず、国会の定める法律の細則を定めるか、個別具体の委任基づく政令しか許されていない。

しかし、憲法を改正してまで創設しようとしているこの「政令」は、内閣に法律に代わる命令の制定権を認めようとするものであり、立法権そのものの行使、簒奪と言わなければならず、法律と同じ効力を有するものと解すべきである。

【3 手続きの欠如】

2012年の自民党改憲草案にあった「緊急事態の宣言の事前又は事後に国会の承認」を必要とし、また、「国会の決議や内閣の認定による宣言解除の手続き」があった。しかし、2018年の改憲素案たたき台には、緊急事態宣言発動の手続きがなくなり、これに対する国会の統制も存在しなくなった。

つまり、内閣の閣議決定だけで国民の知らない間に「緊急事態宣言」が発動でき、しかも国民が知らない間、ずっとそれを維持できるのである。 

「いつでも独裁、いつまでも独裁!」

【4 広すぎる要件】

国家緊急権発動の要件は、「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがない」と内閣が認定したときである。

本来、法律の制定権は主権者たる国民の代表である国会にあるので、国家緊急権発動の要件は国会が機能していない特別な場合に限られるはずである。たとえば、災害対策基本法の「緊急政令」の発動要件は、国会閉会中や衆議院解散中で、臨時国会の召集や参議院の緊急集会の請求ができないときに限定されている。旧憲法の「緊急勅令」でさえ議会閉会中という限定があった。自民党改憲素案たたき台にはこのような限定がなく、国会が会期中であっても国会を無視して「政令」をつくることができるのである。

また、要件の認定権者は国会ではなく、内閣、すなわち政府である。たとえば「災害により」「国会による法律の制定を待ついとまがない」と政府が認定すれば制定できるのである。

【5 災害とは、武力攻撃事態を適用】

さらに、国家緊急権が発動できる場合は、「自然災害」ではなく「災害」とされている。

災害対策基本法は「災害」とは、「暴風、竜巻、・・、地震、津波、・・その他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発・・政令で定める原因により生ずる被害」と定められており、同施行令は「政令で定める原因」として「放射性物質の大量の放出、多数の者の遭難を伴う船舶の沈没その他・・」と定めており、「災害」には自然現象のみでなく人為的な事故も含んでいる。そして、国民保護法では「武力攻撃災害」、すなわち「武力攻撃により直接又は間接に生じる人の死亡又は負傷、火事、爆発、放射性物質の放出そのたの人的又は物的災害」として、「戦争も災害」として認定している

したがって、「緊急事態条項」は武力攻撃事態があった場合にも「災害」として政令を制定することが可能である。

腐敗した政府を倒そうと決起した市民・民衆や労働条件の改善を求めた労組の決起にも「災害」として対処することができるきわめて危険な条項である。

【6 期間制限がないこと】

国家緊急権には発動期間の限定がない。権力の濫用を防ぐために厳格な期間の制限が必要である。2012年改憲草案でさえ「100日を超えて緊急事態宣言を継続するときは国会の承認」を必要とした。

【7 事項の限定がないこと】

政令を制定することができる事項について限定がほとんどない。

「国民の声明、身体及び財産を保護するため」であればどのような政令も制定できる。たとえば、安保法制を政令で改定して集団的自衛権を強化することや、テロ対策のために共謀罪を改定して厳罰化することも可能となる。もっとも制限される可能性が高いのが政府監視機能を持つ報道機関の報道の自由や通信の秘密である。罰則付きの制限立法(政令)によって報道機関が著しく萎縮し、国民の知る権利が制限され民主主義の根幹が脅かされる。

【8 国会が不承認でも効力が失われない】

内閣は政令を制定後、「速やかに国会の承認を求めなければならない」と定めるが、国会が承認しなかった場合には政令が効力を失うと定めてはいない。旧憲法の「緊急勅令」でさえ、議会の承認がないと将来に向って効力を失うと定めていた。

このことは、内閣による権力濫用の危険性がより高まり、緊急事態条項は「政府独裁条項」とも言うべきものであると言える。

【9 立法事実の不存在】

災害には災害対策の原則がある。「準備していないことはできない」のである。

国家緊急権は災害が発生した後に、泥縄式に権力を集中させる制度と言っていいが、災害発生後にどのような強力な権力を集中しても災害に対応することはできないのである。

災害に関する法律は既に十分に整備されている。(物価や生活必需品などの4項目に限り罰則付きの政令(緊急勅令)の制定権、ただし国会の承認が無ければ効力を失う)

東日本大震災後、2015年アンケートで「国と地方の役割分担」を問えば、「原則として国が主導して市町村が補助する」と回答したのはわずか4%、「原則として市町村が主導して国は後方支援するべき」とした92%を見れば答えは明らかである。つまり「権力集中」とは真逆の結果である。

災害時、最も効果的に対応できるのは国ではなく、被災者に最も近い市町村なのです。

熊本地震では、2016年4月14日の前震で安倍首相は、屋外の避難者を「屋内退避」させるよう指示したが、益城町総合体育館の職員は天井落下を危惧して屋内に入れなかった。そして4月16日の本震で同体育館の天井が総て落下した。館内に住民が避難していれば確実に多数の死傷者が出ていたはずである。

【10 国会や裁判所が統制するという幻想】

国家緊急権を肯定し必要だとする人たちの中には、国会や裁判所が政府を統制するのだから濫用は抑止できるという。しかし、議院内閣制をとる日本は、国会の多数派が内閣を形成するので国会は政府を有効に統制できない。また、裁判所は「統治行為論」をとっており、高度に政治性のある行為には司法審査権は及ばないという説が多数なのです。

したがって、三権分立のなかで二権が政府を統制するということはありえない。

【任期延長】 

  略

【任期無期限の危険性】 

  略

【任期延長の要件】 

  略

【立法事実がない】 

  略

 

<参考>

自民党の「改憲素案 四項目」(たたき台)全文

【緊急事態条項】

  略

【参議院「合区」解消】

現行憲法で定める「投票価値の平等」と別に、衆参両院の選挙区と定数は「地域的な一体性」などを「総合的に勘案」して定めると規定。特に参院選について「改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる」と明記した。「合区」解消と都道府県単位の選挙制度の維持を図る。

第47条

両議院の議員の選挙について、選挙区を設けるときは、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるものとする。参議院議員の全部又は一部の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる。

前項に定めるもののほか、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

第92条

地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本とし、その種類並びに組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。

【教育の充実】

経済事情に関係なく質の高い教育を受けられるよう、26条に国の努力義務規定を盛り込んだ。日本維新の会が求める幼児教育から大学までの教育無償化は見送った。89条も改め私学助成の合憲性を明確にした。

第26条

(第1、2項は現行のまま)

(第3項)国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない。

第89条

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

9条改正自衛権・自衛隊の明記

第9条の2

(第1項)前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

(第2項)自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

(※第9条全体を維持した上で、その次に追加)

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〔本の紹介〕『不死身の特攻兵―軍神はなぜ上官に反抗したか』 鴻上尚史著/講談社現代新書/2017年

〔本の紹介〕
『不死身の特攻兵―軍神はなぜ上官に反抗したか』
鴻上尚史著/講談社現代新書/2017年

平和運動に関わるなら、先の大戦がいかに誤った戦争だったか、当時のエリート・指導層がいかに無能で愚かだったかを学び、現代に伝え、生かすべきだと思っている。この著書は、陸軍の特攻兵として9回も出撃し、すべて生還。戦後95歳まで生きた佐々木友次元伍長の話であるが、特攻を命じた上官・参謀たちの醜悪ぶり、滑稽さも明らかにされる。そして、この特攻作戦に何らかの形で抵抗する軍人らも登場し、特攻作戦がいかに無謀で愚かな作戦だったか明らかにされる。
 特攻を命令した参謀や上官たちの多くは「俺も必ず後に続く」と宣言しながらも、戦後、生き延び、特攻を事実上強制した自らの責任回避のため、特攻兵を国のため自ら進んで志願し命を捨てたものとして美化賛美してきた。この著書はこの論調に痛烈に反撃するものだ。
 佐々木さんの生還に、上官や参謀らは「恥さらし」「臆病者」「腰抜け!」「今度こそ死ね!」と罵倒、暗殺計画さえ立てた。当時上官の命令は絶対。反論・反抗は許されないが、佐々木さんは屈しない。その遺志の頑強さは驚異的だ。ベテラン操縦士だからこそ、この作戦の過ちを見抜いていた。

 航空特攻の場合、初期を除き、その戦果は嘘ばかりで実際は微々たるものだった。特攻機は、敵艦に達するまでに大半が撃墜された。米軍のレーダーに捕捉され、迎撃機の餌食となり、近づいただけで爆発する近接信管という艦船からの機関砲の犠牲となった。まれに体当たりできてもその破壊力は小さかった。急降下による爆弾投下は艦内に潜り込み爆発するが、航空機による衝突は空気抵抗が大きく甲板の表面で爆発するだけの威力しかなかった。戦艦・大型空母等の撃沈例は軽微で、大半は小型船舶が中心、当時の日米の戦局を転換する効果はなかった。むしろ、本土決戦・一億特攻への戦意高揚に利用され、終戦を大幅に遅らせ、戦争犠牲者を増やす要因となった。しかし、特攻兵は必ず犠牲となり飛行機も破壊。航空特攻による犠牲者は約4000人、その多くが20歳前後の若者であった。死を強制された若者の親や妻たちの戦後の苦悩苦難はいかほどであったか。こんな愚かな戦争を二度と繰り返さないためにも、広く読まれることを願いたい。
 関連著書に「特攻隊振武寮」(朝日文庫)、「特攻―なぜ拡大したか」(幻冬舎)、「つらい真実―虚構の特攻隊神話」(同成社)等がある。
(富永誠治)

核のキーワード図鑑


核背負い宇宙をさまよう地球よあわれ、人間の罪は重い
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1月7日「2019新春の集い・団結旗開き」 イン金沢スカイ

本田県平和運動センター共同代表の力強い主催者挨拶に始まった「2019新春の集い・団結旗開き」は、各界、各層の来賓120余名の参加のもと、安倍改憲阻止と脱原発、そして来るべき地方統一選挙と参議院選挙の「必勝」を期して、吉岡県勤労協副会長の団結ガンバロウで締め、闘う2019年をスタートしました。(2019年1月7日ANAホリディイン金沢スカイ10階にて)

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