2019年12月23日
「憲法改悪阻止!戦争法廃止!」を呼びかける八団体
(石川県憲法を守る会、石川憲法会議、九条の会・石川ネット、石川県平和運動センター、石川県労働組合総連合、青年法律家協会北陸支部、戦争をさせない1000人委員会・石川、戦争をさせない石川の会)
原子力防災訓練への抗 議 声 明
本日午前7時30分から志賀原発の事故を想定した石川県原子力防災訓練が実施された。東京電力福島第一原発事故後8回目となる防災訓練である。この間、私たちは再稼働前提の訓練に抗議すると同時に、福島第一原発事故の教訓を踏まえるなら最善の原子力防災は原発廃炉であると訴えてきた。地震だけでなく昨今の異常気象による複合災害、あるいは無防備と言えるテロ攻撃を想定するならば、廃炉はなおさら緊急の課題である。しかし、石川県はじめ関係自治体は今回も志賀原発の再稼働を前提とした非現実的で実効性のない訓練を実施した。強く抗議し、以下、問題点を指摘する。
1. 複合災害で破たんする原子力防災
(1)異常気象に向き合わないマンネリ化した訓練
近年、巨大台風襲来による暴風と豪雨、大洪水、高潮、大規模停電、さらに豪雪による交通網の麻痺や災害級の猛暑など「異常気象」が常態化し、相次ぐ巨大地震、大津波の脅威も含め、現代社会は巨大自然災害の危機に直面している。これらの災害に起因する原発の重大事故、あるいはこれらの災害と並行して起こる重大事故に対して原子力防災は機能するのか。原発立地地域の住民はもちろんのこと、多くの県民の不安は一段と高まっているが、複合災害訓練はここ数年の訓練同様、「地震による道路の一部寸断」を想定するのみで、広域・複合・長期化する巨大自然災害に向き合う姿勢は全く感じられない。
(2)複合災害で被ばくは深刻化
政府は2015年に防災基本計画を修正し、複合災害時には自然災害に対応する「緊急災害対策本部」と原子力災害に対応する「原子力災害対策本部」の連携体制を整えることとし、複合災害への対応について検討を重ねている。基本的には差し迫った自然災害からの人命のリスク回避が最優先となる。当然の対応だが、結果として放射能からの避難行動は二の次となる。現行の計画でも住民に被ばくを強要するが、さらなる被ばくは避けられない。巨大自然災害と原発の重大事故による複合災害時、住民避難計画は破たんする。
(3)廃炉こそ複合災害対策
地震や津波は防げない。異常気象は国際的な気候変動対策が急務だが、直面する自然災害には防災・減災対策を講じるしか術がない。一方、原子力災害は人災である。大自然の猛威にさらされ続ける中、人命へリスクを減らすためにも志賀原発の廃炉は急務である。
2. くり返される再稼働前提の訓練
(1) 再稼働路線容認の防災訓練
志賀原発直下の断層について有識者会合は全会一致で「活動層」との評価書をまとめたが、北陸電力は志賀再稼働の方針を変えず、原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に臨んでいる。しかし、ここでも北陸電力のデータ不足が厳しく指摘され、「活断層」を否定する見通しは全く立っていない。こうした中、県は停止中のリスクが山積するにもかかわらず再稼働前提の訓練を繰り返している。北電の再稼働路線の容認、あるいは期待しているかのような県の姿勢からは、県民の安全・安心を守る決意が感じられない。
(2) 向き合うべきは停止中の原発の危険性
停止中とはいえ、志賀原発ではむき出しの燃料プールの中に使用済核燃料が保管されている。冷却機能の維持は至上命題であり、そのための電源は欠かせない。ところが志賀原発では直下の活断層に加えて、一昨年は雨水大量流入事故、今年7月には非常用の高圧電源車の火災事故発生と、電源確保をおびやかす「あってはならない事故」が相次いでいる。特定重大事故等対処施設(いわゆるテロ対策施設)もいまだ整備されていない。サウジアラビアの石油施設へのドローン兵器による攻撃は全ての原発施設にとって他人事ではない。複雑な国際情勢下、志賀原発への攻撃を単なる空想として切り捨てることはできない。核燃料の撤去こそ必要な防災対策であり、撤去までの間は停止中の原発の重大事故を想定した訓練を実施すべきである。
3. 実効性のない訓練の繰り返し
(1) 新たな安全神話をつくる「スムーズな避難」
今回の避難訓練も住民の参加はごく一部である。避難指示の伝達漏れはなく、避難指示の前に避難所で待機する人もいる。避難バスも事前に配車され、自家用の避難車両も少なく、スクリーニングポイントでの渋滞も起こらない。課題として残るヨウ素剤の配布は今回も実施されなかった。こうした中で毎回確実に実現する「スムーズな避難」は、重大事故でも避難できるという新たな安全神話をつくることになる。
(2) 課題から逃げまくる非現実的訓練
住民へのヨウ素剤の配布、服用指示は重要な課題であるが、いまだ必要な住民への配布が可能かどうか検証はできていない。観光客など一時滞在者、特に近年増加する外国人旅行者への情報の伝達、避難、ヨウ素剤の配布等も懸念される。UPZ圏内の住民避難は、訓練ではあらかじめ風下エリアが決められているが、実際は緊急時モニタリングと連動した迅速、的確な行動が求められる。いまだ実践的な訓練は行われていない。防災業務従事者の被ばく対策や交代要員の確保も重要な課題である。加えて半島先端地域固有の課題もある。この間の訓練同様、今回も取り組みやすい項目をつまみ食いするだけの訓練に終始したと言わざるを得ない。
4. 繰り返して指摘する!「今こそ常識に立ち返れ」
一企業の、電気を生み出す一手段に過ぎない志賀原発のために多くの県民の命や暮らしが脅かされ、財産を奪われ、ふるさとを追われる危険に晒され続けている。このような異常な事態を放置し、さらには覆い隠すかのように防災訓練が繰り返されている。避難させるべきは住民ではなく核燃料である。北陸電力は人災である原子力災害を防止するため、直ちに志賀原発の廃炉を決定せよ。活断層上にある核燃料を速やかに撤去せよ。
2019年11月4日
志賀原発を廃炉に!訴訟原告団
社会民主党石川県連合
石川県平和運動センター
集 会 ア ピ ー ル(案)
2016年以降、衆参両院で3分の2を超える改憲勢力を確保した与党は、これを千載一遇のチャンスと見て、7月の参院選挙を改憲の是非を問う選挙と位置づけました。
しかし、私たちは参院選挙を通じ、改憲勢力の議席を3分の2未満に割り込ませ、国会の改憲発議が出来ない状況を再びつくりだしました。
これは、2017年9月に、総がかり行動から発展して結成された「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が呼びかけた3000万人を目指す「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」を軸に、全国連帯による市民・労働者の運動、院内野党の結束が連携して勝ち得た大きな成果です。直近の全国世論調査でも、改憲に反対する回答が6割近くを占め、国民は憲法「改正」を決して望んではいないことを改めて示しています。
にもかかわらず、2020年までに改憲を成し遂げようとする改憲勢力の執念は衰えてはいません。
他方、集団的自衛権の行使を念頭に、日米の軍事一体化はさらに進んでいます。敵地攻撃を可能とする極めて高額な最新兵器をアメリカから次々と購入し、人権である社会保障費を抑制しながら戦争をする国へと突き進んでいます。ジブチ共和国に居座る海自基地を拠点としてアラビア海へ艦船を派遣する方針は、タンカー護衛に名を借り、「自国の船は自国が守る」という「戦争宣言」を行ったものにほかなりません。
私たちは、こうした情勢を認識し、憲法理念にもとづいて戦争法廃止の運動をさらに強化し、小松、沖縄をはじめとする軍事基地の縮小撤去をかちとらなければなりません。
そして、改憲手続きの一環である憲法審査会を動かさず、改憲発議を決して許さない国会内外でのたたかいを私たちも石川の地から強化していきます。
平和憲法公布73周年にあたり、いかなる手法による憲法改悪の策動も許さない揺るぎない決意を改めて確認し、アピールとします。
2019年11月3日
安倍改憲阻止!11.3護憲集会参加者一同
11.3集 会 ア ピ ー ル
2016年以降、衆参両院で3分の2を超える改憲勢力を確保した安倍首相は、これを千載一遇のチャンスと見て、いわゆる「安倍改憲」4項目(⒈ 憲法9条に自衛隊の明記 ⒉ 緊急事態条項創設 ⒊ 教育の無償化 ⒋ 参院選挙区の合区解消)を示し、7月の参院選挙を改憲の是非を問う選挙と位置づけました。
しかし、私たちは参院選挙を通じ、改憲勢力の議席を3分の2割れに追い込み、国会の改憲発議の条件を失わせました。
これは、2017年9月に結成された「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が呼びかけた3000万人を目指す「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」を軸に、全国連帯による市民の運動、院内野党の結束が連携して勝ち得た大きな成果です。直近の全国世論調査でも、安倍改憲に反対する回答が6割近くを占め、国民は警戒心を緩めてはいません。国民は安倍政権の下での憲法「改正」を決して望んではいないことを改めて確認します。
しかしながら、安倍首相在任中の2020年までに改憲を成し遂げようとする改憲勢力の執念は衰えてはいません。参院選後の改造内閣では、日本会議国会議員懇談会事務局長である萩生田 光一氏を文科大臣に起用し、“日本会議系”極右内閣を組閣するとともに、臨時国会冒頭には、国会としての改憲案の策定に与野党の協力を促す所信表明を行いました。参院選後の野党の切り崩し、改憲派の多数派工作など国会内の動向とメディア統制の現状から、さらなる警戒が必要です。私たちは本集会で、伊藤千尋さんから講演を受け、さらにその認識を深めたところです。
改憲の本性を示す2012年の自民党憲法改正草案は、公の秩序、公益を人権の上に置き人々を縛る超国家主義が緊急事態条項に具現化すること、自衛隊の合憲化は集団的自衛権行使を含む国防の義務の強制へと行き着くことを予見させます。この改憲の危険性を真摯に問いかける運動が求められます。安倍内閣はトランプ米大統領の求めに応じ、ジブチ共和国に居座る海自基地を拠点としてアラビア海へ艦船を派遣する方針を決定しました。憲法に反し、日本を戦争の危機に晒すいかなる海外派兵も容認できません。この派兵阻止の声を上げましょう。
また、参院選野党統一政策で安倍政権下の改憲阻止を公約した野党各党には、国民との約束を遵守し、安倍改憲阻止のさらなる闘いに立ちあがるよう求めます。
改憲手続きの一環である憲法審査会を動かさず、改憲発議を決して許さない国会内外でのたたかいを私たちも石川の地からつながっていきます。
新天皇の即位儀礼を通じた改憲世論誘導には注意を払いながら、引き続き3000万人統一署名を通じて市民との対話を深め、いかなる手法による憲法改悪の策動も許さない決意を改めて確認し、アピールとします。
2019年11月3日
安倍改憲NO!改憲発議NO!11.3石川県民集会参加者一同
福岡高裁那覇支部による「国の関与取り消し訴訟」判決に抗議する声明
沖縄県による辺野古埋め立て承認撤回を取り消した国土交通大臣の裁決が、「違法な国の関与」であるとして、沖縄県が7月に国を相手に提訴した「国の関与取り消し訴訟」について、10月23日、福岡高裁那覇支部は、沖縄県の訴えを却下した。判決では、沖縄県の主張に正面から向き合うことなく、「裁決は国の関与から除外され、訴訟の対象となりえない」として、訴えをことごとく却下した。まったくの不当な判決であり、強く抗議する。
裁判では、本来、私人の権利を救済するためにつくられた行政不服審査法を、国の機関である沖縄防衛局が利用したことについての適法性について争われた。公有水面埋立法では、国が都道府県知事から埋め立て権限を得る場合は「承認」であり、国以外のものは「免許」として別な制度を設けている。このことからも、行政不服審査制度は本来、「承認」という特別な権限をもつ国の機関が利用できるものではないとの沖縄県の主張は、正当なものと言える。
しかし、福岡高裁那覇支部は行政不服審査法について「国の機関と一般私人とを区別することなく同様に扱うことが予定されている」として、国土交通大臣の裁決は違法ではないとした。国の機関による行政不服審査法の利用が認められれば、国は地方の意思を無視して、国の政策を強引に推し進めることができるようになりかねない。この判決は、辺野古新基地建設の違法性の問題にとどまらず、まさに地方自治の否定・破壊であり、決して許されるものではない。
さらに判決は、国が私人と同様に承認撤回処分を受けたことや、普天間飛行場の移設にともなう埋め立て事業を推進した内閣の一員である国土交通大臣による裁決だとしても「中立的判断者たる審査庁の立場を放棄していたということはできない」などとして、沖縄県の主張を全て退けた。本来、中立的な立場で判断を下すべき司法が、完全に国の強引な政策に追随していることは、極めて問題である。
辺野古新基地建設については、選挙をはじめとしたさまざまな形で建設反対の沖縄県民の意志が示されている。さらには、軟弱地盤の改良工事を可能とした防衛省の報告書が、大規模地震を想定していないずさんな報告書であることが明らかになるなど、ますます工事の不当性がはっきりとしてきている。このようななかでも、司法と一体になって、なにがなんでも工事を強行しようとする国の姿勢には、怒りを禁じえない。
本判決に対しては、沖縄県は今後、上告を予定している。また、同時に8月に那覇地裁に提訴されている「行政事件訴訟法」に基づく裁判も進行中である。平和フォーラムは、これら裁判の動向を注視するとともに、さらに全国で、辺野古新基地建設の撤回をもとめ、たたかいを強化していく。
2019年10月24日
フォーラム平和・人権・環境
関電幹部らの原発に関連した金品授受に抗議し、
全原発での厳密な調査を要求する(声明)
関西電力の八木誠会長、岩根茂樹社長ら20人が2011年~2018年の7年間で3億2千万円にも上る多額の金品を、関電の原子力発電所が4基立地する高浜町の森山栄治元助役(故人)から受け取っていたことが明らかになった。原発工事の関連会社が資金を提供していたという。関電は、発電量の6割近くを原子力発電に頼っていた。2011年3月の福島第一原発事故以降原発を稼働できない中にあって、電気料金を値上げして市民負担を強いる一方で、このような不当な利益を得ていたことは、市民感覚としても許すことはできない。
「不適切だが、違法な行為はない」との岩根社長の言葉は、利用者である市民を愚弄するものに他ならない。ここまで多額になれば、特別背任罪とも言える。外部の税務調査がなければ、この問題は闇に葬られていたのではないか。問題が発覚し社内の調査委員会が結果をまとめても、報道されるまで1年にわたって公表しなかった。関電のコンプライアンスの欠如には、あきれてものが言えない。電力産業は公益事業であり、ゆえに様々な税金が投入されている。このような企業が公益事業を担い原発を動かす資格などない。金品を受領した20人全員の遡っての辞任を要求する。
記者会見で岩根社長は、受け取った金額が20人で3億2千万円と明らかにしたが、様々な疑問には「個人のことなので回答は差し控える」と述べた。原発マネーの還流はないと強弁するが、そもそも原発に関わる地元企業の不正な金が、原発立地に深く関わってきた地元自治体の助役を通じて、関電幹部に流れたものである。原発マネーではないという詭弁は通用しない。「見返りはない。発注も適切だ」というが、誰が信じるのか。社会福祉事業なら理解もするが、見返りがなくて3億を超す金品を電力会社幹部に贈ることは市民の理解を超えている。一度は受け取りながら「返せるものは返したとしているが」全額とは言っていない。個人管理の中で使い込みはなかったのか、返却は発覚してからか、額も時期も明らかにしていない。関電の社会的立場を理解した発言とは思えない。
岩根社長は、社内の調査委員会の報告書を「個人情報が入っているので公表しない」とした。それでは、関電の責任を果たすことはできない。全てを明確にすることを強く望む。また、高浜原発以外の調査は現時点ではしていないとし、遡っての調査も実施していないとしている。岡田達司常務は「今後の検討」としたが、全ての原発に関わって調査することを強く要請する。
菅義偉官房長官は「不透明な形で長年にわたり金品を受領していたのは大変な問題だ」と発言しているが、経済産業省を中心とした監督官庁に責任はないのか。原発立地には、多額の資金が動くと言われてきた。これまで原発立地地域や立地予定地域でも度々問題とされ、不透明な金にまつわる話は枚挙にいとまない。全ての原発立地においてこのような事例がなかったか、しっかりと調査をするのが政府の責任ではないのか。原発メーカー、電力会社、大手建設会社や地元企業、そして地方自治体に広げた厳密な調査を要求する。
原発立地の地元理解は利益誘導によって進められてきた。原発が存在する限り、これからもこのようなことが繰り返されるだろう。脱原発は、安全の問題だけではなく、民主主義の問題でもあることを、今回の事件は象徴している。脱原発の運動は、平和と民主主義を守ること、原水禁はしっかりとそのことを踏まえ、今回の事件への追及の手を強めていく。
原水爆禁止日本国民会議
議 長 川野 浩一
あらかじめ作られた結論
関西電力の問題矮小化は許されない
NPO法人原子力資料情報室(HPより無断転載)
関西電力(関電)の幹部20人が、福井県高浜町元助役の森山栄治氏から多額の金品を受け取っていたことが金沢国税局の調査をきっかけに明らかになった。元助役は、関電から仕事を受注していた複数の会社と親密な関係にあり、そうした会社から関電に仲介した見返りとして受け取った資金の一部を関電幹部に渡していたとみられる。また元助役は関電全額出資子会社「関電プラント」の非常勤顧問も30年以上にわたって続けていた。関電は、国税局からの指摘を受け、内部調査を行い、昨年9月には調査報告書を作成して、社内処分もおこなっていたが、報道で明らかになるまで公表してこなかった。
関電のきわめて限定的な調査でも7年間で3億2千万円に上る巨額資金を同社幹部が受け取っていた。きわめて言語道断な事態だ。関電は批判の広がりをうけて、改めて第三者委員会を組織して内部調査を行うとしている。
公表された昨年9月の内部調査報告書では、元助役の特異性が強調され、役員は金品の受け取りを強要されたように描かれている。あたかも関電は被害者であるかのようだ。しかし関電は、役員が元助役を介さず、受注業者から金品を直接受領したケースも存在することも把握している。受注業者も受け取りを強要したとでもいうのか。さらに関電も報告書も、元助役の資金の出元であった受注業者への発注は価格も含めて適正だったという。
冗談ではない。発覚の発端となった税務調査で、森山氏に受注業者1社から3億円が渡り、そのうち1.8億円が関電にながれたことが明らかになっている。一体この3億円はどこからきたのか。会見で、関電はこの資金の出元はわからないなどと述べたが、もし本当にそうなら無能以外の何者でもない。自社の調達価格に上乗せされていた以外、あり得ないではないか。
問題の本質は、電力会社という公益事業者が自らの優越的地位を利用して、地元の有力者と親密な関係を構築するために、電力消費者の負担を度外視した価格で発注していたことだ。そのような土壌があったからこそ、森山氏の不当な介入を許すことにつながった。当該事業者への発注価格が他社への発注と同水準だとも説明するが、であれば、むしろ、関電全体の調達価格水準の高さを疑うべきだ。
関電が第三者委員会に委託するのは、1.森山氏関係追加調査、2.社外からの不適切な金品提供事案はほかにないか、3.これまでの調査プロセス・調査結果・会社の対応は妥当か、の3点だ。この委託内容から、役員の金品受領に問題を矮小化しようとする意図が透けて見える。
関電が第三者委員会に委託すべきは、第一に、自社の発注価格の適正性と、発注が公正なプロセスで行われていたかだ。さらに、いつ、だれが、どのようにして金品を返済したのかについても明らかにしなければならない。森山氏という特異なキャラクターで問題を矮小化しようとする関電を許してはならない。また国も関電という1電力の問題にとどめるのではなく、電力業界全体の問題としてとらえるべきだ。関電に限らず、他の電力においても、地元有力者が経営・関与する事業者に仕事を発注していた事例は枚挙にいとまがないからだ。
責任逃れに終始し、問題を隠蔽しようとした関電の姿は、15年前、下請け会社に11名の死傷者をだした美浜3号機の2次系配管減肉破断事件をほうふつとさせる。今回も、1億円以上も受領していた役員にたいしてですら極めて軽微な処分しか行なわず、しかも隠ぺいしようとした。内部に甘く、事態を直視できない関電に、核分裂を制御してエネルギーを取り出すという微妙な技術に関わる力量があるのか。関電は、第三者委員会にたいして、ガバナンスのみならず、自社に原子力事業を行う資格があるかについても、問わなければならない。
以上
宮古島住民の生活を犠牲にした弾薬庫建設を許さず、
南西諸島における自衛隊の新基地建設に抗議する声明
2019年10月3日
フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)
事務局長 勝島 一博
防衛省は2019年10月、沖縄県宮古島の陸上自衛隊のミサイル部隊等の新設に関わり、弾薬庫の建設工事に着手するとしています。地元住民の反対の声を無視した着工を許すわけにはいきません。
宮古島市城辺保良の採石場(保良鉱山)に新たに造られる弾薬庫は、保良集落や七又集落に近接し、最も近い民家で200メートルほどしか離れていません。日々の生活を営んでいる住民の間近に危険な弾薬庫を造ることは、人びとの命とくらし、財産を全く軽んじているとしか言いようがありません。
宮古島の弾薬庫をめぐっては、「誘導弾を保管する弾薬庫は整備しない。警備等に必要な小銃弾等の保管庫を整備する計画」と防衛省は説明していましたが、2019年3月に新設された宮古島駐屯地に、中距離多目的誘導弾と迫撃砲弾を保管する弾薬庫が設置されていることが判明。「政府はミサイル基地を造るために住民に嘘をついた」と宮古島住民の批判が湧き起こっていました。その後、防衛省は弾薬を島外に搬出したものの、今後は保良鉱山に造られる新たな弾薬庫に保管するとしています。
自衛隊の宮古島配備、新基地建設では、2016年に野原集落会、千代田集落会が反対決議を上げ、ミサイル・弾薬庫等に近接する保良集落会が2017年に、七又集落会は2018年に、反対する決議を上げています。
住民に虚偽の説明まで行い、新基地建設を進めてきた政府・防衛省の責任は極めて重く、これ以上、新基地建設工事をすすめるべきではありません。保良集落会の決議では、「農漁業や観光で発展する可能性に富んだ地域に、弾薬庫等を配備することは、人びとの生命、財産をおびやかし、地域発展を阻害する」と訴えています。これら住民の切実な声を政府は真摯に受け止めなければなりません。
安全保障関連法(戦争法)の成立以降、安倍政権は、いずも級護衛艦の空母化、長距離ミサイル弾の導入、ステルス戦闘機の配備など、攻撃型兵器の充実を図り、日本領域に限定し必要最小限の防衛力としてきた「専守防衛」のあり方は、すでに破たんしています。日本の領域を超えた南シナ海での日米合同軍事訓練の実施や南西諸島へのミサイル部隊の新設などは、日米統合軍として米軍の東アジアでのプレゼンスを補完し、対中国を意識した軍事力増強の一環であることは間違いありません。
平和フォーラムは、東アジアの安全保障環境を不安定化させる、宮古島をはじめ南西諸島の自衛隊強化を許しません。そして、人びとのくらしに悪影響をもたらす弾薬庫および自衛隊の新基地建設に抗議する地元住民の訴えに連帯し、総力を挙げてとりくみを進めていきます。
被爆74周年原水爆禁止世界大会・広島大会基調
猛暑の中を全国各地から原水禁世界大会広島大会に足を運んでいただきました皆さまに、心から感謝を申し上げます。若干の時間をいただき、原水禁世界大会の基調提案を行わせていただきます。
原爆投下から、広島は74年目の夏を迎えようとしています。被爆者の願いであった「核兵器禁止条約」が122カ国の賛成によって採択されてから2年がたちました。すでに70カ国が署名し、8月2日現在24カ国が批准を済ませています。遠からず条約は発効します。
日本政府は、条約が米国の核抑止力を否定するとして、署名・批准には後ろ向きです。外務省は、「核に頼らない安全保障を考えていかなくてはならない。その状況を作っていきたい」と答えています。その姿勢は、まさに核兵器禁止条約の署名・批准への姿勢なのです。被爆国日本の政府が核兵器禁止条約の署名・批准を行う。そして非核保有国すべてが批准する。そのことで核抑止のあり方を変えていく。唯一の戦争被爆国日本の政府の役割はそこにあります。
原水禁は、連合、KAKKINとともに、日本政府に対して核兵器禁止条約の署名・批准を求める「核兵器廃絶1000万署名」をスタートさせました。日本から、非核保有国全てへ、そして核保有国へ、核兵器禁止条約の輪を広げていきましょう。原水禁は、核兵器廃絶1000万署名に全力を尽くします。
「ストックホルム国際平和研究所」が発表した推計によれば、2019年1月時点の米露英仏中の5カ国とインド、パキスタン、イスラエル、朝鮮を加えた計9カ国が持つ世界の核弾頭数は1万3865発で、米露による削減の結果前年度比で600発の減となっています。
新START、新戦略兵器削減条約は、確実に核弾頭数を減らしています。しかし、一方で同研究所は、核弾頭や発射システム、製造施設など核兵器に関わる総体の近代化が進められているとも指摘しています。
トランプ政権は、この間、「アメリカ・ファースト」「力による平和」を標榜して、一方的、挑戦的な強硬姿勢を貫き、これまで国際社会が作りあげてきた、核軍縮の枠組みを破壊しています。2018年には、イランとの核合意から一方的に離脱し、イランへの経済制裁を再開しました。混迷をますイラン情勢は、ペルシャ湾・ホルムズ海峡での緊張を生み出し、自ら有志国連合を呼びかけることとなっています。
今年2月には、ロシアとの中距離核戦力全廃条約からも、ロシアの中距離核開発と条約の制約を受けない中国の中距離核開発を理由に離脱を表明し、8月2日に条約は失効しました。米露間では、今後中距離核開発をめぐって軍拡競争へ突入していく危険性も懸念されます。ヨーロッパ地域や東アジア地域の安全保障にとって、重大な事態を招いています。米国からは、同盟国日本への中距離核の配備要請の声も聞こえ、国是である非核三原則に抵触し、その空洞化すら懸念されます。米露両国は、重要な新STRATの継続の協議も含めて、核保有国の責任として、新たな核兵器削減・廃絶の枠組みの構築に努力しなくてはなりません。
米トランプ大統領との親密な関係を強調し、日米同盟の深化を提唱する安倍政権は、核搭載可能なF35ステルス戦闘機105機、総額で1兆4000億円もの購入を決定し、ヘリ搭載の護衛艦「いずも」をF35B戦闘機を搭載しての空母への改修、敵基地攻撃を目途にした巡航ミサイルなどの導入を決定しています。
昨年9月には、海上自衛隊は最大級のヘリ空母「かが」を含む護衛艦3隻と潜水艦「くろしお」を南シナ海に派遣し、対潜水艦訓練を目的とした演習を実施しました。ヘリ空母「いずも」と護衛艦「むらさめ」は、今年5月に、米海軍、インド海軍、フィリピン海軍との4カ国共同訓練を南シナ海で実施し、6月には、同じ南シナ海海域で、原子力空母「ロナルド・レーガン」を中心とする空母部隊との共同訓練を実施しています。米国や英国も駆逐艦などを派遣し「航行の自由作戦」を展開し中国と対立するきわめて緊迫した海域での訓練は、極めて異例です。
安倍政権は、一帯一路政策を推進する中国を仮想敵として、インド太平洋構想を提唱し、米軍と一体となった軍事行動を展開しています。米国は、第2次大戦後も「世界の警察」を自任しながら、自らの覇権かけて、世界各地で地域紛争に介入しつつ、自ら戦争をひき起こしてきました。安倍政権の「日米同盟基軸」の姿勢と「積極的平和主義」の考えは、日米一体となった「日米統合軍」をつくり出し、自ら積極的に米国の覇権に協力することを確実にしています。
このような情勢を受けて、沖縄県名護市辺野古では、在日米軍海兵隊の新基地の建設が強行されています。県知事選挙、各国政選挙、そして今年2月の辺野古埋立の賛否を問う県民投票、様々な形で示された沖縄県民の辺野古新基地建設反対の意志は、安部政権の建設強行に踏みにじられ、もはや沖縄には民主主義、憲法がないと言うほどの事態を引き起こしています。私たちは、沖縄県民とともに、核のない、基地のない沖縄をめざしてとりくまねばなりません。
G20大阪サミット後の6月30日に、韓国を訪問したトランプ米大統領は、軍事境界線上の板門店において、出迎えた金正恩朝鮮国務委員長と約50分間にわたって会談しました。会談の中で、今年2月のハノイでの会議以降途絶えていた朝鮮半島の非核化への実務者協議を、再開することで合意をしています。
朝鮮半島の非核化に向けての議論は、一朝一夕に進むものではありません。米朝間もしくは中国を加えて、朝鮮戦争の終結、平和協定の締結、さらには東北アジア非核地帯構想の実現に向けて進み出すこと、段階的な非核化へのプロセスとそれに伴う制裁措置の解除、話し合いの進展のために連絡事務所の開設など、信頼感を高めながらひとつ一つの課題を克服していく粘り強い努力が必要です。早期の実務者協議の再開が待たれます。
朝鮮半島情勢が進展する中にあって、制裁の強化に固執してきた安倍首相は、この間、存在感を示すことができないできました。重要課題としてきた拉致問題さえも、米朝首脳会談に託すこととなっています。情勢を打破すべく、安倍首相は突然、朝鮮に対して「無条件の対話」を提起しました。朝鮮政府は、「朝鮮への敵視政策は少したりとも変わっていない」と突き放しています。
安倍政権は、2002年の「日朝平壌宣言」に立ち返って交渉を開始すべきです。日本国内における、高校無償化からの排除に象徴される在日コリアンへの差別の解消や在朝被爆者への援護開始、国交回復後の拉致問題の解決などを前提としつつ、朝鮮敵視の政策を転換し、まずは連絡事務所の相互開設などによって相互信頼の醸成にとりくみ、対話の中で国交の正常化をめざすべきです。朝鮮敵視政策を継続する安倍政権は、21世紀の東アジア社会での自らの立場を誤っています。
次に、原子力エネルギーをめぐる現状と福島の今について提起したいと思います。
雑誌「世界」の2019年7月号、「原子力産業の終焉」と題した特集において、原子力アナリストのマイケル・シュナイダーさんは、原子力発電所の現状について、世界の商業用電力ミックスにおける原子力の割合は、1996年以来17.5%から10%に低下し、様々な要因から原発はもう市場での競争力を失っていると指摘しています。
安倍政権がアベノミクスの重要な柱に位置づけてきた、日本の原発輸出政策は、インド、ベトナム、トルコ、イギリス、ヨルダンで、全てが頓挫・失敗・撤退しています。安全対策などによる原発建設コストの増大は、原発を市場経済から閉め出す方向に動いています。
東芝、日立製作所、三菱重工の日本を代表する原発メーカーが、政府方針とともに原発建設に拘泥するならば、企業の将来にも、日本経済にも暗雲をもたらすでしょう。原発輸出を基本政策としてきた安部政権の責任は重大です。
原水禁は、原子力の商業利用にも、一貫して反対してきました。福島第一原発事故に際しては、大江健三郎さん、瀬戸内寂聴さんなどの9人の呼びかけ人と、様々な市民の皆さんの協力を得て、「さようなら原発1000万人アクション」の運動を展開し、「脱原発・持続可能で平和な社会をめざして」の声を上げ続けてきました。私たちの知る限り、脱原発の世論は圧倒的多数を示しています。これほど世論と政治の乖離が大きい政策はありません。
事故を起こした福島第一原発の現状は、極めてきびしいものがあります。事故収束までの費用を経産省は21兆5千億円と見積もっていますが、70兆円などとの試算も出ており、今後の見通しは全く立たずにいます。
高線量の放射能に阻まれて、溶融した核燃料は手つかずのまま、冷却を続けるしかない状態で、汚染水はたまり続けています。作業の長期化は避けられません。福島県内には、汚染水のみならず、瓦礫、伐採木、防護服などの焼却灰、そして除染によって出された汚染土など、様々な放射性物質に汚染されたものが、未だに住環境のすぐ側に積み上げられています。事故収束作業や様々な場面で労働者がヒバクする事態は避けるべきであり、何よりも暮らし続ける市民の環境をこれ以上汚染することは許されません。
福島県は「県民健康調査」において、福島原発事故当時、概ね18歳以下であった子どもたちに甲状腺(超音波)検査を実施してきました。2019年 3月末現在、2018年末より 6人増えて218人が甲状腺がんまたはがんの疑いとされ、174人が手術を受けています。甲状腺評価部会は「現時点で、放射線被ばくとの関連は認められない」としていますが、甲状腺がんを始めとする健康リスクは、原発事故がなければなかったのです。
国は事故の責任を認め、被爆した人々の医療支援や精神的ケアに全力を尽くすべきです。浪江町や飯舘村では「健康手帳」のとりくみがすすめられています。広島・長崎の被爆者、そして原水禁運動が、長い闘いの中で勝ち取った、原爆被爆者健康手帳と同様の法整備を、国の責任として進めなくてはならないと考えます。
被災地福島では、8年余経った今も県内に1万1,084人、県外に3万 1,608人、避難先不明者も含めて合計4万2,705人が、長期の避難生活を余儀なくされています。
政府は、法律で定められている年間被ばく限度1mSvに従わず、国際放射線防護委員会が定めた、重大事故時の被ばく基準を勝手に適用し、法の定めの20倍もの被ばく量を、避難指示を解除した地域の住民に押しつけています。
避難指示解除に合わせて、住宅支援、精神的賠償などの支援を次々に打ち切り、被災者が帰らざる得ない状況を作り出しています。避難指示解除区域では、医療や介護、日常生活に必要な各種インフラやサービスは全く不十分なままで、居住率は25%程度、高齢化率は、事故前の27.3%から44.3%に上昇しています。
国は、「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」を策定し、福島事故では放射線の被ばくによる健康影響は今後もなく、福島は復興しつつあるとし、事故被害者を切り捨て、原発再稼働を推し進めようとしています。
復興庁作成の「放射線のホント」や文科省が全国の小中高校に配布した「放射線副読本」などは、放射線のリスクを矮小化し、誤った知識を持って原発の稼働を許そうとするものです。将来のエネルギー政策を選択する権利を持つ者に対して一方的な意見を押しつけることが許されるわけがありません。風評払拭と言う言葉を利用して、フクシマを亡きこととし、原発推進をすすめる環境づくりを許してはなりません
政府は、電力会社は、目先の利益のみを追求し、膨大な投資を行い、原発の再稼働をすすめようとしています。経団連は、原発を基本とした将来のエネルギー政策を提言し、国の第5次エネルギー基本計画には入れることができなかった原発の新設も、要求しています。中国電力は、地元広島に近い上関原発の埋め立て申請許可の延長を求めるなど、原発新設に前のめりの姿勢を見せています。フクシマの現状を見たとき、第一原発の前に立ったとき、なぜ、原発を将来のエネルギーとして選択できるのか、理解できません。全ての状況が、全ての数字が、「脱原発」を選択していることは明らかです。
死を目前にする兵士の心情を描いた「桜島」で著名な小説家、梅崎春生は、「どのみち死なねばならぬなら、 私は、なっとくして死にたいのだ」と述べています。1945年8月6日、瞬時に奪われた命は、何を思うのでしょうか。「納得」と言うならば、納得すべき何ものもなく死に見舞われた者は、何を思うのでしょうか。
広島大会に先立つ福島大会で、多くの原発事故被災者に「ふるさとの喪失感」が伴うとの話を聞きました。故郷を奪われたことを、どう自らに納得させるのか、その困難が、喪失感を生んでいくのでしょうか。
命と命に付随する人間の全てを、私たちは決して「納得」せずには奪われない。その権利を持っていることを、改めて確認したいと思います。そして、そのことを原水禁の基本に据えて、更なる運動の展開をめざそうではありませんか。
その決意を申し添えて、被ばく74周年原水禁世界大会の基調提案といたします。
2019年8月2日
中距離核戦力(INF)全廃条約失効に関する事務局長談話
原水爆禁止日本国民会議
事務局長 藤本泰成
米露の二国間で交わされていた「中距離核戦力(INF)全廃条約」が、8月2日失効した。今年2月に米国は、ロシアが条約に反して中距離核の開発を進めているとして、条約からの離脱を表明して以来、ロシアと対立したまま条約が定める失効日を迎えた。核兵器禁止条約が採択され、徐々に署名・批准する国が増加し、核兵器廃絶への声が高まった中で、中距離核戦力(INF)全廃条約の失効の影響は大きい。「核なき世界」を希求してきた国際的機運の後退が懸念される。
INF全廃条約は、東西冷戦の中1987年12月8日に、米国とロシア(旧ソ連)の間で調印され、条約が定める期限(1991年)までに、米露双方の中距離核戦力は全廃された。ヨーロッパ社会の安全保障にとってきわめて重要な条約であったことは間違いない。米トランプ政権は、条約に参加しない中国も含めて新たな核軍縮の枠組みをと提言したが、この間そのような状況が動き出したとは聞かない。一方的な離脱と提言からは、何も生まれてはいない。
「核なき世界」を提唱した米オバマ前政権の政策から一変して、米国トランプ政権は、自国第一主義と力による平和を標榜して、他国に対して様々な圧力をかけ続けてきた。昨年のイランの核合意からの離脱は、ペルシャ湾ホルムズ海峡の不安定化をもたらし、自ら世界各国へ有志国連合への参加を呼びかけるものとなった。INF条約やイラン核合意からの離脱は、その象徴的なものである。これまで世界が長い間地道に積み上げてきた、平和と核兵器廃絶への枠組みを、米トランプ政権が一方的に破壊していくことは絶対に許されない。2021年には、新戦略兵器削減条約(新START)が期限を迎える。更なる削減に向けて米露両国は、条約の延長に向けた交渉をすみやかに開始すべきだ。
米トランプ政権は、核政策の見直し(NPR)において、地域を限定して使用可能とする核弾頭の小型化や通常兵器の攻撃に対して核の使用を可能とするなど、核攻撃能力の強化を狙っている。自らが核に依存する一方で、朝鮮民主主義人民共和国に対して核政策の放棄を要求している。自らの強力な軍事力を背景にして、思うがままに主張していく米国の姿勢が世界平和をつくりあげるとは決して言えない。一方的で独善的な圧力は、予期せぬ事態を誘発していく可能性がある。
日本政府も、日米同盟の深化を標榜し、米国の核抑止に依存し核兵器禁止条約の署名・批准に否定的な姿勢を崩さない。唯一の戦争被爆国を標榜する日本の姿勢とは、到底言えるものではない。 2020年に控えたNPT再検討会議に向けて、米国を中心とした核兵器保有国は、核兵器廃絶へ向けた確固たるアプローチの再構築をめざさなくてはならない。日本は、そのためのイニシアチブを確立しなくてはならない。原水禁は、原水禁世界大会を前に、「核絶対否定」の原則の下、核兵器廃絶の声を後退させることなく、全力でとりくんでいく。
被爆74周年原水爆禁止世界大会「フクシマ アピール」
原発事故から8年余りが経過しましたが、原発事故で失われた人々の生活は取り戻せません。今でもたくさんの県民が、原発さえなければという思いを抱きながら暮らしています。旧避難区域では「復興」に向けた努力が続けられていますが、まだまだ住民の帰還には多くの課題があります。故郷への帰還を待ち続けながらも、その思いが叶わず「無念」のうちに亡くなられた方も多く、原発事故関連死は2000人を超え増え続けています。
福島県に隣接する、女川・東海第二・柏崎刈羽原発をはじめ全国で、原発の再稼働反対の運動が進められています。世界では、フクシマ原発事故の甚大な被害を教訓に、脱原発の方向にエネルギー政策を転換する国が増えています。8年以上が経過しても元に戻せないフクシマの現実を直視し、そして共有し、フクシマから発信し続け、原発のない社会の実現を展望した運動を強めなければなりません。国の原発推進政策を中止させ、エネルギー政策の転換を強く求めていきましょう。
原発事故直後の高線量の中で、多くの人々が、被ばくを強いられた事実を消すことはできません。そして健康への不安は消えることはありません。私たちは、国策で推進した原発で重大事故を起こし、放射能汚染をもたらし、多くの人々に被ばくのリスクを負わせ、人権を侵害した国と東電の責任を改めて厳しく問い、責任を持って被害者の健康管理と医療、生活の補償を行うよう、とりくみを進めなければなりません。
国や東電は、原発事故による放射能の被害を消し去ろうとする動きをより強めています。県内では、「復興」と東電福島第一原発の事故収束・廃炉作業の「安全性」をPRする施設が次々と作られています。また、モニタリングポストの撤去や米の全袋検査から抽出検査への切り替えの動き、トリチウム汚染水の海洋放出問題、除染土壌を公共事業に再利用する実証実験など、事故による放射能汚染を隠し、さらに拡散しようとしています。このような動きに反対するとりくみを引き続き強めましょう。
2019年7月27日
2019年7月17日
石川県知事 谷本正憲 様
さよなら!志賀原発ネットワーク
志賀原発を廃炉に!訴訟原告団
命のネットワーク
石川県平和運動センター
(公 印 省 略)
申 入 書
7月5日、志賀原発地内の1号機原子炉建屋そばの防災資機材倉庫付近で作業・点検中の高圧電源車が火災を起こしました。
この高圧電源車は、福島第一原発事故の教訓の一つであり「要」であり、電源の確保は、「故郷の存続」に関わる重大な問題です。その電源車で火災を起こしたことの重大性は言を俟ちません。
臨界事故、その事故隠し、安全文化の構築とは裏腹の雨水流入事件、モニタリングポストの水没、作業小屋火災‥、緩みっぱなしと言わざるを得ません。そして、最大の問題点は、「典型的な活断層」を否定し続け、安全性を放置したまま「再稼働」を目指していることです。「また事故か、どうなっとるんや」「やっぱり、原発を運転する資格なしやな」という声が巷に鳴り響いています。
このような状態の中で、またぞろいつものように「安全性に万全を期すこと」と指導しても何らの解決にもなりません。石川県は今回の事態を深刻に受けとめ、県民、住民の「安全・安心」を担保するため、従来の延長線上ではない「安全・廃炉」指導を行なうことを申し入れます。
記
1 北陸電力は、福島第一事故以降も絶え間なく志賀原発で事故を起こしており、原発を運転する「技術的」「倫理的」「能力的」資格がない。志賀原発を廃炉にする指導を行なうこと。
2 志賀原発は「典型的な活断層」の上にあり、県民、住民の「安全・安心」を担保するには、志賀原発を廃炉にするしかありません。廃炉のための指導を行なうこと。
3 2号機の新規制基準への適合性申請では、高圧電源車からの給電も含めた重大事故対策が有効に機能するかを評価し『確認』したとありますが、今回の火災は申請内容に重大な誤りがあったことを北陸電力自ら立証したこととなり、申請は取り下げるべきと考えます。申請取り下げを指導すること。
4 廃炉には相当期間が必要であり、その間の安全を確保する観点から、いわゆる「原子力ムラ」に属さない科学者、地形、断層、放射能、医療などの専門家、脱原発団体から選出した者による「廃炉準備点検委員会(仮称)」を安全対策室の下に設置し、その団体を実施主体とした「総合安全点検」を、原子力規制委員会の点検に加えて行なうこと。
2019年7月12日
申 入 書
北陸電力株式会社 社長 金井 豊 様
さよなら!志賀原発ネットワーク
志賀原発を廃炉に!訴訟 原告団
命のネットワーク
石川県平和運動センター
富山県平和運動センター
7月5日、志賀原発で高圧電源車から出火するという火災事故が発生しました。志賀原発構内での火災はこれが3件目ですが、今回は、安全強化策のために配備された高圧電源車からの出火でした。
ところが、当日発表された北陸電力のプレスリリースは、すでに鎮火していることや外部への放射性物質の影響はなかったこと等をごく簡単に報告し、さらに「本事象は、法令の報告対象ではありません」と述べ、あたかも大したことではなかったというような印象を与えるものでした。その文面からは、高圧電源車の火災が「あってはならない重大な事故」であるという認識はまったく感じられず、今後の対応についての言及も謝罪の言葉もない内容でした。
しかし、高圧電源車は福島第一原発事故の教訓を踏まえて、緊急時の電源確保の重要性に鑑み、大事故の際の「事故収束活動の強化・充実」のために配備されたものです。その電源車が点検の二日後にバッテリーケーブルがはずれていて火災を起したのですから、配備された電源車が肝心の緊急時に実際に機能するのかどうか、危惧せざるを得ないような重大な事故のはずです。
2号機の新規制基準への適合性審査の申請では、「高圧電源車からの給電も含めた重大事故対策が有効に機能するかを評価し、対策により事故の進展を防ぎ、原子炉を安定的な状態に保つことができることを『確認』した」とあります。ところが今回の火災事故により、「代替電源からの給電」は絵にかいて「確認」していただけで、実際には機能しないことがあり得ることを北陸電力は自ら実証してしまったのです。これでは申請内容に偽りありと言う他なく、当然、申請は取り下げるべきです。
たとえ停止中であっても電源喪失が起これば使用済み核燃料プールの冷却ができなくなる等、電源の確保は原子力発電所が稼働中か否かにかかわらず安全性に直結する重大な問題です。電源車の火災事故が発生し、しかもその重大性についての認識を欠く対応には、あらためて「北陸電力には原発運転の資格なし!」と言わざるを得ません。北陸電力は、直下に活断層の存在が指摘されている志賀原発の早期再稼働にいまだに固執し続けていますが、停止中の原発の安全管理さえできない電力会社が原発を再稼働させることなど、断じて許されません。
志賀原発は1号機、2号機ともに2011年3月以降停止してすでに8年4ヵ月が経過していますが、この間、この火災事故だけでなく、雨水が原子炉建屋内に流入にすることによる漏電事故、
大雨によるモニタリング・ポスト浸水事故、あるいは運転開始以来一度も点検していなかった換気装置のフィルター損傷等々、事故トラブルの類は枚挙にいとまがありません。一般向け配布しているパンフレットには「志賀原子力発電所では、“福島第一のような事故を起こさない”決意のもと、全力で取り組んでいます」と書かれていますが、「安全最優先」というのは掛け声だけで、現実にはいつどのような事故が起きるか分からない、止まっていても危険なのが志賀原発の実態です。
これらの事故トラブル多発の背景には、長期間停止による運転員のモチベーションの低下やたるみ、チェック体制の不備など「安全文化の構築」にはほど遠い現場の状況があるに違いありません。さらに、事故が起きた際の北陸電力の対応からは、原子力発電所が抱える本質的な危険性への認識が、そもそも欠如しているのではないかと懸念せざるを得ません。
電力供給には必要のない、まったく発電せずに電力を消費しているだけの原発のために、これ以上危険にさらされることのないよう、高圧電源車の火災事故を踏まえて、あらためて「北陸電力に原発運転の資格なし!」と訴えるとともに志賀原発の速やかな廃炉を求め、以下、申し入れます。
【 申入れ事項 】
1.志賀原子力発電所は1号機、2号機ともに 直ちに廃炉にすること。
2.志賀原子力発電所2号機については、新規制基準への適合性審査の申請を速やかに取り下げること。
6.20原水禁富山→石川引継ぎ式・かほく地区集会(内灘町役場前)基調(案)
ヒロシマ・ナガサキから74年、ビキニ、フクシマと被ばくを強いられた私たちは、総力をあげて「核廃絶」「脱原発」を訴えてきました。その一端は、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のノーベル賞や国連の「核兵器禁止条約」の成立として結実しました。
ところがアメリカは、MDシステムを配備し、相手国の核兵器を無力化させ、実戦で使える「小型核」さえ開発しています。ロシアは、そのMDをかいくぐる新型核を、中国は、米軍の中枢を壊滅させる核を配備しました。この夏、米・ロの中距離「核」全廃条約は期限切れとなり、世界は新たな「核軍拡」の時代に突入しようとしています。
このような中で、唯一の被爆国である日本は、核廃絶でリードするどころかアメリカを「全面的に支持」して米軍との軍事一体化を進めており、「核兵器禁止条約」の批准には後ろ向きです。
一方、志賀原発の断層は、「活動性を否定できない」と有識者会合が認定したにもかかわらず、北陸電力は「安全第一」を無視して「再稼働」を目指しています。そもそも、活断層上に原発建設(着工1988年)を誰が認めたのでしょうか。それは、班目(マダラメ)元原子力安全委員長が国会で答弁したように、「そんなことを気にしていたら原発なんか建たない」という考えのもと、北電・行政が強行したものと言わざるをえません。
その北電は、志賀1号炉で「臨界事故」(1999年6月)を起こし8年間も隠蔽しました。その反省は「蛍光灯が切れても報告する安全風土づくり」でしたが、2016年9月28日、雨水6.6トンが原子力建屋に浸水して配電盤がショートする重大事故を起こしました。しかし、10月3日の「原子力環境安全管理協議会」に報告せず、またまた隠蔽したのです。いまだに「安全性」より「利益第一」の北陸電力には、「原発運転の資格なし」と言わなければなりません。
私たちは、世界の労働者・市民とともに、「ノー・モア・ヒバクシャ」「ノー・モア・ニュークリア」「ノー・モア・ウオー」の声を上げなければなりません。憲法9条に「自衛隊を明記」して戦争と軍隊を肯定し、災害対策を隠れ蓑に、独裁条項である「緊急事態条項の新設」を狙い、「教育無償化」を口実に国家主義教育を強化しようとする安倍政権を倒さなければなりません。そうしなければ、世界に、子どもたちに未来はありません。
原水禁石川県民会議はこのことを訴えて基調といたします。
2019年6月20日
6.8「志賀原発を廃炉に!」訴訟原告団総会アピール(案)
ヒロシマ、ナガサキを二度と繰り返さないと誓った私たちは、悔しいことに一部で、「原子力の平和利用」の名のもと受け入れ、原発は「安全」で「クリーンなエネルギー」という政府・電力会社のふりまくキャンペーンに巻き込まれ、2011年3月11日、取り返しのつかないフクシマ原発事故を招き、そこに住んでいた多くの人たちを被ばくさせ、故郷を永遠に奪ってしまいました。
あれから8年、福島原発1~3号機の圧力容器の底を突き破った核燃料デブリは、近づけば即死するほどの放射能を今も発し続けています。
3・11以降、政府により国内の全原発が停止されましたが、電力会社は、節電キャンペーンを洪水のように繰りひろげた。しかし、日本のどこにおいても電力が足りなくなって止まるというような事態は生まれませんでした。
2012年6月、「志賀原発を廃炉に!」するため裁判に訴えた私たちの闘いは、間もなく7年を迎えようとしています。すでに有識者会合が、全会一致で敷地内断層を「活断層の可能性を否定できず」と明らかにしているにもかかわらず、金沢地裁は裁判をせず結審を引き延ばし、判決は放置されてきたと言わざるを得ません。
2014年5月21日、大飯原発3・4号機の差し止め訴訟で樋口英明裁判長は、「生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害の恐れがあるときは・・・侵害行為の差し止めを請求できる・・・その差し止めの要請が強く働くのは理の当然である」「豊かな国土とそこに国民が根を下し生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」という明快な判決を下しました。
樋口裁判長はこの判決にあたって、「現在、原発が完全に安全と思っている人は少数でしょう。ただ、大多数の人はそれなりに安全性があると思っている」と分析し、むしろ「現実的な危険性の有無に裁判官が積極的に目を向けていない」ことを問題提起している。そして、日本列島は4つのプレートの真上に位置し、地震の空白地帯はないので「強い地震は来ない」と誰も予言できない。「常識的な発想、通常の経験則で答えは出るはず」として、「この危険性に着目して裁判すれば結論は明らか」と言い切っています。これほど明快な答えはありません。
危険極まりない原発をこれ以上放置することを許してはなりません。まして、新たに原発の再稼働を認めることは狂気の沙汰と言わなければなりません。
私たちは声を大にして、改めて言わなければなりません。志賀原発をはじめ、一切の原発の即時停止と廃炉を強く求めます。そのために、富山新訴訟をはじめ、脱原発の闘いを強化します。そのことを確認して総会アピールとする。
2019年6月8日
志賀原発を廃炉に!訴訟原告団総会参加者一同
北信越キャラバン5.29沖縄連帯集会アピール(案)
あらたな「捨て石」、九州、南西諸島 日本全土の軍事基地化を許すな!
いま、安倍政権は、九州を含めた南西諸島にミサイル部隊や水陸機動団を配備し、辺野古では、米軍の最新鋭基地を、「建設反対」の県民意志を何度も無視して強行し、軍事基地が連なる要塞列島となりつつあります。
また、「対中国戦」を想定し、揚陸艦と連携したオスプレイの「軍事訓練」が昼夜問わず、日本中を「戦場」と見立てて開始されようとしています。まさに「戦争訓練」が住民の頭上で強行されようとしているのです。絶対に許せません。
一方、安倍政権は、萩市と秋田市に陸上型弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」を配備し、「国民の命を守る」と言っています。しかしこの地区は、「北朝鮮ミサイル基地とグアム・ワシントンを結ぶ延長線上」にあり、アメリカ防衛のための基地と言わなければなりません。
日本のどこにも軍事基地はいりません。一端戦争になれば、間違いなく「標的」にされ「戦場」となるのです。犠牲になるのはいつも労働者・住民です。私たちは沖縄で、佐世保で、そして北信越で、軍備増強反対の闘いを続けています。武力で平和は創れないし、軍隊で平和は来ないのです。
この「反戦・平和」の声と運動をかき消すために安倍政権は、「(北朝鮮は)我が国に届く弾道ミサイルを保有」し、「奇襲的に攻撃できる能力」を持っていると脅かし、「(中国は)グアム・空母キラーの中距離弾道ミサイルを配備した」と危機を煽りたてます。日本海上空では、米軍の「核」戦略爆撃機B52と小松空自基地のF15戦闘機を飛ばして「核」恫喝を行ない、東シナ海や南シナ海では、米軍と海上自衛隊が「航行の自由作戦」という「軍事作戦」を、空母型護衛艦「かが」や最新潜水艦を派遣して行なったのです。そして昨日、トランプ大統領と安倍首相は「かが」に乗艦し、日・米の軍事一体化を海外にアピールしたのです。
私たちは、安倍政権による「戦争の危機煽り」を見抜き、「軍事作戦」に断固として反対しなければなりません。そして北朝鮮や中国による「核恫喝」にも反対しなければなりません。
「反戦・平和」の闘いを職場から、より広く、より大きく創り出すことが、沖縄や全国の仲間と連帯することであり、やがては世界に反戦闘争が拡がります。この闘いこそが、戦争的危機を吹っ飛ばす「力」になると確信します。
以上、集会アピールとします。
2019年5月29日
沖縄連帯集会石川参加者一同
5.22原水爆禁止石川定期総会アピール(案)
世界初の原爆投下から74年。私たちは総力をあげて「核廃絶」に取り組んできました。
しかしアメリカは、新たにMDシステムを配備し、相手国の核兵器を無力化させ、実戦で使える「核兵器」さえ開発を進めています。ロシアは、MDシステムをかいくぐる新型核を、中国は、米軍の中枢を壊滅させる核を配備しました。今夏、米・ロの中距離「核」全廃条約は破棄されることが確実視されています。
このような情勢の中、唯一の被爆国である日本・安倍政権は、核廃絶でイニシアティブをとるどころか、「アメリカを全面的に支持」し、米軍との軍事一体化を進めています。
私たちは、「核抑止」論のまやかしをあばき、「武力で平和はつくれない」「軍事力は悪無限的な浪費である」という根本的な批判をしていかなければなりません。
核兵器にはプルトニウムが必須です。日本は、非核保有国で唯一、アメリカと原子力協定を結びプルトニウム利用が認められています。その使途は、核燃料サイクルに限定されていますが、技術は「核開発」と表裏一体です。原発の再稼働は、なんとしても阻止しなければなりません。
現在も、日本を含む世界中で多くの被ばく者が生み出され、苦難を強いられています。フクシマから8年を経た今も大地は汚染され、故郷は喪失したままです。被ばくの全容は解明されておらず、ガン死はこれから百年単位で続きます。ここ石川では、志賀原発を廃炉にすることがなにより重要です。活断層上に原発を建設強行した北電の無責任さと、雨水さえ防げない能力を問い、「活断層の是非は規制委の判断を待つ」という司法の責任放棄も許さず、廃炉を目指さなければなりません。
原水禁石川に結集する諸団体は、新たな核軍拡反対!核開発やめろ!核燃料サイクルの確立反対!原発再稼働阻止!志賀原発廃炉!の闘いをさらに推し進め、「核と戦争のない社会」を創っていこうではありませんか。
以上を確認し、総会アピールとします。
2019年5月22日
原水禁石川2019定期総会参加者一同
5.3安倍改憲NO!改憲発議NO!集会アピール(案)
日本国憲法の施行から72年目の今日、私たちは、安倍政権による憲法改悪と改憲発議を絶対に許さない決意でここに結集しました。
「戦争放棄と交戦権の否認、戦力不保持」をうたった平和憲法は、とりわけ第9条は、これまでの自民党政権によって骨抜きにされ、安倍政権の戦争法強行(2015年)により、日・米の軍事一体化が推し進められ、戦争する国へと突き進んでいます。
いまや自衛隊は、東アジアからインド・太平洋、シナイ半島までその活動領域を広げ、「島嶼奪還(とうしょだっかん)」作戦や「敵基地攻撃能力」を持つ軍隊になろうとしています。米軍と共に繰り広げる「航行の自由作戦」や「潜水艦哨戒訓練」は、「対中国」戦を想定した軍事作戦にほかなりません。
安倍政権は、「我が国を取り巻く安全保障環境は激変した」と中国(北朝鮮)の脅威をあおり、ミサイル避難訓練などで国民を煽動しています。沖縄では、「沖縄の心に寄り添う」「負担軽減する」と言いながら辺野古新基地建設を強行し、南西諸島は、ミサイルを配備した軍事要塞と化しています。
憲法9条に「自衛隊を明記」することは、戦争にお墨付きを与え、市民が戦争に加担・協力させられることになります。安倍政権はそのために、全国各地の小選挙区で改憲推進組織づくりを進め、国民投票に持ち込むためにあらゆる手段で「改憲発議」を実現しようと狙っています。
私たちは、この改憲運動を草の根から断ち切るため、強い危機意識を持って、より多くの市民に、一切の戦争反対、憲法改悪阻止、辺野古新基地建設反対の闘いに参加することを呼びかけます。私たちは今日の集会で安倍政権の強権政治により、沖縄県民の意思が踏みにじられている現状を学びました。沖縄での座込みをはじめとした粘り強い闘いはいま、世界の知識人や人々を動かし共感を創り出しています。
この力が改憲発議を止め、戦争を止め、安倍内閣を打倒する「うねり」を創り出します。創意工夫ある闘いを職場から地域から創ることを確認し、集会アピールとします。
2019年5月3日 安倍改憲NO!改憲発議NO!
平和憲法施行72周年記念石川県民集会参加者一同
2.4県憲法を守る会総会アピール
平和憲法が施行されて71年。私たちは、立憲主義の下、平和で人権が尊重される社会の実現に向け取り組んできました。しかし、いまや安倍政権は「改憲は国会議員の責務」とまで言い切り、憲法を改悪しようとしています。
改憲素案では、憲法9条に「自衛隊を保持する」を加えるとしています。改憲されれば、自衛隊は何ら制約を受けることがなくなり、「戦争放棄、戦力不保持、交戦権否定」が有名無実化し、アメリカや同盟国と共に世界中で「戦争する国」の軍隊になってしまいます。
そしていま、北朝鮮の弾道ミサイルや中国の核戦力増強を名指しで批判、「安全保障を巡る環境は激変しており、敵基地攻撃能力を高め、米国などとともに戦う」と、いつでもどこでも戦争できる準備を進めています。さらに「防衛費」は2018年度末で5兆6千億円、後年度負担を加えると10兆6千億円規模にもなり、核保有国を除けば世界一の軍事大国となっています。しかも今後5年間で、27兆5千億円もの軍備増強を計画しています。その上、日米安保条約に則った共同演習は激しさを増し、北東アジアをはじめ、いまや南シナ海、インド洋まで自衛隊を派遣して対中国包囲網づくりと挑発的な軍事訓練を行っています。国内では、訓練の激化によりオスプレイの墜落や航空機、武器による事故が絶えず、いつ大惨事が起こるか分からない状況にあります。
さらに改憲素案では、緊急事態条項の創設が謳われ「大地震その他の異常かつ大規模な災害」を隠れ蓑にして、内閣総理大臣が「国家緊急権」を持つことを狙っています。これは、戦争や労働者・市民の決起にも適用され基本的人権と三権分立を「瞬時」に停止する独裁条項です。まさに「ナチスの手口」であり断固として反対していかなければなりません。
しかも、憲法破壊はすでに始まっています。安倍首相は、時に自らを「立法府の長」と言い、裁判所や行政は政府を忖度する体制に変わっています。辺野古埋立阻止や脱原発などを闘う仲間たちには強権的弾圧が、国会では法案の強行採決が繰りかえされています。各自治体による思想、信条への介入、表現の自由制限なども拡大しています。東京五輪ではテロ対策を名目に顔認証システムや監視カメラの拡大、そして、SNSや携帯電話、Tカードなどの個人情報をこっそり収集してもいます。これらは、本人の了解なく個人を「丸はだか」するものであり、まさに、憲法改悪の先取りといわなければなりません。
今こそ、人権と民主主義、社会運動(労働、平和、人権、脱原発、環境など)を守り抜くため、あらゆる団体と連携してこれらの策動を止めなければなりません。国境、民族、宗教などを越えて手をとりあい、職場から、地域から、平和と民主主義を実現するために「安倍改憲」を阻止することを訴えて、総会アピールとします。
2019年2月4日 石川県憲法を守る会総会参加者一同
再び示された沖縄の民意を尊重し
名護市辺野古新基地建設の中止を求める声明
平和フォーラム 2019.2.25
2月24日、名護市辺野古の米軍新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票が投開票された。その結果、投票資格者の過半数を超える投票によって、新基地建設反対72%、賛成19%どちらでもない9%の結果となり、新基地建設に対する県民の圧倒的反対という意思が示されることとなった。
国土の0.6%に在日米軍施設の70%が集中することによって、沖縄では自由、平等、人権、民主主義がはく奪され、日本がアメリカの属国であるかのようなしわ寄せが、理不尽に沖縄に集中してきた。
この間、2度にわたる沖縄県知事選挙で「基地はいらない」とする民意が示されてきたが、ことあるごとに安倍政権は、これらの公職選挙では新基地建設以外にも「様々な争点がある」ことを理由に無視し、また、法律を濫用し基地建設を強行してきた。
しかし、今回の県民投票はまさに新基地建設のみを対象にしたものであり、いかなる言い逃れも許されない。政府は新基地建設反対の圧倒的な民意に向き合わなくてはならない。
また、辺野古新基地建設については、埋め立て海域の軟弱地盤や活断層の存在、360件に及ぶといわれる高さ制限を超えた基地周辺建造物の存在など物理的に建設が不可能なことは明らかであり、さらに、埋め立て工費についても当初防衛省が示していた2400億円の10倍にも上る2兆5.500億円に膨らむと、沖縄県が試算していることからも、政府は速やかに建設計画を中止すべきである。
一方、来る2月27~28日に、第2回米朝首脳会談が開催されるなど東アジアは非核・平和の実現に向けて大きく動き出している中で、新基地建設がこうした流れに逆行するものであることも強く指摘しなければならない。
平和フォーラムは、この度の県民投票をしっかり受け止め、引き続き新基地建設反対の取り組みを日本の民主主義、立憲主義、地方自治を取り戻す闘いと位置づけるとともに、普天間基地の「5年の運用停止」という政府と県との約束履行を求め闘いを強化していく。
米国のINF廃止条約からの離脱に抗議する
原水爆禁止日本国民会議
議 長 川野浩一
事務局長 藤本泰成
米国ポンペオ国務長官は、2月1日、ロシアとの中距離核戦力(INF)廃止条約からの離脱を正式に表明した。2日には条約履行義務を停止し、ロシア側に通告した。米国は、オバマ前政権時代からロシアに対し、「条約に反して中距離ミサイルの開発を続けている」と非難してきた。トランプ大統領は声明で「ロシアは長きにわたり条約に違反してきた」「米国は一方的に条約に縛られる唯一の国ではいられない」と主張している。米ロ両国は、次官級協議を重ね、ロシアは今年1月23日に条約違反とされる新型の地上発射型巡航ミサイル「9M729」を報道陣などに公開したが、両国の主張はかみあわず議論は平行線に終わっていた。米ロ両国は、しかし、首脳会談などを行おうとはせず、米国の今回の判断となった。原水禁は、短慮とも思える米国政府の判断に強く反対し、抗議する。
INF廃止条約は、1987年に米ロ(旧ソ連)両国で調印され、91年までに両国合わせて2692基のミサイルが廃棄された。地上配備の中距離ミサイルに特化された同条約は、核軍縮の潮流を形成し、アジア・ヨーロッパ地域の安全保障に貢献してきた。今後、米国は中距離ミサイルの本格的開発に入ると考えられ、昨年発表された「核体制の見直し(NPR)」に示された核弾頭の小型化や海洋発射型巡航ミサイル(SLCM)の開発を加えて、オバマ前政権の掲げた「核なき世界」への構想から大きく後退する。ロシアのプーチン大統領は、条約破棄の通告に対して「自国の安全を強化する追加措置をとる」と述べ、条約の義務履行を停止すると表明した。INF廃棄条約に加盟していない中国の、中距離弾道ミサイル「東風」の配備なども含め、アジア・ヨーロッパ地域の安全保障の後退は必至と言える。また、2021年には米ロで結ばれた新戦略兵器削減条約(新SATRT)の期限を迎え、その協議にも大きな影響を与えることが予想され、軍拡競争の時代に戻ることさえも懸念される。
トランプ政権は、イランの核兵器開発を大幅に制限する「イラン核合意」や地球温暖化対策の国際ルールである「パリ協定」からの離脱など、 自国の利益最優先する「アメリカ・ファースト」の姿勢に終始している。国際協定を順守し、発展させて平和を構築しようとの姿勢は見られない。圧倒的軍事力を誇る米国は、第2次大戦後も1950年の朝鮮戦争に始まりベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン・イラク戦争と繰り返してきた。そのいずれもが、平和をつくり出したとは言えない。米国は、構造的暴力を排除する「積極的平和」を立ち位置として、持続可能な社会の構築のためにこそ、その国力を国際社会へ惜しみなく注ぐべきだ。
米国とロシア・中国の対立は、「アジアでのミサイル配備競争のドアを開く」(米シンクタンク「軍備管理協会」ダリル・キンボール会長)との指摘もある。その時には日本も蚊帳の外にいられまい。INF廃止条約離脱に際して、日本を含む同盟国の協力と政治的問題の克服を求める声もある。日本への配備要求が高まっていくことが懸念される。米国が国際社会でのリーダーとしての役割を失いつつある今、日本は、毅然とした態度で、米国と中国・ロシアの対話と協調を図り、アジアの平和への視点を持って対処しなくてはならない。河野太郎外務大臣は、「条約が終了せざる得ない状況は、世界的に望ましいものではない」との立場を表明している。被爆国日本としての役割を自覚し、条約の維持と拡大に向けての努力を怠ってはならない。
原水禁は、米国政府のINF廃止条約離脱を許さず、日本政府に対してその維持に努めるよう要請する。加えて、核兵器禁止条約への署名・批准が進む中にあって、核廃絶への道を決して後戻りさせないようとりくみの強化をめざす。
(2019.2.4)
疲弊する世界最大の米海軍海外基地・横須賀
―イージス艦等の一連の事故は構造的疲労から―
湯浅一郎
2017年、横須賀配備のイージス艦、2018年には空母「ロナルド・レーガン」艦載機のヘリや戦闘機などが相次いで事故を起こしている。これらは、偶然、頻発したというよりも、海外配備に伴う作戦任務増、修理期間の延長、人員削減による人手不足、訓練不足などの累積が産み出した構造的疲労に伴う現象である可能性が高い。ここには、海外配備の長期化が米海軍にとっても大きな負担となり、容易に対処できずに苦悩している姿が見えている。こうした状況を踏まえ、米海軍の海外基地で世界最大の横須賀基地のありようを、主としてGAO(米政府説明責任局)報告を基に分析する。
(1)続発する米「イージス艦」や空母艦載機の事故
1) 2017年、横須賀を母港とする米イージス艦で相次いでおきた事故は以下である。
- 1月31日、ミサイル巡洋艦「アンティータム」が横須賀基地沖で座礁。
- 6月8日、ミサイル巡洋艦「シャイロー」で乗組員行方不明事故。
- 6月17日深夜、ミサイル駆逐艦「フィッツジュラルド」が伊豆半島下田沖でコンテナ船と衝突し、乗組員7人が死亡、3人が負傷。
- 8月1日、ミサイル駆逐艦「ステザム」で乗組員行方不明事故。
- 8月21日、ミサイル巡洋艦「ジョン・S・マケイン」がシンガポール沖でタンカーと衝突。船体側面に大きな穴が開き、乗組員10名が行方不明(後に2人が遺体で発見される)、5人が負傷した。
- 11月18日、イージス駆逐艦「ベンフォールド」が相模湾沖でえい航訓練に参加した際、タグボートと接触。両船とも負傷者はいなかった。
母港11隻のイージス艦のうち実に6隻で事故が起きる異常事態である。中でも死亡者が出て、船体の被害も甚大な「フィッツジェラルド」と「ジョン・S・マケイン」の事故が連続的に発生したことを受けて、米海軍は、全艦船の24時間の運用を停止した。その上で60日以内に、艦船の運用、訓練、装備などについて包括的に見直すよう指示した。
2)航空機の事故
- 18年11月19日, 厚木拠点のヘリMH60がフイリッピン海で空母から離陸直後に飛行甲板に墜落。
- 18年11月12日、空母艦載機のF18が那覇沖で墜落。10.29-11.8日米共同統合演習「キ―ン・ソード」に参加した直後のことである。
こうした一連の事故は、単なる偶然とは考えにくい。要因は何かが問われている。
(2)米海軍が海外に配備している艦船
事故の要因を探る前に、米海軍が海外に配備している艦船の全体像を見ておこう。表1に近年の米海軍が海外に配備している艦船の推移を示す。2006年には日本の17隻を主力に世界で20隻が配備されていた。それが2018年には40隻へと倍増している。日本に次いで多いのはバーレーンのマナマで、掃海艦4隻とぺルシャ湾の警備に当たる小型の警備艇10隻、合計14隻が配備されている。後者は日本で言えば海上保安庁の巡視艇のようなものである。横須賀の空母打撃団や佐世保の強襲揚陸艦部隊と比べれば、桁違いの小ささである。日本以外で戦闘艦が配備されているのはロタ(スペイン)だけで、欧州ミサイル防衛の一環として弾道ミサイル防衛能力を有するイージス艦4隻が配備されていて、最近ではシリア攻撃でミサイルを発射している。いずれにせよ、配備地は増えているが、依然として主な戦闘艦が在日米軍に集中していることに変わりはない。原子力空母が世界で唯一海外配備される横須賀の規模と重要性は群を抜いており、横須賀は、米海軍の海外基地の中で世界最大である。
横須賀 | 佐世保 | ガエタ | マナマ | ロタ | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
2006年 | 11 | 6 | 1 | 2 | 0 | 20 |
2007 | 11 | 6 | 1 | 4 | 0 | 22 |
2008 | 11 | 6 | 1 | 4 | 0 | 22 |
2009 | 11 | 6 | 1 | 4 | 0 | 22 |
2010 | 11 | 8 | 1 | 4 | 0 | 24 |
2011 | 11 | 8 | 1 | 4 | 0 | 24 |
2012 | 11 | 8 | 1 | 4 | 0 | 24 |
2013 | 11 | 8 | 1 | 4 | 0 | 24 |
2014 | 11 | 8 | 1 | 14 | 2 | 36 |
2015 | 13 | 8 | 1 | 14 | 4 | 40 |
2016 | 13 | 8 | 1 | 14 | 4 | 40 |
2017 | 13 | 8 | 1 | 14 | 4 | 40 |
2018 | 14* | 8 | 1 | 14 | 4 | 41隻 |
表1 海外配備の米艦船の推移(GAO(米政府説明責任局)報告書より)
- ガエタ(イタリア)指揮艦LCC 1隻。
- マナマ(バーレーン)掃海艦(MCM)4隻,沿岸警備艇(PC)10隻。
- ロタ(スペイン)イージス駆逐艦 4隻(弾道ミサイル防衛能力(BMD)有)。
- * GAO報告書では、14隻としているが、17年のフィッツジェラルド事故で、同艦は横須賀から撤退したため、実際は13隻。
(3)事故原因は構造的
―主にGAO(米政府説明責任局)報告から見るー
一連の艦船の事故に関しては、海軍自身が、17年10月23日付けで司令部捜査報告書の要約版、更に事故の根本的原因と改善策について10月26日付「水上艦事故の包括的見直し」を発表している。ここでは、GAO(政府説明責任局。日本では会計検査院)の17年9月7日、海軍の即応体制という報告を初め、一連の報告書を基に分析してみる。
1) そもそも海外配備の艦船では、本国配備と比べ、前進配備のため作戦配備(Deployment)を最優先する運用サイクルが採用され、訓練(training)、休息が軽視されている。本国母港艦船では、定期保守点検(Maintenance)、訓練、作戦配備、即応準備(Sustainment)が明確に区別された36か月の運用サイクルとしている(17年9月報告、図3)。これと比べ、日本母港艦船は24か月周期で、16か月の作戦配備と8か月間の定期修理しかない。この間に訓練、資格認証、休息などが、どのように盛り込まれるのか全くわからない。これらが、作戦行動の合間に行われることで、以下に示すようなもろもろの障害が出ている可能性が高い。作戦や保守点検が延びれば、訓練や休息はおのずと軽視されていくことになる。
2) 各方面からの作戦任務の著しい増加による作戦配備期間の長期化。
空母護衛、ミサイル防衛、プレゼンス、その他の任務増大によって作戦配備期間が増えていく。GAOは、空母打撃群の作戦配備期間は08~11年に平均6.4か月であったが、15年に3つの空母打撃群で9か月に増加したとする。15年に第7艦隊の11隻の巡洋艦と駆逐艦の平均航海日数は116 日であった。16年には162日と作戦配備期間が著しく増加している。
3) 隻数増加、老朽化、修理能力不足による修理期間延長とキャンセル、整備不良。
GAOは、全海軍で水上戦闘艦につき11~16会計年度までに、延べ169 隻の修理につき107隻(63%)が修理期間延長で、合計6,603日の作戦運航日の喪失となったとする。これは毎年3隻の水上戦闘艦が運航不能になったのと同等である。また16年5月現在、海軍造船所の全従業員の32%が5年未満の経験しか持たない。整備不良による事故が09年から14年で約2倍に増加し、特に海外配備艦船の増加割合が大きいと報告している。16会計年度では18件の定期修理作業のうち10件、17会計年度では16件の定期修理作業のうち6件が期間変更、キャンセルされた。
4) 艦船の人員削減と一時的配置転換による人手不足、長時間・過重労働の常態化
GAOは、14年の海軍の標準的勤務時間調査で、兵員は1週間あたり81時間の勤務時間を超え108時間の勤務をしていた。この勤務時間には90時間の生産的作業が含まれ、1週間あたりの標準70時間の20時間超過であると指摘している。
16年以降日本母港艦船では人員充足率92%・人員供給率95%を下回り始め、17年には人員充足率89%・人員供給率92%に低下している。それを補完するための艦船間の一時的配置転換は、個別の艦船機器への不適応と、訓練機会の減少、入港艦船の人手不足、兵員や家族へのストレスをもたらしている。作戦配備決定はしばしば蓄積された疲労とその次の作戦配備が乗組員にさらに与える疲労も含め、考慮されていなかった。
5) 上記のための訓練時間の不足、航海海域の資格認証の失効、未取得の常態化
上記のように任務増大と、修理期間延長によって訓練の時間が減少して、日本母港艦船全体で戦闘海域の航海資格認証率が低下している。GAOは、17年6月時点で日本母港巡洋艦・駆逐艦の乗組員につき戦闘行為の資格認証の37%が失効しており、その3分の2が5か月を超え、15年の5倍以上に増加していると指摘する。
14年では資格認証を有しているものが93%であったものが、16年には62%に減少しており、艦船兵員のほぼ100 %が1つ以上の資格認証切れの状態である。
6) 資格認証の失効、未取得の常態化をカバーするための緩和計画の濫用
資格認証切れの場合、リスクアセスメント緩和計画が施行されて作戦配備されるが、できなかった訓練、人員不足、スケジュールの穴埋めをするものとして使われている。
(4)GAOの勧告に対処しない米海軍
GAOは、2015年以降でみても、米海軍の即応性に関して4度にわたり報告書を出し、14の改善勧告をくり返すとともに、艦船の海外母港化による様々な危険性の評価作業を海軍に求め、増え続ける艦船海外母港体制に警鐘を鳴らしている。以下に、それぞれの勧告の概略を示す。
1)2015年5月29日、「海軍戦力の構造:海外配備艦船の長期的なリスクを軽減するための持続可能な計画と包括的アセスメント」(GAO-15-329)
勧告1:長期的な即応戦力を維持し、内部統制のための連邦基準に合致したリスクを特定し緩和するためには、戦闘司令官の前衛的存在に対する海軍のニーズとのバランスを取るために、国防長官は海軍長官に、その最適化された艦隊即応計画を完全に実施し、海外配備の全艦船の持続可能な運用計画を履行すること。米海軍は、2015年8月、海外配備の各艦船が、地点ごとに6つの運用スケジュールで、海外にあるすべての船舶に対して最適化された艦隊即応計画のスケジュールを承認して実施したと報告した。しかし、米国太平洋艦隊の関係者は、日本国内に駐留する巡洋艦および駆逐艦の改訂された運用スケジュールはまだ検討されており、未実施であるとした。
勧告2:上記と同趣旨の目的のために、艦隊に対する長期的な経費及びリスクに関する包括的な評価を開発すること。2017年8月現在、海軍は、この評価を完了していない。
2)2016年9月7日、「軍事的即応性:国防総省の即応性再構築の努力は包括的な計画なしで危険にさらされる」(GAO-16-841)5 0
3)2017年5月18日、「海軍戦力の構造:艦船乗員の適切な規模と構成を確保するために必要な行動」(GAO-17-413)
勧告1:海軍の人的要員が現在および将来のニーズを満たすことを確実にするために、国防総省は、海軍長官に対し包括的な標準勤務時間の再評価と必要な調整を行う指示すること。
勧告2:国防総省は、海軍長官は対し、すべての艦船の船内作業負荷を調査し、それを実行するのに必要な人的体制を確認するよう指示すること。
勧告3: 国防総省は海軍長官に対し、定期的に、または条件が変化したときに、人的要件を評価するために、海軍が開発した基準を策定し、ガイダンスをアップデートするよう指示すること。
勧告4: 国防総省は、計画されたより大きな艦隊規模に対応した人員および経費を評価するよう指示せねばならない。
4)2017年9月12日、「海軍造船所:作戦に影響を与える悪条件を改善するために必要な行動」(GAO-17-548)
勧告1:海軍長官は、以下の点を確立すべき造船設備投資の包括的な計画を策定せねばならない。
- 造船所の条件と能力のための望ましい目標。
- 計画を実施するための全コストの見積もり。すべての関連要件、外部リスク要因、および関連する計画コストに対応する。
- 投資の有効性の評価を含む、目標達成のための進捗状況を評価する指標。
勧告2: 海軍長官は、計画の実施を監視し、計量を見直し、目標に向かって進展を評価し、目標が達成されることを確実にするため必要に応じて調整を行うために、関係するすべてのステークホルダーを含む定期的な管理レビューを行うべきである。
勧告3:海軍長官は、包括的な計画の目標を達成するために造船所が進めている進捗状況と、コストなどの進展を妨げる挑戦について、重要な意思決定者と議会に定期的に報告しなければならない。
以上、見た合計14のGAO勧告に対し、国防総省(DOD)はこれらすべてに同意したが、これまでに実施したのは1つしかない。
(5)おわりに -大義の喪失と意欲の低下―
11月6日の「星条旗新聞」は、空母「レーガン」の2人の乗員が合成麻薬(LSD)を所持したとして、摘発、起訴され、軍法会議にかけられると報じた。さらに、これは、15人にのぼり、そのうち14人は「原子炉担当部門」に所属するとの報道もなされた(11月7日、星条旗新聞)。日々、核分裂生成物を生み出す担当部署にいる複数の乗員に合成麻薬所持の疑いがあるという衝撃的で象徴的な出来事である。一人の人生の重要な時期を、海外で軍隊の一員として、危険物質を大量に生みだす原子炉を操作することに費やすあり方に、不安、不満を持っていることは想像に難くない。彼らは、海外配備されている現状について、そのことに大義を見いだせていないのではないかとの疑問が浮かんでくる。
以上のとおり横須賀母港艦船は危機的状況にあり、上記の構造的問題が改善されない限り事故の危険はなくならない。米海軍は、GAO勧告に対し対応することに同意はしているが、一向に具体化する気配がない。怠慢なのか、それともより困難性を抱えているのであろうか。構造的な疲労に要因があるとすると、簡単な対応策が見出せないのではないか。日本政府や自治体は米国政府、米軍に対しGAO勧告への対応策としての包括的改善計画の情報開示を求めるべきである。またイージス艦に限らず原子力空母や原潜も、同様の問題を抱え乗組員の訓練が不十分で原子炉運転の資格認証がなかったり、修理不完全なまま航海していることはないのかも懸念される。日本政府や自治体は、原子力空母と原潜の資格認証や、整備状況についても米国に対し情報開示を求めるべきである。
一方で、2018年に入り、平昌オリンピックを直接のきっかけに、朝鮮半島、ひいては北東アジアの平和と非核化に関して画期的な変化が起きている。1年前には想像できなかったことが相次ぎ、最後に残った冷戦構造を終わらせるプロセスが始まっている。仮に朝鮮戦争を終わらせ、平和条約の締結へと進めば、北東アジアの安全保障環境は激変し、軍事的対立構図の必要性は様変わりするはずである。在韓米軍、在日米軍、そして自衛隊の有り用を含めて軍縮の方向で見直しを進めていける環境が整うことになる。その時は、当然、横須賀基地のありようも問われることになる。これについては、別の機会に論じたい。
辺野古埋立て撤回に対し、繰り返された政府の行政不服審査法の濫用に抗議する声明
2018年10月18日
フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)
事務局長 勝島 一博
10月17日、防衛省沖縄防衛局は、名護市辺野古の新基地建設に伴い、辺野古沖の埋め立て承認を県が撤回したことに対し、行政不服審査法に基づく不服審査請求に加え、県による撤回の効力停止を国土交通省に申し立てしました。
これに先立ち、沖縄県では、翁長雄志前知事の方針に沿って、8月30日には沖縄県により、辺野古埋め立て承認の撤回が行われ工事は中断していました。また、9月30日に行われた沖縄県知事選挙では、翁長前県知事の遺志を継ぎ、辺野古新基地建設反対を訴えた玉城デニーさんが、与党の推薦を受けた相手候補に過去最多得票で勝利し「辺野古新基地はいらない」という大きな民意が改めて示される結果となりました。そして10月12日には、玉城新知事と安倍首相との会談ももたれています。
この会談は、選挙後、安倍首相や菅官房長官が選挙結果を「真摯に受け止める」と語っていたことや、選挙後に速やかにもたれたことから、新基地問題が政府と県との間で話し合いによる解決に向けての大きな一歩と期待が膨らむものでした。
しかし、対談からわずか5日後、政府は、対話による解決を踏みにじり、県民に何の説明もなく、突然法的な対抗措置に踏み出しました。
この行政不服審査法に基づく手法は、2015年、翁長知事の「埋め立て承認取り消し」に対して、沖縄防衛局が私人になりすまして「承認取り消しの執行停止」を国土交通大臣に請求したことと同様です。当時も多くの法学者から、「公平性・客観性を欠いた猿芝居」「安保法といい辺野古問題といい法の支配を無視した行政権力の行使」など多くの批判と問題点が指摘されていました。
再び繰り返された安倍政権の手口は、防衛省・沖縄防衛局が私人になりすまし、国土交通大臣に審査請求し、同じ内閣の国土交通大臣が審査するという、国民(私人)の権利・利益の救済を図ることを本来の目的とした行政不服審査制度の濫用であって、法治国家にはあるまじき行為です。さらに、選挙のたびに示されてきた「辺野古に基地はいらない」とする沖縄県民の民意を再び踏みにじっており、不当・不法の極みと指摘せざるを得ません。
私たち平和フォーラムは、玉城知事や沖縄県民の「新基地建設反対」の闘いを支持し、ありとあらゆる取り組みを沖縄や全国で展開するとともに、県民の民意を踏みにじり、国の機関の申し立てを国の機関が可否を判断するなど、安倍政権の暴走を断じて許さず、退陣を求めてさらに闘いを強化していきます。
以上
総会アピール
憲法改悪を阻止し、戦争準備に反対しよう!
いま私たちは、戦後最大の危機にあります。それは「平和憲法」の危機であり「戦争」の危機です。
安倍政権は2012年12月に誕生して以来、「戦後レジームからの脱却」を謳い、「戦争できる国」をめざして数々の「戦争準備」を強行してきました。
2013年12月、特定秘密保護法(軍事機密)、2014年1月、NSC:国家安全保障会議の設置(軍事・人事・法案の統括)、4月、防衛装備移転3原則の閣議決定(武器輸出の解禁)、7月、集団的自衛権の行使を合憲とする閣議決定(日米安保の双務化)、2015年9月19日平和安全法制(世界中で日米の軍事一体化を進める戦争法)、そして2017年6月、テロ等準備罪「改正」:共謀罪の新設(現代の治安維持法)を、多くの野党や文化人、知識人、労働者、市民の「反対」や「危惧」を一顧だにせず成立させました。
一方で「教育」や「マスコミ」への介入を強め、「愛国教育」には補助金制度を悪用して「モリ・カケ疑惑」まで引き起し、それを「忖度」と「うそ」と「隠蔽」で乗り切り、「改憲」運動は自ら日本会議と連携するなど、まさに「戦前回帰」をあらゆる場面で進める「NSC主導の独裁型」政治と言わざるをえません。
9月20日、自民党総裁選を「勝利」した安倍首相は今秋、いよいよ「9条に自衛隊明記と緊急事態条項の新設」を柱とする自民党改憲案を「臨時国会」に上程し、来年参院選前には「国民投票」を実施して「戦争する国の憲法」にするため、全力を集中してくることは間違いありません。
同時に安倍政権は、米国・トランプ政権の「言い値」で「ICBM迎撃システム・イージスアショア」(2基6000億円)やF35戦闘機(42機6300億円)を購入し、水陸機動団の配備や辺野古新基地建設など「日米の軍事一体化」を推し進め、日本を対中国(北朝鮮、ロシア)の最前線基地にしようとしています。
2019年度「防衛費」概算要求は戦後最大の5.3兆円(実質5.5兆円超)、後年度負担を含めると11兆円近くにもなり、まさに非核保有国では世界一となっています。しかも、米軍の「核戦略」に呼応し、いまや「専守防衛」など意に介さず「多国籍軍への自衛隊派遣」や「海自潜水艦による南シナ海での哨戒活動」まで行っており、「敵基地攻撃能力」強化のために、軍・産・学などの複合体を形成しつつ、射程1000キロを超える「極超音速巡航ミサイル」や「宇宙兵器」「ロボット兵器」の開発にまで手を染めようとしています。
私たちは、これまで積み重ねてきた「反戦・平和」「護憲」「脱原発」「人権擁護」などの運動のすべてを結集し、労働者・市民とともに「憲法改悪阻止!」「戦争反対!」の一大運動を、職場、地域から作り出すために奮闘しようではありませんか。
以上、アピールします。
2018年9月26日
石川県平和運動センター
第19回定期総会参加者一同
米空軍CV-22横田基地配備、陸上自衛隊MV-22佐賀空港配備に抗議する
2018年8月27日
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 藤本泰成
8月22日日本政府は、今年4月に到着していた米空軍仕様のCV-22オスプレイが、2018年10月1日、米空軍横田基地に正式に配備されると発表した。当初5機、2024年までには10機の配備を予定しているとした。
横田基地周辺は東京のベッドタウンであり、基地周辺住民から不安の声があがっている。しかし日本政府は、「日米同盟の抑止力・対処力を向上させ、日本の防衛およびアジア太平洋地域の安定に資する」と配備の必要性を強調するばかりで、周辺住民にしっかりと説明をすることはなく、不安の声に応えようとする姿勢も全く見られない。
そもそもCV-22は米空軍の特殊作戦部隊の輸送が任務だ。そして低空飛行、夜間飛行などを含む危険な訓練を、三沢対地射爆撃場(青森県)、関東信越に広がる空域(ホテルエリア)、陸上自衛隊東富士演習場(静岡県)、沖縄県の訓練場などで実施するとしている。
米国内で米軍がCV22による低空飛行訓練を計画した際は、詳細な訓練内容や目的が記された環境評価書を米国住民に示していた。今回の横田基地配備においては、それら情報が極めて不十分である。米国政府の二重基準もさることながら、米国から言われるがままに配備を容認する日本政府の姿勢を厳しく糾弾しなければならない。
佐賀空港への陸上自衛隊MV-22オスプレイの配備(17機を予定)に関して、山口祥義佐賀県知事は8月24日、受け入れを正式に表明した。山口知事は、国防政策には基本的に協力する立場としながら、一方で、20年にわたって100億円の着陸料を佐賀県に支払うことを条件の合意している。これでは、住民の安全を金で売ったとの批判は免れない。2月5日に神埼市で、陸上自衛隊の戦闘ヘリコプターが、民家に墜落した事故の記憶が生々しい。また地元漁業組合などの強い反対の声も根強い。佐賀県の地元住民の声を一切省みない受け入れ表明は、許すことはできない。
今後、九州地方では、陸上自衛隊の水陸機動団と米海兵隊との共同訓練がすすみ、オスプレイを運用する訓練も拡大していく。そして計画では全国で合計50機以上も、日米のオスプレイが配備されることとなる。オスプレイの危険性は、重大事故が多発していることに示されている。2012年、普天間基地配備段階の事故率1.93(10万飛行時間当たりの重大事故発生率)から、2017年末には2.94と、1.5倍にも増大している。訓練と配備の拡大で、私たちのいのちとくらしが脅かされることはごめんだ。
2013年1月27日、沖縄県のすべての市町村長、議会議長が、普天間基地へのMV-22オスプレイ配備反対を訴え日比谷野外音楽堂(東京)に集まった。そこには、亡き翁長雄志沖縄県知事(当時那覇市長)の姿もあった。このときMV-22オスプレイ配備撤回と米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念することを要求する「建白書」が提出されたが、日本政府は無視し続けている。
平和フォーラムは、オスプレイ配備撤回で、沖縄、横田、佐賀、そして全国でとりくんできた。住民の安全を一顧だにせず、民意に耳を傾けない政府の姿勢は絶対に許されない。オスプレイ配備撤回と米軍基地の撤去を求めて、とりくみを一層強化する決意を述べて、抗議とする。
以上
格差はつくられた!
2015年3月期の連結決算が、日本企業として初めて2兆円を突破したトヨタ。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの大企業が、2009年から2013年の5年間、税金を払っていなかった事実をご存知ですか? 『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の著者で元国税調査官主で作家の大村大二郎さんがそのカラクリを暴露。やっぱり政治家はお金が大好きのようです。
なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?
トヨタ自動車は、2015年3月期の連結決算で、グループの最終利益が2兆円を超えました。利益が2兆円を超えたのは、日本の企業としては初めてのことです。
このトヨタ、2009年から2013年までの5年間、実は国内で法人税等を払っていませんでした。2014年3月期の決算発表の際に、豊田章夫社長が衝撃的な発言をしたのを覚えている方も多いかもしれません。
「一番うれしいのは納税できること。社長になってから国内では税金を払っていなかった」
この言葉に、度を失った人は多いのではないでしょうか? 日本最大の企業が、日本で税金を払っていなかったというのです。
トヨタはずっと赤字だったわけではありません。近年赤字だったのは、リーマンショックの影響を受けた2010年期、2011年期の2年だけです。それ以外の年はずっと黒字だったのです。
日本の法人税制には、決算が赤字だったら赤字金額が5年間繰り越される「赤字繰り越し制度」というものがあります。だから、2012年2月期に税金を払っていなかったというのは、理解できます。が、2013年3月期には、その赤字分は解消しているはずであり、税金を払わなければならなかったはずです。
また2009年3月期は黒字であり、赤字繰り越しもなかったので、この期には税金を払わなければならなかったはずです。なのに、なぜトヨタは2009年から2013年まで税金を払っていなかったのでしょうか?
トヨタが、5年間も税金を払っていなかった最大の理由は、「外国子会社からの受取配当の益金不算入」という制度です。これは、どういうことかというと、外国の子会社から配当を受け取った場合、その95%は課税対象からはずされる、ということです。
たとえば、ある企業が、外国子会社から1000億円の配当を受けたとします。この企業は、この1000億円の配当のうち、950億円を課税収入から除外できるのです。つまり、950億円の収入については、無税ということになるのです。
トヨタは詳細を公表していませんが、この「受取配当の非課税制度」を利用して、税金を免れていたことは明白です。
トヨタは、2009年3月期は、営業利益は赤字だったのに、経常利益は黒字になっています。これはどういうことかというと、トヨタ本社の営業だけによる収支は赤字だったけれど、海外子会社からの配当などにより、黒字になったということです。
2010年3月期も、営業利益は3280億円もの赤字でしたが、経常利益では赤字額が771億円までに縮小されています。そして、2013年3月期は、営業利益では4398億円もの赤字だったのに、経常利益は231億円の黒字となっているのです。
これらも、海外子会社の配当などが大きく寄与していると見られます。そして、海外子会社の配当は、課税所得から除外されているので、税務上の決算書では赤字となるのです。つまり「本当は儲かっているのに、税務上は赤字」ということになっていたのです。その結果、2014年3月期まで日本で法人税を払わずに済んだのです。
海外子会社配当の非課税制度が導入されたのは、2009年です。それまでは、海外子会社からの配当は、源泉徴収された税金分だけを日本の法人税から控除するという、ごくまっとうな方法が採られていたのです。それが2009年から、配当金自体を非課税にするという非常におかしな制度が採り入れられたのです。
そして、トヨタは2009年期から5年間税金を払っていないのです。まさにトヨタが税金を払わなくて済むために作られたような制度なのです。
トヨタは、バブル崩壊以降、国内での販売台数が落ち込み、海外での販売にシフトしていきました。特に90年代に入ってからは、海外販売の割合を急激に増やしました。それまで50%程度だった海外販売の割合は、2000年代後半には80%前後で推移するようになったのです。2000年代後半、トヨタは完全に海外依存型の企業になったのです。
必然的に、トヨタは2000年代の後半から、海外子会社からの受取配当が「収入の柱」になっていきました。つまり受取配当の非課税制度というのは、トヨタの「収入の柱」を非課税にする制度なのです。
しかもトヨタの海外販売が激増した直後の2009年から、この非課税制度が始まったのです。単なる偶然では、到底、片づけられないモノだといえます。
実は、トヨタのための優遇税制というのは、この配当金非課税制度だけではありません。租税特別措置法には「研究開発費の税額控除」などトヨタのためにつくられたとしか思えないようなものが多々あるのです。
トヨタがここまで税制上、優遇されている最大の要因は「政治献金」にあるといえます。自民党への政治献金が多い企業団体のランキングでは、社団法人日本自動車工業会が1位で毎年6000万円~8000万円、2位がトヨタで毎年5000万円程度です。この順位は、長らく変わりません。日本自動車工業会というのは、自動車製造企業の団体であり、当然、トヨタは主宰格です。
つまり自民党の企業献金の1位と2位がトヨタ関係なのです。自民党にとって、トヨタは最大のスポンサーなのです。そのトヨタに対して、有利な税制を敷くというのは、なんとわかりやすい金権政治なのでしょうか?しかも、たかだか1億数千万円程度の献金で、日本全体の税制が変えられてしまうのです。日本の政治とはなんと貧弱なものなのだろうか、ということです。
金持ちや大企業というのは、こんなにずる賢いのです。我々も、ちゃんと税金について見張っておかないと、この国は大変なことになるでしょう。ちなみに、最近、「税金を払わない奴ら~なぜトヨタは税金を払っていなかったのか~」という本を出しました。トヨタのことも、もっと詳しく書いております。よかったら手に取ってください。最後は宣伝かい。
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快適さの目安「スフィア基準」
避難者:欧米では「体育館・公民館で雑魚寝」はしない
■日本の避難所は世界的にも最低水準⁉
避難所というと、体育館に大人数で共同生活をして、床に直接布団を敷いて雑魚寝する、といったイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
当たり前に感じられる日本の避難所風景ですが、実は、他の先進国に比べて生活水準が著しく低いのです。その環境の悪さについて「ソマリアの難民キャンプ並み」と言う人もいます。
中には、汚くて臭いトイレに行くのが嫌で、水分を取るのを控えたり、トイレに行くのを我慢したりして、脱水症状などを引き起こしてしまうこともあるといいます。せっかく避難できたのに、避難所の衛生状態の悪さから病気に感染して亡くなってしまったり、避難所に行くのが嫌で逃げ遅れたりした人などの例もあるようです。
■快適さの目安「スフィア基準」
実は、紛争や災害の際の避難所の環境水準を定めた国際基準に「スフィア基準」というものがあります。その中では、
・1人あたりの居住スペースは3.5平方メートル(およそ2畳分)以上、天井の高さは2メートル以上
・トイレは20人に1つ、男女比1:3の割合で設置
などが基準として示されています。これに対応するため、日本でも段ボールを使った組み立て式の簡易ベッドを導入して広いスペースを確保したり、持ち運びできる簡易トイレを準備したりするなど、工夫を凝らしています。
欧米諸国と異なり、日本には床に布団を敷いて寝るという習慣がありますが、これはスペースの問題のみならず、緊急の限られた設備では衛生面においても良くありません。避難所にベッドを導入するというのは一つのポイントとなりそうです。
■欧米での避難所事情
火山国・地震国であるという点で日本と似たイタリアでは、災害時には家族ごとに大型テントが支給されたり、国の資金でホテルに宿泊させる体制が整えられたりしています。1つのテントは6人ほど収容できる広さがあり、エアコンやベッドも設置されているんです。
また、アメリカでは、ボランティアなどの支援体制が整っており、被災翌日から食料や日用品などの生活必需品以外にも素早い支援が受けられます。各避難所にテレビや新聞が支給され、映画上映を行ったり、子どもたちのためにピエロが遊びに来たりすることもあるようです。物資と比べて二の次にされがちな情報や娯楽も、精神的に追い詰められた環境では大事な救済手段ですよね。
こうした考え方を受けて、日本でも熊本地震の際には、登山のベースキャンプを参考にした「テント村」がつくられました。体育館や公民館での寝泊まりに比べてプライバシーを確保でき、公私・寝食など活動ごとにスペースを区切ることで、安心感や清潔さも保てます。
■民間も支援の手を
体育館での生活が余儀なくされている場合でも、近隣の銭湯やホテルが大浴場を開放したり、美容院が無料シャンプーを行ったりして、行政だけでなく民間も支援に協力しているようです。
他にもペット同伴可の避難所を設けて、ペットを連れている人・動物が苦手な人が相互に嫌な思いをするのを防いだり、先の大雨被害に遭われた倉敷市でも、体育館に紙筒と布を使って間仕切りを設置したりするなど、いまある設備で最大限ストレスを軽減するための取り組みが現在進行形で行われています。
いまはほとんどの建物で耐震工事が行われているので、安全基準などを満たせば民間運営のイベント会場や宿泊施設などを利用してもいいかもしれません。被災した地域へは、予定していた旅行を自粛してキャンセルしてしまう人がどうしても多いのですが、この施策は空室を有効活用することにもつながります。
■災害発生後の生活にも心のゆとりを
日本人は、「みんな大変な時だから、自分だけ不満を言うのは申し訳ない」と考えて、過酷な避難環境でも我慢する人が多いようです。しかし、災害時は肉体的にも精神的にも消耗し、ストレスが溜まるもの。命が助かることはもちろんですが、その後の心身の健康も考えた防災対策を考えなければいけません。
日本でも、多くのNPOなどが、こうした新しい考え方を自治体や一般向けに啓発して避難所の環境を少しでもよくし、災害に備える活動を行っています。冒頭でも書いたように、自然災害の多い日本では、避難所生活は、私たちの誰もが「他人事」ではないだけに、こうした動きへの理解と支援を積極的に行っていくべきではないでしょうか。
憲法理念の実現をめざす第55回大会(護憲大会)開催の呼びかけ
私たちは、1964年以来、「憲法理念の実現をめざす大会(護憲大会)」を毎年秋に開催し、憲法の平和と民主主義、人権尊重の理念を日本社会において実現するために、全国の人びとの奮闘を持ち寄り、その内容をより豊かなものとするべくとりくみを積み重ねてきました。55回目となる今年は11月17日(土)から19日(月)の日程で、佐賀県・佐賀市において開催します。すべての皆さんに、本大会への参加を呼びかけます。
昨年5月3日、安倍首相は改憲派の集会に寄せたビデオメッセージで「2020年改憲」を表明しました。スケジュールを逆算すると、今年の通常国会での改憲発議を強行することも想定されるものでした。3月25日行われた自民党大会において、「改憲4項目」(自衛隊明記・緊急事態条項・合区解消・教育の充実)の条文案を提示するところまではこぎつけましたが、最終決定には至りませんでした。
また、国民投票実施の前提となる「国民投票法改正案」について、与野党の一致をみることなく、自民・公明、日本維新の会、希望の党による国会提出となりました。ただし、通常国会での成立は見送られ、次期以降の国会で審議が予想されます。
当初の安倍首相の目論見からは、だいぶんズレが生じているのは、確かです。そのことを反映し、昨年同様改憲派集会で公開された安倍首相のビデオメッセージでは具体的日程については触れることがありませんでした。一方、安倍首相は改憲への意欲をあらためて表明しています。今なお改憲に向けた策動を止めることがないのは、一度取り下げてしまえば、政権そのものの求心力を失いかねない現実があるとみるべきで、けっして油断してはなりません。むしろ、なりふりかまわぬ強行を警戒し、改憲阻止のとりくみをすすめなくてはなりません。
安倍政権の改憲策動に対し、昨年9月に発足した「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が呼びかける「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」は、約1350万筆を集約しています。諸団体・個人が全国各地でこの署名を通じ、広範な市民との対話を進めてきた結果として確認する一方で、改憲発議を断念させるため、目標として掲げる3000万筆達成に向け、よりいっそうの奮闘が求められています。
理由なき改憲のための改憲の策動は、「特定秘密保護法」(2013年)、「集団的自衛権」行使容認の閣議決定(2014年)、「戦争法」(2015年)、「共謀罪」(2017年)、「働き方改革」(2018年)、あるいは沖縄抑圧や歴史改ざん、教育への介入といった安倍首相自身の反憲法的性格に基づき行われてきた諸政策の総決算です。
私たちには、この安倍政権を打ち倒し、憲法違反の法律を廃止し、平和といのちと人権を私たちの手に取り戻し、未来に引き継ぐ責任があります。そのために、ともに考え、ともに行動しましょう。護憲大会をそのための重要なステップとして位置づけ、必ず成功させましょう。職場から、地域から、全国各地から、第55回護憲大会に結集しましょう!
2018年8月31日
憲法理念の実現をめざす第55回大会実行委員会
被爆73周年原水爆禁止世界大会・大会宣言
2018年08月09日
1945年8月6日広島に、9日長崎に、米軍機によって投下された2発の原爆は、一瞬にして二つの都市を壊滅させ、その年の暮れまでに21万4千人余の命を奪いました。原爆投下後の地獄を生き抜いた人々も、原爆後障害や差別と偏見、経済的貧困など、筆舌に尽くしがたい苦難の道を歩んできました。
また、2011年3月11日に発生した東日本大震災は、多くの人々の命を奪いました。さらに東京電力福島第一原発の事故により、大地は放射性物質で汚染され、多くの原発被災者を生み出しました。事故から7年以上経った今でも、被災者は放射能による健康不安に怯え、5万人近くの人々は、苦しい避難生活を余儀なくされています。様々な形で人権が侵害されています。
ヒロシマ、ナガサキ、そしてフクシマ。核の軍事利用と商業利用によって引き起こされた、二つの「核」の惨禍の被害と脅威は、チェルノブイリやスリーマイル島、そしてオーストラリア、ビキニ環礁なども含め、様々な場所で明確に存在しています。原水禁は、ヒロシマ・ナガサキの被爆者救済・支援の運動を展開し、国の責任を追及してきました。そのことの成果を共有し、チェルノブイリなど世界の人々の闘いとも連帯し、一刻も早い核時代からの脱却をめざします。
1万5千発とも言われる核兵器は、いつでも発射できる状態にあり、偶発的な核戦争や核爆発も懸念されています。戦争被爆国であるにもかかわらず、安倍政権は、核兵器廃絶に後ろ向きで、「核兵器禁止条約」に反対し、米・トランプ政権の核戦力の強化をめざす新たな核政策を、積極的に支持しています。私たちは、日本政府に対して、被爆者の思いに寄り添い、早期に核兵器禁止条約を批准することを求めます。
これまで緊張関係が続いていた東北アジアでは、朝鮮半島をめぐって南北首脳会談・米朝首脳会談が行われ、対話と協調を基本に、平和と非核化に向けた一歩を踏み出しました。私たちが求めて来た「東北アジアの非核兵器地帯」の実現に向けてのとりくみを開始し、そして非核三原則の法制化と「潜在的核保有」と批判されるプルトニウム利用政策の放棄を実現します。
一方、安倍政権は、国会における多数を背景に強引な政治を行っています。安倍政権の横暴は、集団的自衛権の行使を容認した安保関連法の制定や共謀罪の新設、沖縄の辺野古への新基地建設の強行などの様々な分野にわたり、平和や民主主義を破壊し、力の外交を基本に東北アジアの緊張を高めています。
安倍政権は、歴史修正主義をもって、戦後日本社会が選択した平和主義を破壊し、戦争をする国に変えようと憲法改「正」にまで踏み込もうとしています。このような動きを、私たちは決して許しません。弱者を切り捨て、いのちや平和、人権を蔑ろにする安倍政権は、脱原発の世論が高まっているにもかかわらず、福島第一原発の事故の責任も取らず反省もなく、その被害も過小に評価し、被害者への支援も切り捨て、一方で次々と原発の再稼働をすすめています。脱原発社会を求める闘いを強化し、国の責任を明確にして福島事故被害者への補償と支援を勝ち取ります。
私たちは、今大会を通じ、「核」と向き合い、その廃絶にむけた確信と展望を確認しました。核兵器廃絶を求め、核被害への補償と支援を求め、平和を求める世界の人々と連帯し、「核と人類は共存できない」「核絶対否定」の原水禁運動をさらに発展させていきます。「核も戦争もない平和な社会」をつくるため、地域や職場において、それぞれの立場から運動を進めていきましょう。
ノーモア ヒロシマ ノーモア ナガサキ ノーモア フクシマ
ノーモア ヒバクシャ ノーモア ウォー
2018年8月9日
被爆73周年原水爆禁止世界大
避難指示中に宴会かよ!
7月3日から8日にかけて、原水禁代表団として中国を訪問している最中、日本は中四国地方を中心に「西日本豪雨」と呼ばれる未曾有の災害にみまわれた。台風7号の影響で梅雨前線が活発化したことで、北海道と九州から長野県にかけて、500ミリから1800ミリを記録する豪雨となった。7月14日現在で死者は200人、行方不明者が48人にのぼっている。繰り返される自然災害に胸が痛くなる。
7月5日の午前中には、兵庫県で作業員3人が流され1人が死亡している。午後1時には、神戸市で10万人、大阪府茨木市など3府県15市町村で計約20万人に避難指示・勧告が出された。神戸市灘区の神戸大学では裏山が崩れ、避難勧告が出され休校となった。
北海道岩内町でも、河川の氾濫が予想されるとして355世帯660人に避難勧告が出された。奥尻町や八雲町でも土砂崩れが起きて道路が不通となり、停電も発生していた。気象庁は、5日午後2時、臨時会見を開き、8日にかけて西日本と東日本で猛烈な大雨が降り続くとし、『今後、重大な災害の発生するおそれが著しく高くなり、大雨特別警報を発表する可能性があります』と警告を発した。
全国的に甚大な被害が想定される状況の中で、5日中には被害や避難が続出していたにもかかわらず、衆議院の赤坂議員宿舎では、安倍晋三首相を囲んで“赤坂自民亭”と称する宴会が開催されていた。岸田文雄政調会長や小野寺五典防衛相、上川陽子法相も参加し、自民党の国会議員たちが笑顔で酒を酌み交わしていた。小野寺防衛相は自衛隊の災害出動の責任者であり、岸田政調会長の地元の広島県の被害は甚大だ。上川法相は、オウム真理教事件に関わる死刑囚7人の死刑執行命令書に署名したばかりだった。
安倍政権は「命」をどのように捉えているのだろうかと疑問に思う。たくさんの人々が、豪雨の中で不安な避難を強いられていた。その後、災害は拡大し、多くの人々が土砂に埋まり家に潰され、洪水に流されて命を失っている。その最中の6日、参議院本会議で審議が始まったのは市民の7割が反対と言われる「IR実施法案」だ。私たちは馬鹿にされている。
思い出すことがある。2001年の「えひめ丸事件」だ。宇和島水産高校のえひめ丸がアメリカ海軍の原子力潜水艦に衝突され沈没し生徒と教員9人が死亡した。一報を受けた後もゴルフを続けた森喜朗首相(当時)は、支持率8%に低下する中で、結局総辞職を余儀なくされた。それが、まともな社会なのではないか。
(藤本泰成)
国は辺野古新基地建設を断念せよ!翁長雄志沖縄県知事の撤回表明を支持する声明
2018年7月30日
フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)
事務局長 勝島 一博
沖縄県名護市辺野古への新基地建設工事に関して、翁長雄志沖縄県知事は7月27日の記者会見で、前知事が承認した埋め立て承認を撤回することを表明した。今後、撤回に向けた具体的な手続きを進めることになる。
沖縄防衛局は、8月17日から土砂を投入することを県に通知していた。辺野古崎南側の浅瀬で護岸に仕切られたところから土砂を投入しようとするものだ。いっぽう、北側にあたる大浦湾の埋立予定海域に、超軟弱地盤があることが市民による情報公開請求で明らかになった。2年前の沖縄防衛局のボーリング調査によって、国はこの事実を把握していたのだが、ひた隠しにしていたのだ。この軟弱地盤の存在は当初の新基地建設工事の設計条件とは全く異なる。このまま工事を進めるには、設計変更をし、あらためて県知事の承認を求めなければならないものであるはずだ。国は土砂投入で、埋立ての既成事実を作り上げ、県民のあきらめを誘い、11月に予定されている沖縄県知事選挙で、国の言うことを聞く知事を当選させようとしているのであろう。建設賛成の知事になれば、工事の設計変更の承認も得られる。そしていかなる環境破壊が伴おうと、がむしゃらに軟弱地盤を固めつくして、新基地建設を進めることができる。こんな目論見を絶対に許すわけにはいかない。
県知事によって撤回が行わると再び法廷での争いとなる。これまで国は、2015年の代執行裁判で国と県の和解の後、淡々と法的手続きを進め、埋め立て承認を取り消していた県知事に対してすぐさま「是正の指示」を出した。そして県が国と地方係争処理委員会に判断をあおいだところ、同委員会は、国と県が十分な話し合いを行うことを求める判断を下した。しかし十分な話し合いもないまま、「是正の指示に従わないのは違法だ」として、国は県知事に対し違法確認訴訟を提訴したのだ。このような沖縄県に対する国の対応をみると、菅義偉官房長官が述べる「国と県が互いに協力し、誠実に対応し、埋め立て工事を進めていく」という言葉が、いかに空々しく、不誠実なものであることか。県との話し合いを十分に行うこともなく、不利な情報は隠ぺいし、多数の県民が反対しているにもかかわらず新基地建設をごり押しする国の姿勢は、道義にもとることだ。
翁長県知事は、6月23日の慰霊の日のあいさつの中で、辺野古新基地建設は「沖縄の基地負担軽減に逆行しているばかりでなく、アジアの緊張緩和の流れにも逆行している」と安倍政権の姿勢を批判している。いっぽうの安倍政権は、防衛費の1%を大幅に超える拡大、巡航ミサイルも搭載可能なイージス・アショアの購入など、東アジアの平和的安定をめざすどころか、自らが「安全保障環境の悪化」を進めている。朝鮮半島の非核化と戦争状態の終結に向けた歴史的な米朝会談が開かれ、困難な課題を抱えようとも話し合いの場が設けられたという、今日の東アジアの流れに掉さすことができない始末だ。この翁長県知事と安倍首相の政治姿勢の違いは、為政者としての現実と歴史を見る資質の違いともいえるであろう。
平和フォーラムは、翁長県知事の撤回表明を支持する。そして、社会と誠実に向き合うことのない安倍政権を許さず、辺野古新基地建設を国が断念するまで、沖縄県民の総意とともに前進していく決意をうち固め、粘り強く闘いを続けていく。
被爆73周年原水爆禁止世界大会スローガン
〈メインスローガン〉
核も戦争もない平和な21世紀に!
くり返すな核被害! めざそう核兵器廃絶と脱原発社会!
〈サブスローガン〉
〇子どもたちに核のない未来を!
〇原発事故被害者の切り捨ては許さない!
安心して暮らせる福島を取り戻そう!
〇許すな!再稼働 止めよう!核燃料サイクル めざそう!脱原発社会
〇STOP!原子力推進政策 増やそう!持続可能なエネルギー
〇辺野古に基地をつくらせるな! めざそう基地のない日本
〇非核三原則の法制化を! 東北アジアに平和と非核地帯を!
〇核兵器禁止条約を批准し、早期発効を!
〇再びヒバクシャをつくるな! 全てのヒバクシャの権利拡大を!
〇憲法改悪反対! 安倍政権の暴走を許さない! 平和と人権を守ろう!
被爆73周年原水爆禁止世界大会基調
■はじめに
1945年8月6日、広島市に原爆投下、8月9日、長崎市に原爆投下。私たちは、そのことを決して忘れてはなりません。原水禁の運動の原点はその「被爆体験」にあります。原爆を投下したアメリカは、広島・長崎の甚大な被害に関する調査結果をも核兵器開発に利用しながら、1940年代末には水爆開発を準備し、1949年にソ連が原爆実験に成功してアメリカの核独占が崩壊すると、1950年には水爆の開発を公言しました。そして1954年は、広島原爆の約1000倍もの爆発力を持つ水爆実験をビキニ環礁で行い、マーシャル諸島の人々や第五福竜丸をはじめとする日本の漁船乗組員など、新たなヒバクシャを生み出したのです。度重なる大気圏核実験の「死の灰」による地球的規模の放射能汚染が広がる中で、原水爆禁止、核実験反対の国際運動が広がり、日本の原水禁運動も活動を始めました。
一方、「死の灰」に対する人々の不安を押さえ込みながら、原子力開発を進めるために、1953年にアイゼンハワー大統領は、国連で「原子力の平和利用」演説を行い、1955年に開催された「原子力平和利用会議」が母体となって、1957年には、国際原子力委員会(IAEA)を発足させました。その後の冷戦下においても核保有国の核軍拡が進む中、原水爆禁止を求める世界の人々の運動を背景に、1963年には部分的核実験禁止条約(PTBT)締結、1970年には核不拡散条約(NPT)を発効させ、1972年には核大国の米ソ間で戦略核兵器制限交渉を開始させました。しかし、その後も核兵器は増加の一途をたどり、世界の核兵器は、1986年に約64000発を数えました。核の脅威が増していく中にあって、米ソ両核大国は、1988年に中距離核戦力(INF)全廃条約を発効させ、1991年には戦略兵器削減条約(STARTⅠ)に調印しました。1993年にはSTARTⅡが、オバマ米大統領によるプラハ演説の後の2011年には新STARTが発効しています。国連も、1995年にNPTの無期限延長を決定し、1996年には包括的核実験禁止条約(CTBT)を採択しています。
この間、日本の被爆者は国際的な場で原爆の悲惨な実相について訴えてきました。国際反核法律家協会(IALANA)や、国際平和ビューロー(IPB)、国際反核医師の会(IPPNW)の3団体中心に、1992年に始まった国際法廷闘争は、全世界を巻き込む大運動に発展しました。米仏など核保有国が妨害する中、1995年、国際司法裁判所において、平岡敬広島市長と伊藤一長長崎市長が被爆の実相について訴えました。「国家の存続が危ぶまれるような状況では」との留保をつけながらも、国際司法裁判所は、賛成8、反対6の評決をもって「核兵器の威嚇や使用は、一般的に、国際法および人道法の原則に違反する」との勧告的意見を出しました。6人の反対の内、核保有国出身の裁判官が5人、後の1人は日本出身の裁判官であったことは、日本政府の核廃絶への後ろ向きの姿勢を象徴しています。
多くの人々の努力の結果、核兵器は減少の一途をたどりましたが、いまだ15,000発が世界に存在し、当初英米仏中ロの5カ国であった核保有国は、インド・パキスタン・イスラエルに朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を加えて9カ国に拡大しています。被爆から73年、核兵器廃絶へ被爆者に残された時間はありません。
■オバマ前大統領の「核なき世界」の挫折と日本
2009年4月5日、バラク・オバマ米前大統領は、チェコ共和国首都プラハにおいて、「核兵器を使用したことがあるただ一つの核保有国として、米国は行動する道義的な責任を持っている。私は明白に、信念とともに、米国が核兵器のない平和で安全な世界を追求すると約束する」として、ゴールはすぐに到達できないとしながらも、「核なき世界」をめざすことを宣言しました。この発言は、オバマ前大統領のノーベル平和賞受賞の大きな理由となりました。オバマ前大統領は、2016年05月27日に、現職大統領としては初めて広島の地を踏み、「私の国のように核を保有する国々は、勇気を持って恐怖の論理から逃れ、核兵器なき世界を追求しなければなりません」と、再び「核なき世界」への強い意志を表明しました。
オバマ前大統領は、退任を前にして核兵器の「先制不使用」の宣言を検討しましたが、共和党トランプ大統領の勝利によって政策の継続性が不透明となったことや「中ロの情勢からも時期が不適切」「日本や韓国などの同盟国との関係を損ねる可能性がある」といった国内外からの懸念の声によって、残念ながら断念することとなりました。中国政府は、これまでも「どんな状況下でも先制不使用の原則を貫く」としており、米政府が「先制不使用」を宣言するならば、「核なき世界」へ向けた重要なアプローチになったに違いありません。しかし安倍首相は、「米国が『先制不使用』を宣言すれば、北朝鮮などに対する抑止力が損なわれ、紛争のリスクが高まる」との懸念を、ハリス米太平洋軍司令官(当時)に伝えたと報道されるなど、米国の核の傘の下で核抑止力に依存する安全保障体制の継続を願望しています。
■核兵器禁止条約の成立と安倍政権の姿勢
核兵器廃絶の運動は、平和団体を中心に世界に広がっていきます。被爆者や平和を求める人々の声に推されて、非核保有国は、核兵器禁止を求めて様々な議論を重ねてきました。そのようなとりくみの結果として、2017年7月7日、「核兵器禁止条約」が、国連加盟国193カ国中122カ国の賛成をもって成立しました。条約成立に向けた流れに繋がった三回にわたる「核兵器の人道的影響に関する国際会議」では、各国政府や国際赤十字などの国際組織、世界の反核市民運動とともにヒロシマ・ナガサキの被爆者やマーシャルなどの核実験被害者、医師や法律家などの専門家が集まり、医学、環境・気候変動、国際法など、様々な観点からの報告や議論がなされました。その中で特に、被爆者や核実験被害者が、自らの体験を語り、核兵器の「非人道性」、「非人間性」を訴えてきたことが、この条約作成に向けた源泉となりました。
条約は、「核兵器使用の被害者(ヒバクシャ)及び核兵器の実験により影響を受けた者にもたらされる容認しがたい苦しみと被害」の留意と、「先住民に対する核兵器活動の不均衡な影響」との認識にたって、「核兵器のいかなる使用も人道の諸原則及び公共の良心に反する」としました。その上で、第1条の(a)で、核兵器などの開発、実験、生産、製造、その他の手段での取得、占有、貯蔵などを禁止し、(d)で、核兵器などの使用、その使用の威嚇を行うことを禁止しています。また、第6条と第7条では、核兵器使用・実験の被害者の支援を受け取る権利を認め、核兵器を使用、実験した締約国の支援を提供する責任を明記しています。人類史上初の核爆弾投下から72年、核兵器を「国際人道法」に反する「非人道兵器」として、核兵器とそれに関わるすべてを国際法で「禁止」する、被爆者や原水禁運動が、長年にわたって求め続けている「核兵器廃絶」への歴史的一歩としてきわめて重要な条約です。また、「すべての国がいかなる時も」遵守すべき国際法として「国際人道法」だけでなく「国際人権法」を再確認することも最終案に追加されました。このように世界の核被害者を「国際人権法」によって救済していく道が切り開かれたことも、重要な前進です。
しかしながら、安倍政権は、核兵器廃絶には核保有国と非保有国の「建設的な協力」が必要不可欠としてこの条約に反対し、交渉に参加しませんでした。条約に調印した国は、2018年6月末現在で59カ国となり、批准書を国連に提出した国は10カ国となっています。50カ国の批准書が国連に提出されて後、90日で核兵器禁止条約は発効することとなります。安倍政権が、唯一の戦争被爆国として国際社会でたち振る舞うつもりならば、核兵器禁止条約への参加は当然です。被爆の惨禍を繰り返してはならないとの被爆者、市民の思いを、安倍政権はしっかりと受け止めて、非核保有国として、戦争被爆国として、核兵器禁止から核兵器廃絶への先頭に立たなくてはなりません。
■破綻するプルトニウム利用政策
原水禁運動は、意を同じくする運動組織と連携しつつ、「東北アジア非核地帯」の形成に向けて議論を展開してきました。朝鮮の非核化は、その構想の実現のためにきわめて重要です。私たちは、非核地帯構想には周辺各国から非難されている日本の「プルトニウム利用政策」(核燃料サイクル計画)の放棄が、絶対に必要であるとの立場で、ともすれば原子力エネルギー政策と考えられがちな「プルトニウム利用政策」を、核兵器廃絶の立場から批判してきました。使用済み核燃料の再処理と再処理によって生み出されたプルトニウムを高速増殖炉の燃料に使用するとする「プルトニウム利用政策」は、六ヶ所再処理工場の23回にもわたる完工延期(23回目は、2018年上半期完工を2021年上半期に延期)と高速増殖原型炉もんじゅの廃炉決定(2016年12月21日に廃炉正式決定)によって、その破綻が明らかになっています。現在日本は、使用済み核燃料の再処理によって国内外に47トンにも及ぶ分離済み核分裂性プルトニウム(長崎型原爆約6000発分)を所有しています。NPT加盟国の非核兵器保有国にあって、唯一再処理を行っている日本は、NPTに対してその使用目的を明らかにすることを求められています。2011年3月11日の福島原発事故以来、きびしい新規制基準の中で、54基あった国内の「運転中」商業用原発のうち、すでに19基(福島第二を含む)の廃炉が決まり、残る35基中、適合性審査「合格」は14基、うち5基(高浜1・2号、美浜3号、柏崎刈羽6・7号)は対策工事中で、実際の再稼働は9基(運転差止仮処分中の伊方3号を含む)にとどまっています。市民社会の脱原発を望む声や安全対策などによる原発建設のコスト増などによって、原子力発電の将来はきわめて不透明となっています。安倍政権は、高速増殖炉計画が実質的に破綻した中にあって、増え続けるプルトニウムをプルサーマル計画(プルトニウムとウランを混合したMOX燃料を軽水炉で燃焼させる)によって利用することとしていますが、再稼働したプルサーマル炉は4基(高浜3・4号、伊方3号、玄海3号の4基だが、関電社長は2018年6月27日、大飯3・4号でも申請を検討中と発表)にすぎません。
■批判される日本のプルトニウム保有
米国においては、サウスカロライナ州サバンナリバーに計画していた米国唯一のMOX燃料加工工場(核兵器解体に伴う余剰プルトニウムをプルサーマル用に加工)の建設を2015年に断念しています。理由は、建設費の高騰とプルサーマルを引き受ける商業用原発がないことによるものです。日本国内においても、仏国からの輸入MOX燃料費は通常のウラン燃料費の10倍近くに達していて、国内調達(六ヶ所再処理工場での再処理や国内MOX燃料加工)ではその数倍にもなり、原発の発電コストに影響するのは必至です。他方、MOX燃料は制御棒の効きを悪くするため、通常の軽水炉では炉心燃料集合体の1/3程度までしか装荷できず、1基で消費できるプルトニウム量は最大でも年0.3~0.4トンにすぎず、経済性、安全性、プルトニウム保有量削減のいずれにおいても正当な理由になりえません。そのため、米国内からは、「再処理は経済性も合理性もない」「日本が再処理を断念することを望む」などとする声が、トーマス・カントリーマン米国務次官補、ジョン・ウルフソル国家安全保障会議(NSC)上級部長、ジョン・ホルドレン米大統領補佐官(科学技術担当)など、多くの人からあがっています。2018年7月の日米原子力協力協定の自動延長をめぐって、米カーネギー国際平和財団のジェームズ・アクトン上級研究員は、日本が保有する使いみちのないままの47トンのプルトニウムに関して「核物質をテロ組織に奪われる安全保障上のリスクがある。核拡散につながりかねず、他国への悪い前例となり、中国や韓国など周辺国との緊張感を高めることにもなる」との懸念を表明しています。
このような中、米国家安全保障会議NSC等は日本政府に対し、プルトニウム保有量に上限を設け、削減策を公表することや日米原子力協力協定の自動延長に合わせて日米共同文書を発表するなどの適切な利用・管理を求めてきたと6月10日に報道されました。安倍政権は、7月3日閣議決定した第5次エネルギー基本計画で「プルトニウム保有量の削減に取り組む」と急遽追記しましたが、プルトニウム保有量の上限規制や六ヶ所再処理工場の竣工延期は避けられない状況です。7月5日に原子力委員会で決定された平成29年度版原子力白書でも「我が国のプルトニウム利用に関する取組(基本的な考え方の見直し)」の項を設け、「プルサーマルの実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう国が再処理量を認可することや海外保有分のプルトニウムの着実な削減の必要性などの議論がされております」と明記しています。六ヶ所再処理工場が稼働すれば年間約8トンの余剰プルトニウム(核分裂性では約5トン)が生み出され、「利用目的のないプルトニウム」が増え続け、今以上に国際的な批判を浴びるのは必至です。これを回避するために、政府や電力会社は経済性のない危険なプルサーマルを強行・拡大することで、保有プルトニウム量を削減しようとしていますが、それでは問題の解決にはつながりません。全量再処理の計画を改め、直ちに再処理・プルトニウム利用の「核燃料サイクル計画」を放棄すべきです。
■矛盾する日本の核政策
オバマ前米大統領は、「核なき世界」へのアプローチとして、また、テロ対策として、核セキュリティーサミットを開催し、プルトニウムの削減を進めてきました。このような情勢の中で、日本のプルトニウム保有には、中国を中心に周辺諸国から批判の声があがっています。2016年6月、米国バイデン副大統領(当時)が、習近平中国国家主席に対して「日本は一夜で核兵器製造が可能」と発言したと伝えられました。2011年には雑誌『SAPIO』の対談で、自民党の石破茂政調会長(当時)が、「原発を維持するということは、核兵器を作ろうと思えば一定期間のうちに作れるという『核の潜在的抑止力』になっている」「安全保障の面から、日本が核兵器を持てることを否定すべきではない」と発言し、日本が「潜在的核保有国」であることを肯定しています。
世界の核軍縮や環境問題で多くの提言を行ってきた米国のNGO「憂慮する科学者同盟」のグレゴリー・カラキー上級アナリストは、麻生政権時の2009年、「米国の戦略体制に関する米議会諮問委員会(座長:ペリー元国務長官)」に出席した秋葉剛男駐米公使(現外務事務次官)が、「米国が配備した戦略核の一方的削減は、日本の安全保障に逆効果」「米国は仮想敵国が核能力の拡張や近代化を諦めるのに十分な抑止力を持つべき」として、オバマ大統領の「核なき世界」へ向けたとりくみに反対する姿勢を示したことを明らかにしました。日本政府は、国連の場で核兵器廃絶を主張しながら、自国の安全保障については、米国の傘の下にあって成立しているとする核抑止の幻想に基づいて構築しています。自国の核兵器保有の潜在的能力を保持しながら、米国の核抑止政策の枠内で安全保障を確立しようとする日本政府の姿勢は、絶対に改めなくてはなりません。
■トランプ政権の核戦略と日本
2018年2月2日、米トランプ政権は、2010年のオバマ政権以来となる「核態勢の見直し」(NPR2018)を発表しました。「力による平和」を主張するトランプ大統領の意向を反映し、ピンポイントで核兵器の使用を可能とする「小型核兵器の開発前倒し」とF35ステルス戦闘機等への核能力組込み(配備)を明記し、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の搭載や水上艦搭載の核巡航ミサイルの新たな開発による戦術核兵器の米海軍再配備(1991年にブッシュ(父)政権が撤去していた)などをめざすもので、核軍縮への道と逆行するものとなっています。また、核兵器の使用条件も緩和し、核兵器以外の兵器での攻撃やサイバー攻撃をも核兵器使用の対象としています。オバマ政権が2010年新START条約の米議会批准時に、共和党の要求で認めざるえなかった「30年間に1.25兆ドル(約139兆円)の核兵器近代化計画」を拡大・継承する一方、オバマ政権が2013年大統領令で発効させた「10年間で政府支出を1.2兆ドル削減」(2013年度国防費13%削減)策は撤廃して2019年度国防費を7.3%増額させています。1980年代のレーガン核軍拡に次ぐ、非常に挑発的・好戦的で世界を核戦争の瀬戸際へ追い込みかねない、きわめて危険な大核軍拡だと言えます。包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准の追求や「新たな核兵器開発は行わない」としていた前オバマ政権下でのNPR2010を全否定し、「核なき世界」をめざすとするオバマ前大統領の姿勢をも放棄したもので、決して許してはならないと考えます。
安倍政権は、米国の核抑止力を強化するものとして今回のNPR2018を「高く評価する」とし「核兵器による米国の抑止力維持は必要不可欠」との姿勢を示しました。核搭載可能なF35ステルス機(1機130億円)の空自用F35A・42機調達計画に20機以上を追加し、空母化を検討中の護衛艦「いずも」から短距離離陸・垂直着陸可能な海自用F35Bを10機以上追加発注するなど、トランプ政権による巨額のF35開発費を「分担」するとともに、日本の攻撃能力を高めようとしています。米国の新たな核政策を積極評価し、核兵器禁止条約にも背をむける安倍政権が「唯一の戦争被爆国」を標榜する姿勢は、全く説得力を欠くばかりか、核軍縮・核廃絶を願う世界の人々、とりわけ、ヒバクシャの希望を踏みにじるものとなっています。
今回のNPR2018には、NPR2010で退役した洋上発射核搭載型巡航ミサイル「トマホーク」の代替として、新たな洋上発射核巡航ミサイルの開発が明記されました。一方で安倍政権は、2017年12月に示した防衛大綱に、米国の拡大抑止は不可欠との姿勢から「その信頼性の維持のため米国と緊密に協力する」との文言が加えられました。2018年6月、米国務省が公開した外交文書から、1969年の佐藤栄作元首相とニクソン元米大統領との「核密約」に至る経過が明らかになりました。米国が、沖縄返還交渉の中で、沖縄の米軍基地への核兵器の「緊急時の貯蔵」と「通過する権利」を求め、交渉の過程で「再持ち込み」に表現が弱められていますが、当時のキッシンジャー国務長官は「アジアにおいて、深刻な核の脅威がある場合に役立つ」との視点を明らかにしています。日米政府双方のこのような考え方に立つならば、日本への核兵器持ち込みの懸念は一層深刻なものとなってきます。戦術核兵器の米海軍再配備方針を打ち出したトランプ政権下では、核搭載艦船が日本に寄港する現実的可能性が一層高まり、国是である「非核三原則」も有名無実化する危機にあると言っても過言ではありません。原水禁でこれまでとりくんできた「非核三原則法制化」の意義がかつてなく高まっていると言えます。被爆者と市民の思いに背を向け、これまでのとりくみを否定する安倍政権の姿勢は、許すことはできません。
■非核化へ動きだした朝鮮半島
2018年4月27日、大韓民国文在寅(ムン・ジェイン)大統領と朝鮮民主主義人民共和国金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は、板門店において、11年ぶりの南北首脳会談を開催し「板門店宣言」を採択し署名しました。宣言は、①自主統一への未来を早める、②戦争の危険を実質的に解消する、③朝鮮戦争の終戦を宣言し休戦協定を平和協定に転換する、④完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現するなど、相互信頼の下に南北の関係を改善し民族統一への一歩を記しています。私たちは、朝鮮の核兵器開発をきびしく批判し、東北アジアの非核地帯構想を主張してきました。その目標を踏まえ、朝鮮に対する制裁措置の解除、米韓・日米の軍事演習の停止、対話の再開を求めてきました。会談後の共同発表では、文在寅大統領が「民族の念願である統一のための大きな一歩を踏み出した」と述べ、金正恩国務委員長も、「我々は闘うべき異民族ではなく、仲良く生きるべき一つの民族だ」と述べました。植民地支配と侵略戦争の結果、南北分断の要因をつくった日本と朝鮮戦争の責任を負うべき米国両政府は、南北両首脳のこの言葉に真摯に向き合い、朝鮮半島の民族の繁栄に共に協力しなくてはなりません。
板門店宣言では、「南と北は完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認した」として、朝鮮政府は、5月24日、米英中韓露の取材団に公開の下で、咸鏡北道(ハムギョンブクト)豊渓里(プンゲリ)の核実験場の坑道を爆破・廃棄しました。専門家の立ち会いがないという不十分な面はあるにしろ、そもそも朝鮮の核開発が、米国からの軍事的脅威を背景にしたものであることを踏まえながら、「完全な非核化」の一歩として評価すべきと考えます。
■米朝首脳会談・共同宣言を生かせ
2度の南北首脳会談と中朝首脳会談を踏まえて、6月12日、シンガポールにおいてトランプ米大統領と金正恩国務委員長は、歴史上初めての米朝首脳会談に臨みました。会談後、両首脳は共同声明に署名し、朝鮮の安全保障の確約と朝鮮半島の完全な非核化への責務を相互に確認し、①両国民の平和と繁栄を希求する意思に基づく新たな米朝関係の構築の約束、②朝鮮半島の永続的かつ安定的な平和体制の構築への共同しての努力、③板門店宣言を再確認し朝鮮による朝鮮半島の完全な非核化にむけた努力、④戦争捕虜や行方不明兵の遺骨回収への努力を確認しました。具体的協議に関しては今後の高官協議に委ねられましたが、軍事的緊張の下にあった朝鮮半島情勢への劇的な変化をもたらすことが期待されます。また、トランプ米大統領が、会談後の記者会見において在韓米軍の削減や米韓軍事演習の中止に触れ、「米韓合同軍事演習は挑発的だ」「朝鮮との交渉中に『戦争ゲーム』をするのは不適切」と発言しました。この発言を受けて、米国防総省は米韓合同演習「フリーダム・ガーディアン」と「韓国海兵隊交換プログラム」(KMEP)の合同訓練などの中止を発表しています。国防総省のホワイト報道官は「生産的協議が続くならば」として今後の追加決定も示唆しています。毎年春に実施される大規模演習「フォール・イーグル」などの中止も期待されます。米朝両国は、朝鮮戦争の休戦状態を引きずり、長年にわたって対立を続けてきました。朝鮮からは、度々「休戦協定を平和協定へ」との主張がありましたが、実現に至りませんでした。今回の会談と共同宣言を生かし、東北アジアの非核化と平和の実現に向けて、両国は不退転の決意で臨まなくてはなりません。
■国交正常化交渉を基本に
安倍政権は、拉致問題の解決に拘泥するあまり、国交正常化への交渉は行き詰まったままに、無為に時を過ごしました。「全ての選択肢が机上にある」として、経済制裁と軍事的圧力強化で核実験やミサイル発射を繰り返す朝鮮に対抗する米トランプ政権と足並みをそろえ、結局、今回の南北、中朝、米朝と続く外交交渉の蚊帳の外に置かれました。このような状況は、政治の不作為と言っても過言ではありません。安倍政権は、直ちに国交正常化へ向けた議論を開始し、朝鮮半島の完全な非核化へのプロセスに、両国の信頼の醸成を基本にしながら、日本のプルトニウム政策の放棄を前提に、関与を深めていくことが重要です。この間、日本のメディアの姿勢は、安倍政権の姿勢を反映してか、朝鮮を「背信の歴史」と非難したり、共同声明は具体性がないとその意義を矮小化したりと、朝鮮敵視政策と軌を一にしているように見えます。米韓軍事演習中止などの動きに対しても、日米同盟の抑止力の低下を懸念する報道が散見されます。このような後ろ向きの姿勢では、東北アジアの平和を実現することはできません。「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」の文言に拘泥し、一歩も進まないのであれば朝鮮半島の非核化は実現できないと考えます。今必要なのは、非核化に向けたプロセスを一歩ずつ着実に進めることです。
米国は、トランプ政権の新たなNPRを見れば明らかなように、「米国第一」を掲げ、核大国として世界に君臨してきました。トランプ政権の挑発的な核軍拡を支持し、その核の傘に下に、拡大抑止の強化を主張する日本が、完全な非核化を朝鮮に求めることの矛盾を、私たちはしっかりと見据えなくてはなりません。非核三原則を法制化し核抑止の幻想を断ち切ってこそ、また、潜在的核武装能力の維持とも言える再処理・プルトニウム利用政策を放棄してこそ、日本は東北アジアの非核地帯化の一翼を担い、その平和に貢献することができるのです。
■福島原発事故後に浮かび上がる課題
①困難な廃炉作業と巨額な廃炉費用
東日本大震災・福島原発事故から7年半が過ぎようとしています。依然として事故の収束作業は難航し、先の見通しの立たないものとなっています。廃炉に向けて最も難関といわれる溶融燃料(デブリ)の取り出し作業は、格納容器内で毎時80Sv(わずか数分で急性死)もの極端に高い放射線に阻まれ、取り出しの技術確立の目処も立たず、全く先の見えない状況にあります。デブリの一部は確認できていますが、いまだその全容を把握するには至っていません。政府・東京電力は、デブリの取り出し開始を2021年内、廃炉完了の目標を2041年から2051年と時期を示していますが、これまでの経緯をみれば、さらに長期化するものと考えられます。デブリ取出しのために労働者が高線量かつ大量に被曝する事態は避けるべきであり、安全に取り出す可能性がないのであれば、福島原発事故を起こした東電と国の責任を踏まえた上で、超長期間安定的に安全を確保する方途を福島現地とともに模索すべきです。
経産省は、2016年12月に福島第一原発廃炉など事故処理にかかる費用が、それまでの2倍の21.5兆円になるとの試算結果を発表しましたが、あくまで「試算」であり、今後の推移次第では、莫大な費用負担が私たちに求められます。これら費用のうち損害賠償費7.9兆円の大半は「一般負担金」として9電力会社の電気料金から20数年かけて徴収され続けていて、2020年度からはその「過去分」と称して2.4兆円が新電力との契約者を含めた電力消費者の託送料金に転嫁され40年間かけて徴収されようとしています。その結果、東電が実際に負担する損害賠償費は特別負担金の約2兆円に留まります。にもかかわらず、国の原子力損害賠償紛争解決センターの裁判外紛争解決手続き(ADR)和解案を一方的に拒否しているのは許せません。また、廃炉費不足分6兆円については東電管内の託送料金を高止まりにして得た超過利潤を「廃炉等負担金」という費用とみなし(超過利潤隠し)て、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の「廃炉等積立金」に積立てるという消費者だましのテクニックで電力消費者から徴収するなど、一般消費者からの徴収を企図しています。
②避難生活と政府支援の打ち切り
被災地福島では、県内に1万5420人、県外に3万4095人、合計4万9515人(2018年3月5日復興庁調査)が、長期の避難生活を余儀なくされています。避難指示が出されている地域の住民でも、避難先で自宅を購入した人や、県などの住宅支援を受けずに東京電力から家賃の賠償を受けて賃貸住宅で暮らす人などは含まれていません。また、住宅の提供が打ち切られた自主避難者も含まれず、福島県・復興庁の調査では十分に避難の実態が反映されていません。
2018年6月29日に復興庁が発表した、同年3月末現在の震災関連死と認定された人の数は3676人で、約9割が66才以上の高齢者で占められています。このうち福島県の震災関連死と認定された人は、2227人で、全体の60%を超えるものとなっています。この数字は、福島県では自然災害である東日本大震災に加えて、人災である東電福島第一原発事故の影響が大きいことを明らかにしています。福島第一原発事故の影響によるふるさと喪失、生業を奪われ、長期にわたる避難生活や将来への不安などが原因にあげられます。
一方、帰還困難区域を除いた、居住制限区域・避難指示解除準備区域では、除染作業によって年間被ばく量20mSv/年を基準にそれを下回る地域から避難指示が解除されています。しかし、20mSv/年という数字は、国際放射能防護委員会(ICRP)が緊急時の基準として示しているもので、これまでの通常時の基準(1mSv/年)の20倍もあり許されるものではありません。避難指示解除に合わせて、帰還を強要するかのように住宅支援などの補償が打ち切られています。避難指示解除準備区域では、教育や医療、日常生活に必要な各種インフラの整備は追いついていません。被害者は、20mSv/年というこれまでに経験の無い高放射線量までのヒバク(実際には、日常生活を制限すれば2~5mSv/年程度に留まるが、ホットスポットに入ると高くなる)を覚悟して戻るか、補償が打ち切られても避難し続けるのかのきびしい選択を迫られています。そこには、政府の被害者に寄り添う姿勢が全くありません。
被害者それぞれの選択に対する支援の確立を求め、実現させなくてはなりません。「福島原発子ども被災者支援法」の第2条2項には「被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない」と記載されています。安倍政権が進めている原発事故被害者への施策は、これらの考え方を根底から否定するものです。それは東京オリンピックに向けて「復興」をアピールし、福島原発事故の早期幕引きと被害の矮小化を図り、被害者を切り捨てようとする「棄民」政策と言わざるを得ません。
原発事故被害者は、十分な補償と支援を求める訴訟を全国各地で起こしています。多くの場合、原告側が勝訴し、東京電力に賠償を命じる判決が出ています。東電は当初、「裁判外紛争解決手続(ADR)の和解案は尊重する」としていました。にもかかわらず、原発事故後に全村避難となった飯舘村の村民が東電に慰謝料の増額を求めたADRで、2018年2月、東電が和解案の受け入れを拒否したことが判明しました。東電は「20mSv程度の被爆の危険性は証明されていない」「精神的賠償は既存の金額で十分」などと主張しています。浪江町の町民15,000人以上を代理した「浪江町ADR集団申立て」に対しても、2018年3月には東電が6度目の拒否回答を行い、4月にはADR手続きが打ち切られています。現在原告・弁護団は、訴訟を検討しているとしています。訴訟になれば原告1500人以上の大きな訴訟となります。東電は、ADRに関連してこのような拒否を繰り返し、被害者の要求に真摯に対応していません。事故の責任を明確にせず放射能被害を認めない国と東電の姿勢が、全国各地での訴訟につながっていると考えられます。
自主避難者に対する数少ない支援が災害救助法に基づく住宅の無償提供でした。しかし、国と福島県が2017年3月で無償提供を打ち切り、住宅を追い立てられた多くの家庭が生活困難に陥っています。山形県の居住する自主避難者は、住宅の明け渡しを求める「高齢・障害・求職者雇用支援機構」から裁判に訴えられる事態となっています。被害者がいつの間にか加害者に仕立てられる事態を、許すわけにはいきません。
福島原発事故の刑事責任を求めて、被害者らが訴えた「福島原発刑事訴訟」は、検察庁が2度不起訴にするも、検察審査会が強制起訴しました。2017年6月30日に初公判が開かれ、刑事裁判がスタートしました。国を相手にした国賠訴訟も全国で起こされています。原発事故被害者への不誠実な国や東電の態度は、事故の原因は予想を超えた津波による自然災害にあるとして、原発の安全性に対して監督責任のある国や原発を運転する東京電力が事故の責任を免れていることにあります。国や東電は加害者であることを認め事故の責任を全うすべきであり、原発事故をなきもののように振る舞う姿勢は、被害者をさらに追い詰めるもので許すことはできません。このような意味から、国や東電の責任を追及することはきわめて重要であると言えます。
③子どもや住民の「いのち」を守れ
福島県では、福島第一原発事故による放射性物質の被害を踏まえて、県民の被曝線量の評価や県民の健康状態の把握、疾病の予防、早期発見、早期治療のために「県民健康調査」を実施しています。本来なら、原発事故による放射能汚染と被曝を強いられた全ての地域の住民について、国策の原発で重大事故を招き人々を被曝させた責任を国が認め、被害者全員の健康を守り被害者に寄り添う立場から、国の責任において直轄で健診と健康管理・治療を行うべきです。しかし「県民健康調査」は、福島県の事業であり、国は「財政的・技術的支援を行うのみ」とされています。また、健康診査については当初から避難区域等の住民約21万人のみを対象としており、その他の人々については既存の健診(特定健診、職場・学校健診など)を活用するとされる(特定健診は自己負担あり)など、被害者の健康を国が責任持って守る施策にはなっていません。
「県民健康調査」では、とくに2011年3月11日現在で概ね18歳以下であった子どもたちに甲状腺(超音波)検査を実施してきました。2018年3月末現在、3巡目の一次調査を終え、二次調査の途中の段階ですが、これまでに199人が甲状腺がん、またはがんの疑い、163人が手術を受け(うち一人は、術後良性腫瘍と診断)、さらに、少なくとも約1400人もの人々が、保険診療による経過観察等が必要と診断されたことが報告されています(2018年6月18日、県民健康調査検討委員会)。今後、長期にわたる公的なケアと医療面、経済面でのサポートが重要であり、県民の健康不安、特に子どもの健康にしっかりと向き合うことが求められています。2015年7月から福島県では、「19歳以上の甲状腺医療費支援」(甲状腺調査サポート事業)が始まりました。これは福島県と全国の運動がつながって実現させた、事故後初めての国による被害者への「医療支援」です。さらに「診療情報提供」を支援の条件としないこと、手続きの簡素化、甲状腺検査に関する「健康手帳」の交付など、施策の改善を国と県に対して求めるとりくみが続けられています。この運動の成果と力を、さらに充実した支援の実現につないでいくことが重要です。
事故後、避難指示区域等の人々に対して行われてきた、医療保険、介護保険の保険料と窓口負担の減免措置は、「避難解除」 が進む中で「自立」「復興」の名の下に、事故10年をメドに打ち切りが危惧されています。浪江町などは、自治体として住民に「健康手帳」を配布しました。そして、浪江・双葉町は、2012 年6月、無料の健診・医療、長期的な健康確保のための諸手当の支給、「放射線健康管理手帳」の交付など、「原爆被爆者手帳と同等の法整備」の要請を国に求めました。被曝による健康被害は、10年後以降も長期にわたって現れる可能性があります。被曝を強いられた人々の健康を守るために、「健康手帳」(無料の健診と医療、生活保障などの権利を伴う「手帳」)の交付など、より包括的な国の医療・生活支援策へと拡大させていくことが求められています。
一方で原子力規制委員会は「線量に大きな変動がなく安定しているため、継続的な測定の必要性は低いと判断した」として、福島県内にあるモニタリングポストの大幅な縮小に動いています。避難指示が出された12市町村以外にある約2400台を2021年3月までに順次撤去することしています。
原発事故はいまだ収束しておらず、溶融した燃料は手つかず、汚染水はたまり続けています。山野においては除染も手つかずの状態で放置され、生活の場の近辺にも除染土や除染ゴミが仮置きされています。事故や天災などにより再び放射性物質が飛散する可能性は否定できません。
原発事故の被災地に住む福島県民には、被曝をできる限り避け、健康に生きる権利があり、放射線の正確な情報を知る権利があります。モリタリングポストは、住民が放射線量の変化を知る大切な装置であり、被害住民の同意なく撤去することは許せません。原発事故が収束し、年間放射線量が1mSvという事故以前の生活を取り戻すまで、しつかりしたデータの提供を求めることが大切です。
■第5次エネルギー基本計画のごまかし
東日本大震災・福島原発事故によって、原発やエネルギー環境をめぐる情勢は大きく変わりました。民主党(当時)政権下では2030年代「原発ゼロ」の方針が打ち出されましたが、安倍自公政権に代わり、エネルギーの「BEST MIX」などの言葉や非現実的な原発輸出策などを掲げて、一部既存原発の再稼働を強行しながら元の原発推進政策に逆戻りしたかのようです。しかし、その政策は矛盾に満ちていて、思惑通りには進んでいません。
事故後、世界各国で原子力の新規建設費が高騰し、老朽炉も追加の安全対策費で発電単価を下げられない中、太陽光・風力など再エネ・コストの急激な低下などで、原発の価格競争力が失われ、原子力政策の見直しが相次いでいます。また、パリ協定成立と発効(2017年)により、脱炭素・再生可能エネルギー促進の方向に世界の流れが大きく切り替わっています。日本でも福島第一原発事故により世論は大きく変化し、7年後の今なお、原発の再稼働に反対し脱原発を求める声は過半数を超えています。
安倍政権は第5次のエネルギー基本計画の策定を進め、5月16日、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会で、国のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の改定案をとりまとめ、7月3日に閣議決定をしました。
再生可能エネルギーを「主力電源化」する方針を打ち出す一方で、原発と石炭は相変わらず重要なベースロード電源と位置づけ、原子力は「長期的な」電源とし、石炭は「長期を展望」して活用するエネルギー源と位置付けるなど、経済産業省の意向を強く反映したものとなっています。その結果、2030年度時点の発電電力量に占める原発の比率は20~22%とされ、第4次基本計画と同水準に据え置かれました。しかし目標達成に不可欠とされる原発の新増設や建て替えについては、「脱原発」の世論に押され、一言も言及されませんでした。その後の2050年の電力構成の中でも原子力は選択肢と可能性を残しましたが、具体的比率の目標数値を提示できませんでした。
今回の基本計画で示された原子力政策については、世論の動向や現下の安全規制、安全対策費用、再稼働の状況などから、実現性のきわめて乏しいものとなっています。しかし、安倍政権は、原子力・プルトニウム利用のスタンスを変えようとはしていません。原子力政策を延命させるだけのごまかしの基本計画では、将来的な実効性あるエネルギー政策をつくり出すことはできません。基本政策自体の矛盾が、再生可能エネルギーを中心とした社会の構築を拒んでいます。この矛盾を明らかにしていくことこそが、原水禁運動に求められています。
■原発の再稼働を許さない
安倍政権は 原発推進政策を強引に進める中で原発の再稼働を強行してきました。今年に入って、3月14日に関西電力大飯原発3号機、3月23日には玄海原発3号機、5月9日には関西電力大飯原発4号機、5月15日には玄海原発4号機と次々と再稼働を強行させてきました。
福島第一原発の事故が示すように、原発の過酷事故は、地元はもとより非常に広範囲に渡って多大な被害を及ぼします。原発が集中する地域では、一基の原発に限らず、地震や津波などによって同時にまたは連鎖的に事故が起きることも予想されます。「新基準に適合したからといっても、安全とは言えない」と、田中俊一前原子力規制委員長は繰り返し表明していました。原発の安全性を監督する官庁の責任者が、原発事故の可能性を消し去ることができないと表明してきたということです。そのほかにも住民避難の課題、住民合意の課題、使用済核燃料の処分や原発の廃炉、破綻した核燃料サイクル計画など課題は山積しています。
昨年広島高裁で今年9月まで運転差し止めが命じられた四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)の10月再稼働を阻止することが重要です。また、40年を超えて老朽化している日本原子力発電(原電)の東海第二原発(茨城県)の60年運転延長問題もあります。今年11月末までに審査が通らなければ廃炉となりますが、その場合、原電は発電できる原発を持たないこととなり、会社そのものの存続まで危ぶまれる事態です。原電は、運転資金、廃炉費用などの資金不足のため、最低1740億円の対策工事費を東電や東北電力に頼らざるを得ない状況であり、危険な原発を運転する資格はもはやありません。一方、福島第一原発事故の収束費用もままならず、国や電力消費者からの援助を受けている東電が、原発存続のために他者への費用負担を検討すること自体許されるものではありません。
東電は、6月14日、福島第二原発の廃炉にむけて検討する方針を表明しました。遅きに失したとはいえ「原発のない福島を!」と訴え続けてきた県民の思いにかなう決定として、歓迎したいと思います。しかし、東電は、新潟県内において、柏崎刈羽原発の再稼働にむけて着々と準備を進めています。6月の新潟県知事選挙では、「再稼働の争点隠し」によって、再稼働反対派の候補が敗れはしたものの、新知事が再稼働へ突っ走ることはできない状況が生まれています。しかし自民党・公明党推薦の候補であり、「脱原発」を表明しているわけではなく予断を許さない状況は続きます。東電は、東電再生の名目で、柏崎刈羽原発6・7号機の再稼働を狙い、東電・東通原発の工事再開に向けた地質調査すら狙っています。このような東電の思惑を許してはなりません。中越沖地震(2007年7月)で大きな被害を出した原発が、再び地震に襲われないとはいえません。福島原発事故の補償や事故処理さえ満足にできない、また事故の責任も回避しようとする東電に、そもそも原発を動かす資格はありません。各地で進められる再稼働に強く反対し、島根原発3号機の運転開始や東電・東通原発と大間原発の工事再開に反対し、私たちの生活と命のために「脱原発」社会を実現しましょう。
■破綻した核燃料サイクル計画-巨額な費用と未完の技術
安倍政権が進める原子力政策の重要な柱の一つに「核燃料サイクル計画」の推進があります。その核燃料サイクル計画の中核を占める高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)は、1995年12月8日のナトリウム漏洩・火災事故以来、機器の点検漏れや杜撰な管理が相次ぎ、2016年12月20日、その責任も総括も曖昧なままに関係閣僚会議で「廃炉」が決定され、今年3月28日に原子力規制委員会が廃炉を認可しました。国家プロジェクトと位置づけ、1兆円を超える国費を投入しながらほとんど稼働しなかったもんじゅの現実は、日本の原子力エネルギーの将来を予感しています。
発電しながら使った量以上の核燃料を生み出せる高速増殖炉は、「夢」の技術と宣伝され、プルトニウムは「純国産燃料」とも言われましたが、多くの研究者が指摘したように、その困難性と危険性を克服することはできまませんでした。もんじゅの冷却材として多量に使われているナトリウムは、水や空気に触れると激しく反応して爆発したり発火したりするため、その取り出しは困難が予想されます。特に1次冷却系のナトリウムは放射化しており、取り出しはより困難です。建設時に解体は予定されておらず、日本には高速炉解体技術はなく,仏との協力で進めようとしています。
文部科学省は、もんじゅが廃炉作業を終えるまでに最低でも3750億円かかると試算していますが、最難関の燃料・ナトリウム取り出しの具体的な作業工程は不透明であり、技術開発など廃炉費用の拡大は必至です。技術の困難性や危険性を説明せずに、国は「夢」だけを振りまいてきました。計画から50年、反対運動は長きにわたりました。1兆円を超える国費をつぎ込みながら何らの成果も上げることのなかったもんじゅに関して、国の責任は重大です。
原水禁および原子力発電に反対する福井県民会議が立ち上げた「もんじゅに関する市民対策委員会」(代表・伴英幸/原子力資料情報室共同代表)は、「もんじゅ」廃炉への過程と問題点、高速炉開発の問題点などについてまとめた提言を7月10日に原子力研究開発機構や福井県などへ提出しました。今後の廃炉作業については、敦賀市民・福井県民に対しての説明責任をしっかりと果たしつつ、安全を第一に進めなくてはなりません。
一方、政府は「もんじゅ」廃炉の決定と同時に、フランスの高速実証炉「ASTRID」の共同開発への参入を表明しました。「ASTRID」については、開発費用の総額や負担の割合、開発する炉の規模、運転の時期など見通しは立っていません。国は、この研究成果を将来の高速実証炉の独自開発につなげるとしています。ところが、肝心の実証炉建設主体が曖昧で、「新たな(オールジャパンの実証炉開発)体制」や「(費用面を含む)官民役割分担」はこれから検討するとしています。政府の期待していたASTRID計画も、仏原子力・代替エネルギー庁CEA担当者が6月に来日し、仏電力会社EDFが「2060年以前には高速炉に投資しない」と決めたため、ASTRID計画をシミュレーション・プログラム中心の計画へ変更し、建設予定の実証炉規模を60万kWから10~20万kWへ縮小するけれども、その建設費数千億~1兆円の半額を日本で負担してもらいたいと提案してきたのです。
「もんじゅ」開発の失敗から何も学ばず、高速炉計画に拘泥する姿勢はきわめて問題です。この高速炉開発については、内閣府の原子力委員会が、「民間主導で進めるべきだ」とする見解をまとめています(4月24日)。将来の原発発電方式は企業メーカーの主導で決めるべきだとして、「企業の負担も求めつつ、政府が支援する仕組みを導入すべきだ」と従来の政府の方針の見直しを迫りました。高速炉開発の不透明な見通しと開発費用などのコストを考えると電力市場での採算は見込めません。企業が採算性や導入展開の見通しの立たない「高速炉」に率先して投資をするとは考えられず、原発輸出で経営破綻した東芝をはじめ、きびしい経営環境の下で原子力メーカーに余裕はなく、事故処理・賠償に負われる東電だけでなく、他の電力会社も電力自由化で生残りに必死であり、人的・資金的余裕などありません。「民間主導」はもはや実現不可能な方針と言わざるを得ません。再生可能エネルギーの進展と「脱原発」の世論から、エネルギー基本計画における原子力の位置づけは低下するばかりです。もんじゅ廃炉や六ヶ所再処理工場の度重なる完工延期、諸外国からの余剰プルトニウムへの懸念などを考えると、高速炉や核燃料サイクルの存在意義はもはや考えられないと断定すべきです。そのような状況を市民に何ら説明することなく、巨額の税金を浪費し続けようとする国の姿勢は、決して許されません。すでに破綻した高速炉開発から即刻撤退し、六ヶ所再処理工場を閉鎖して、再処理・プルトニウム利用路線を放棄すべきです。
■再処理工場の破綻
6月30日、日本原子力研究開発機構は、東海再処理施設(2014年に廃止決定)の廃止措置作業に約70年を見込み、必要な費用の総額は約1兆円であるとの試算を明らかにしました。放射線量の高い多量の廃液や約7万1千トンもの放射性廃棄物が存在しますが、その状況さえ把握しておらず、現時点で処分の見通しは全く立っていません。作業期間や費用の試算は、今後膨らんでいくことが予想されます。
六ヶ所再処理工場の完工は、2021年上期へ延期(23回目)され、建設費は当初の7600億円から2017年7月現在2.9兆円と4倍近くに膨れあがり、総事業費も13.9兆円に上ると予想されています。抽出したプルトニウムを利用するMOX加工工場の完工も2019年度上期に延期され、その建設費も当初の2倍、2.3兆円に上っています。
通常の軽水炉を利用したプルサーマル発電に利用するMOX燃料のコストは、通常のウラン燃料より10倍近く(仏国からの輸入MOX燃料の場合、国産ではこの数倍)高くなります。電力自由化によって再生可能エネルギー業者など新たな企業参入が本格化し、電力をめぐる企業間競争はきびしくなっています。そのような中で、高額な燃料を使うプルサーマル発電は、あらゆる面から市場で利用する合理性はありません。「もんじゅ」が廃炉になり、高速増殖炉開発路線が破綻した今、高速増殖炉実用化までの「つなぎ」にすぎなかったプルサーマル発電によって再処理を正当化するのは筋違いです。六ヶ所再処理工場とMOX加工工場の計画を断念し、「核燃料サイクル計画」そのものを廃止すべきです。東海再処理工場よりさらに巨大な六ヶ所再処理工場の廃止は、巨額の費用と長期に渡る作業が必要であることは明らかです。東海再処理工場や六ヶ所再処理工場建設につぎ込まれた巨額の費用は、税金として、電気料金として、全て市民から徴収されたものです。無駄で危険な再処理は早急に止めるべきです。
現在日本が抱える約47トンものプルトニウムは、MOX燃料としてプルサーマル発電には利用せず、すべてを核拡散抵抗性の高い形態で密閉しきびしく管理すべきです。六ヶ所再処理工場で新たにプルトニウムを作り出すことは、危険性とともに核拡散の面からも国際的に大きな問題であり、被爆国日本として核拡散に繋がるプルトニウムをこれ以上つくり出すことも使うことも許されません。
■「核のごみ」の最終処分問題と原発の廃炉
昨年7月28日、政府は、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場を選定するための「科学的特性マップ」(適地マップ)を公表しました。発表された適地は日本全土の約65%におよび、そこには全国の8割を超す約1500の自治体が含まれています。この「適地」マップは、放射能の半減期2万4000年の危険なプルトニウムを含む高レベル放射性廃棄物の最終処分場建設が、日本の65%にもおよぶ地域で可能であり、希望すれば8割の自治体でその誘致が実現することを意味しています。政府は、これまでの原発政策同様に、「文献調査」「概要調査」への協力を名目として、自治体に対して多額の「交付金」を支給することで誘致の実現を図ろうとしています。
原子力発電環境整備機構(NUMO)が広報企業に委託して2017年10~12月に開かれた「科学的特性マップに関する意見交換会」では、学生のアルバイトを雇ってのやらせ参加などの不正な実態が明らかになっています。過去にも九州電力のやらせメール、やらせ参加などで大きな批判を浴びたにもかかわらず、相も変わらぬ不正は原発政策の行き詰まりを象徴しています。今年5月からは、広報企業への委託を取りやめ電力会社社員の動員もやめて、NUMO直営で「科学的特性マップに関する対話型全国説明会」(経済産業省資源エネルギー庁と共催)を全国各地で2~3日間隔で頻繁に開いていますが、様々な不正を行使して「国民合意」を取ったかのような強引な「適地決定」が許されるはずはありません。
いま必要なことは、「脱原発」を国の方針として確立させ、これ以上高レベル放射性廃棄物などの核のごみを増やさないことです。最終処分について決めきれないままに、原発の再稼働や六ヶ所再処理工場など核燃料サイクル計画を進め、あらたに多くの核のごみを生みだすことは、そのツケを将来世代に回すもので許されません。
その他にも、福島原発事故、や東海再処理工場やもんじゅなどの廃止に放射性廃棄物など核のごみ問題は山積しています。2015年4月27日に敦賀原発1号機、美浜原発1・2号機、玄海原発1号機に始まって、島根原発1号機、伊方原発1号機、大飯原発1・2号機、伊方原発2号機、福島第一原発1~6号機、第二原発1~4号機全てが廃炉となります。今や、原発は建設の時代から廃炉の時代に突入しています。火山・地震列島のため安定した地層のない日本で地層処分を強引に進めることなく、高レベル放射性廃棄物や使用済み核燃料の処理・管理については「脱原発」を実現した下で国民的議論に付すべきです。また、労働者被曝を避ける立場からも、汚染された原子炉建屋は数十年以上の長期間、密閉管理すべきです。国と電力会社の責任によって、長期にわたる管理体制を確立するとともに、最終処分の技術研究も同時に進めていく必要があります。
■原発輸出とアベノミクスの破綻
安倍政権が進めるアベノミクスの経済政策の中で重要な柱のひとつに位置付けられてきた原発輸出政策は、頓挫しています。
ウェスティングハウス社を買収し、インドや米国での原発建設に打って出た東芝は、経営破綻に陥りました。
日立製作所も、ホライズン・ニュークリア・パワー社を買収し、英国中部ウィルファで原発の新設計画を進めました。しかし、この計画も建設費用の高騰し現在135万kW級UK-ABWR2基で3兆円と見込まれています。資金の融資をめぐっては当初、日本政府が出資する国際協力銀行や日本政策投資銀行、融資の保証をめぐっては日本貿易保険などの名前が挙がり、原水禁は反対の立場を表明し、NGO組織の多くと署名などのとりくみをしました。英国政府は、2兆円超の資金融資への債務保証には積極的な一方、電力買取価格の高値設定や日立子会社(ホライズン社)への5割超出資(日立が子会社を非連結化する条件)には及び腰で、2019年中の着工判断には暗雲が立ちこめています。英国内では、南西部ヒンクリーポイントでの原発新設が進められていますが、費用高騰から電気料金への影響が懸念されています。日立製作所は、巨額の費用を電気料金で回収するとして、英政府に採算のとれる電力の買い取り保証を要求しているとされています。英国では、耐用年数が過ぎた原発の廃炉によって電力不足が懸念されていると言いますが、風力・太陽光など再エネ拡大の余地は多く、市場論理からはコストのかかる原発電力は排除される方向にあり、更なる紆余曲折が予想されます。
また、三菱重工とフラマトム(旧アレバ)の共同出資会社「アトメア」が開発した110万kW級新型原発「アトメア1」を、トルコのシノップに4基建設するとした計画から伊藤忠商事が撤退しました。この建設計画では、建設費が当初見積もりの約220億ドル(約2.2兆円)から2倍以上に膨張し、10%強の出資を計画していた伊藤忠商事は、発電による利益では建設費用の回収は困難と判断したと考えます。トルコ政府も資金調達には後ろ向きで、事業継続はきわめて困難と考えられます。
「アトメア1」は、ベトナムやヨルダンでも建設が構想されましたが頓挫しており、きびしい局面に立たされています。安全対策などによる原発建設コストの増大は、原発を市場経済から閉め出す方向に動いています。東芝、日立製作所、三菱重工の日本を代表する原発メーカーが、政府方針とともに原発建設に拘泥するならば、企業の将来に暗雲をもたらすだけでなく、日英両国民に原子力災害と経済的負担のリスクを高めることは必至です。
■エネルギー政策の転換を
福島第一原発事故を受けて、ドイツやイタリアなどに続きスイスでも脱原発の方針が決定されました。アジアでも蔡英文(ツァイ・インウェン)政権の台湾で2017年1月に2025年までに原発をなくす「脱原発法」が成立しました。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、大統領就任後、古里原発で演説し、福島原発事故に触れて「韓国はもはや地震安全地帯ではない。地震は原発の安全性に致命的だ」として、「脱原発に進む」と宣言しました。韓国では、運転40年目の古里1号機の廃炉や35年目の月城原発1号機の早期廃炉が決定しています。
欧米では、風力発電や太陽光・熱発電・バイオマスなど再生可能エネルギーが急速に普及して発電コストも下がっています。米国では安価なシェールガスによるLPG発電も加わって、電力コストは低下しています。そのような状況において、原発は市場における価格競争に勝つことができず、閉鎖が相次いでいます。原発大国のフランスでさえ、再生可能エネルギーのコストダウンによって大手電力会社の経営状態が悪化し、原子力産業複合企業・旧アレバの経営危機とも相まって、原発比率の75%から50%への低減を政策の中心に据えざるを得なくなっています。
世界のエネルギーは、原発ゼロ・再生可能エネルギー推進へと向かい、地球温暖化防止のパリ協定がこの流れを促進しています。日本でも、福島原発事故以降、原発が稼働しなくても電力は不足しませんでした。脱原発、脱炭素、再生可能エネルギーへの転換は、机上の論理ではなく現実的なものとなっています。
日本における太陽光・風力・バイオマス・地熱・潮力その他再生可能エネルギーのポテンシャルは非常に高いものです。その可能性を引き出す鍵は、私たち自身にあるといっていいでしょう。原発と石炭火力をベースロード電源と位置付ける「エネルギー基本計画」、2030年の電源構成(kWh)に占める原子力の割合を20%~22%、石炭火力の割合を26%とする「エネルギーミックス」を抜本的に改めさせ、脱原発、脱炭素、安全・安心の将来にわたる再生可能なエネルギー社会をつくり出すのは、私たちの力に任されています。2016年4月からは一般の家庭でも電気を選べる、電力の「小売り自由化」が始まり、2020年4月には発送電が分離されます。もっとも、「所有分離」ではなく別会社化して情報を遮断する「法的分離」に留まるため、送配電網の公平で中立的な管理運営がなされる保証はありません。
送配電網を独占する大手電力会社は、太陽光発電事業者(新電力)などからの再生可能エネルギーによる電力の接続を5月の連休など電力需要の低い時期には消費電力を上回る可能性があるという理由で拒否し、経済産業省と一体になって「接続可能量」を導入したのです。これは廃炉になっていない原発が、福島原発事故前の平均設備利用率で動くと仮定し、その電力量を「ベース電力」と仮定してあらかじめ枠取りする、それを基本に30日分の出力制御を条件として再生可能エネルギーの「接続可能量」を決め、これを超えた再生可能エネルギーの接続には無制限・無補償の出力制御を行うというものです。これを手始めに、送電線容量でも原発再稼働を前提に枠取りをして「送電網に空き容量がない」として再生可能エネルギーの送電線接続を拒否したり、送電線への接続点を自由に設定させず接続点までの高額の送配電網工事費の負担を求めたりするなど、新電力には様々な制限を課し、原発からの電力を優先する体勢を作っています。再生可能エネルギーの優先接続・優先給電など脱原発へのエネルギー政策の転換を掲げ、「法的分離」ではあっても中立的な送電網管理で再生可能エネルギーを2017年に35%程度へ高めたドイツなどの先進事例に学ぶことが必要です。
「脱原発」を進めるためには、再生可能エネルギー比率を高めていくことが重要です。閣内不一致がありながら7月3日に強行的に閣議決定されたとはいうものの、原発と石炭火力をベースロード電源として優先させる第5次エネルギー基本計画の抜本的な変更を求め、脱原発・反核運動と消費者運動を結びつけて粘り強く闘い、脱原発・再エネ優先のエネルギー基本計画へ転換させていかねばなりません。消費者の再生可能エネルギーによる電力選択を進めていくために、再生可能エネルギーに課された原発優先のさまざまな制約を撤廃し、再生可能エネルギーを一層普及させて、発電コストを大幅に引き下げていく政策が重要です。電力の電源構成の情報開示と新電力業者に課せられる高い託送料金など様々な制約を排除することも重要です。地方自治体では、再生可能エネルギー推進条例の制定などを通じて、新電力業者への優遇措置も行われていますし、地域での省電力発電へのとりくみもすすめられています。公立学校では太陽光パネルの設置なども少しずつ行われ、太陽光によって必要電力の約半分を賄おうとする大手コンビニストアのとりくみも報告されています。
再生可能エネルギー推進によってこそ、地域の経済が新しく豊かになります。地域分散型のエネルギーのあり方は、地方再生を謳う政府の政策とともにあるものであり、政府が地方再生を真剣に考えるなら、再生可能エネルギーの推進はその一端を担うものであること考えていかなくてはなりません。地域からのエネルギー革命が、日本の将来をつくり出すと言えます。
■重要性を増す「さようなら原発1000万人アクション」と原発ゼロ基本法案
福島原発事故以来、「さようなら原発1000万人アクション」は、作家の大江健三郎さんやルポライターの鎌田慧さんらの呼びかけで結成され、全国で「脱原発」の運動に粘り強くとりくんできた人々と市民をつなぐ運動として発展し、運動を進める中で「脱原発」を市民社会に根付かせてきました。引き続き各地の運動を結び付け、大きな脱原発の運動の原動力ともなっており、この運動を盛り上げることが重要です。大会後の9月17日にも東京・代々木公園で「さようなら原発全国集会」が開催されます。全国からの大きな結集つくりだすことによって、大衆的な脱原発の機運を作りあげることが必要です。
2017年10月の総選挙で誕生した立憲民主党が、市民との対話を各地で重ねながら、運転中の原発を速やかに停止し法施行後5年以内の廃炉を決定する、使用済み核燃料については再処理を行わないことなどを盛り込んだ「原発ゼロ基本法案」をとりまとめ、3月9日、社民・共産・自由の3党に呼びかけ、衆議院に共同提出しました。小泉元首相や細川元首相が顧問を勤める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」も「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を1月10日に発表しています。今後、国会での真摯な議論の展開を期待するとともに脱原発にむけた国民運動に結びつけていくことが重要です。
■ヒバクシャ・核被害者への援護と連帯を
① 急がれるヒバクシャ課題の解決
ヒ口シマ・ナガサキの被爆者の高齢化(平均年齢 82.06歳/2018年3月31日)は進み、その子どもである被爆二世も高齢の域に入りつつあります。 限られた時間の中で、被爆の実相を次世代につなげる課題、原爆症認定の課題、被爆体験者の課題、在外被爆者の課題、被曝二世・三世の課題などの解決が急がれています。援護対策の充実と国家の責任を求めることは急務です。
核兵器禁止条約は「第6条(被害者支援と環境改善)」の項で「締約各国は、核兵器の使用や実験に伴って悪影響を受けた管轄下の個人に関し、国際人道・人権法に従って、医療ケアやリハビリ、心理的な支援を含め、年齢や性別に適した支援を十分に提供。社会的、経済的な面についても同様。」と定めており、核兵器禁止条約を早期に発効させ、核の使用・開発に伴うすべてのヒバクシャに健康管理・医療保証・生活保障の権利を拡大させ、実施させることが重要です。
②原爆症認定の拡大を、後ろ向きは許されない
原爆症認定問題は、政府の被爆者援護への後ろ向きの姿勢から、裁判闘争を中心にとりくまれてきました。粘り強い被爆者のとりくみと裁判での勝利の結果として、被爆者団体と政府は解決にむけて合意し、「基金」の創設や日本被団協などとの「定期協議」が確認され、課題の前進が図られました。しかし、一方で、2013年に改定された「新しい審査の方針」に従って展開されている審査の中においても、多くの審査滞留や認定却下が生み出され、いまだ改善を要する課題が残されています。司法の場で国の認定却下の判断を取り消す判決が相次いで出されています。原爆の被害を過少に評価し、被爆者支援に後ろ向きの政府の姿勢は、裁判のたびに断罪されてきました。被曝70年を超えて、今もなお続く政府の姿勢を正していく必要があります。
③差別なき在外被爆者の援護を
戦後、祖国へ帰還した在外被爆者への援護は、日本の戦争責任・戦後責任と重なり、戦後70年を過ぎても重要な課題です。国内の被爆者同様、在外被爆者も高齢化して、その課題解決は急がれます。これまで在外被爆者の援護の水準は、国内に居住する被爆者の水準からは、大きな格差をつけられていました。原水禁は、「被爆者はどこにいても被爆者」であるとして、差別のない援護の実現に向けて被爆者支援にとりくみ、また在外被爆者自身裁判闘争にとりくんできました。在外被爆者を縛っていた厚生労働省公衆衛生局長の402号通達(被爆者手帳を交付されていても、外国に出国や居住した場合は、健康管理手当の受給権が失効する)は、その違法性が最高裁でも認められました。しかし依然として国内と国外の援護の水準には格差が残りましたが、2015年9月8日の最高裁において「在外被爆者にも医療給付がなされるべき」との判決が下され、制度上の不平等は大幅に改善しました。しかし、被爆したにもかかわらず、国外に移住したことにより被爆を証明する証人が見つけられない、国交がないことで在朝被爆者には実質的に適用されていないなど、いまだ課題が残されています。
在朝被爆者は、2007年段階で384人が確認され、被爆者支援の道を探ってきましたが、緊迫する日朝関係の中で困難な状況が続いています。しかし、米朝間、南北間での対話が進む中で、日朝交渉の進展も期待され、戦争責任・戦後責任とともに在朝被爆者問題の前進に向けたとりくみも急がれています。今後とも粘り強くとりくみを進めなくてはなりません。
④被爆体験者に被爆者援護法の適用を
被爆者援護法の枠外に置かれている被爆体験者は、自ら課題の解決を司法の場に求め、裁判闘争を続けています。
被爆体験者とは、被爆者と認められる12km圏内において、実際に原爆によって被災し放射線による被害を受けたにも関わらず、場所が「長崎市民」でなかったことを理由に、被爆者援護法に基づく被爆者と認められない人たちのことです。2007年と2011年初被爆体験者訴訟が提訴され、現在福岡高裁と最高裁で審理が続いています。裁判支援の継続と政府・政党への働きかけを強化しなくてはなりません。裁判の論点のひとつに「内部被曝を含む低線量被曝の影響」がありますが、これまでの原爆認定訴訟などでは、内部被曝も低線量外部被曝も、その影響を過小に評価されてきました。これは福島原発事故の被曝被害の過小評価にもつながるもので、決して許してはなりません。被爆地域の拡大と被爆者認定、被害の実態に見合った援護の強化を訴える必要があります。
残念ながら裁判では、2017年12月に最高裁で1人の入市被爆の審理が不十分として長崎地裁に差し戻され、残り387人は敗訴が確定しました。しかし被爆体験者はあきらめることなく再度長崎地裁に提訴し争っています。福岡地裁の控訴審の闘いとともに被爆体験者の権利確立に向けて支援を強化していかなければなりません。
⑤被爆二世・三世の人権確立を求める新たな運動への支援を
被爆者援護法の枠外に置かれている被爆二世・三世は、父母や祖父母の原爆被爆による放射線の遺伝的影響を否定できないなか、「健康不安」や「健康被害」、社会的偏見や差別などの人権侵害の状態に置かれています。被爆二世の全国組織である「全国被爆二世団体連絡協議会(全国被爆二世協)」は、このような被爆二世問題の解決のために、国家補償と被爆二世への適用を明記した「被爆者援護法」の改正、すなわち被爆二世・三世を「5号被爆者」として被爆者援護法に位置づけ援護法を適用することを国(厚生労働省)や国会に対して要求してきました。被爆二世の援護対策が進まない状況の中で、全国被爆二世協では、国連人権理事会の場で被爆二世の人権保障を日本政府に求める国際的運動をスタートするとともに、被爆二世に対する国家賠償を求め、2017年2月17日に広島地裁、2月20日には長崎地裁に「原爆被爆二世の援護を求める集団訴訟」を起こしました。この訴訟を通して、問題の所在を社会的に明らかにし、被爆二世を援護の対象とする国による立法的措置の契機とすることをめざしています。また、2018年4月末~5月初めにジュネーヴで開催されたNPT再検討会議準備委員会に全国被爆二世協として代表を派遣し、核廃絶と二世の人権保障を訴えるサイドイベントを開催するなど、自らも核被害者として、国際的な反核運動の中での役割を果たすための活動を開始しました。原水禁として、被爆二世の人権の確立に向けて、国連人権理事会へ向けたとりくみや集団訴訟への支援などを行っていくことが重要であり、被爆二世・三世の課題解決を、原水禁運動の重要な課題として押し上げていくことが求められています。
⑥次世代へ被爆体験の継承を
長崎から始まり全国に拡がってきた「高校生平和大使」の活動は、20年を超え、外務省からも「ユース非核特使」に認定されるようになりました。これまで集めた100万筆を超える署名はジュネーブの国連欧州本部に永久保存されるなど国連からも高く評価されています。高校生平和大使派遣委員会が全国各地で組織され、支援する会も積極的に動きだしています。これまで高校生平和大使の運動に参加したOG・OBで組織する高校生平和大使の会も発足し、平和大使の運動が「ノーベル賞」にノミネートされています。若い世代の主体的で積極的な、核兵器禁止・平和をめざすとりくみをさらに広げて、被爆体験を学び、継承し、広範な運動へと育てなければなりません。
継承には親世代と体験を共有してきた被爆二世・三世の役割も重要です。また、これまで学校でとりくまれてきた様々な平和教育を継続し、発展させなければなりません。地域や職場でも同様に、被爆の実相を学び、被爆体験を継承していくとりくみが求められます。憲法9条の「改正」も政治課題として浮上する中、被爆体験の継承は、平和の尊さを実感する大きな力となるに違いありません。このような課題も認識し、原水禁運動として積極的にとりくむことが重要です。
⑦被曝労働者との連帯を
福島原発事故によって、 住民の被ばくとともに、収束作業や除染作業にあたる労働者の被曝問題は大きな課題です。 高線量の中での作業や劣悪な労働環境がもたらす被曝は、労働者の健康に多くの有害な影響を与えるものです。原発労働者も事故の被害者です。「安心・安全」に働くための労働者の権利の確立は、事故の収束作業などの基本に据えなければなりません。福島原発に限らず、多くの原発・原子力施設に共通するものです。電離則・省令の改定で2016年4月から労働者の緊急時被曝限度は100mSvから250mSvへ引き上げられ、「通常被ばく限度を超えた者の線量管理(大臣指針事項)」の中で生涯被曝線量1000mSvが導入されてしまいました。労働者の大量の被曝を容認する電離則・省令・指針の改定撤回を求め、緊急時被曝状況や現存被曝状況を前提に労働者や公衆に一層の被曝を強要するICRP2007年勧告のさらなる導入の動きに反対し、線量引き下げを求めて努力しなければなりません。
収束作業や除染作業に働く労働者の大部分は、高次の下請け企業による雇用です。被曝だけでなく、危険手当てのピン撥ね、パワハラ、等々、労働者の基本的な権利が侵害される事例が日常的に起きています。また、外国人労働者や外国人技能実習生による被曝労働の問題が出ています。安全や権利が確保されずに、使い捨ての労働力としてしか見なされていないことは、大きな問題です。不当な労働を許さないことが必要です。
原発労働者をはじめ全ての被ばく労働者に健康管理手帳を交付し、個人被ばく線量を記録し、定期的に健康診断を実施し労働者の健康を管理することが重要です。法の遵守を含め、とりくみが必要となっています。
被曝労働者の権利の拡大や被ばく住民の健康管理や補償の課題については、当事者の協力が重要であり、支援する団体とともに、とりくみの強化をはからなくてはなりません。
⑧世界の核被害者との連帯を
私たちは、世界に広がる核被害者との連携も原水禁運動の重要な課題として位置づけ、長年とりくんできました。核の「軍事利用」や「商業利用」で生まれるあらゆる国のあらゆる核被害者の援護・連帯を追求してきました。アメリカやフランスの核実験による被害者やウラン採掘現場での被害者、チェルノブイリの原発事故での被害者など、これまで多くの核被害者との連携を深めてきました。今大会では、チェルノブイリの原発事故の被害者を招き、その実態を知り、現状を考え、交流を図ります。
放射能汚染とヒバクを押し付けられた核被害者の多くが、核のレイシズムともいわれる差別と人権抑圧の下で、政治から切り捨てられている実態を訴えてきました。私たちが進める原水禁運動では、今後とも、核被害者の人権と補償の確立のためにきびしい現実の中で闘っている住民や労働者と連帯し、共にとりくみをすすめることが求められています。
核社会のもたらす甚大な被害は、あらためて原水禁運動が訴える「核と人類は共存できない」ことを強く再認識させるものです。これ以上の核被害の拡大を、決して許してはなりません。原水禁運動は、差別と抑圧の中におかれている核被害者との援護・連帯をさらに強めていきます。
■日本政府に核兵器禁止条約の参加を求めよう
原水禁「運動はいかなる国の核兵器の製造、貯蔵、実験、使用、拡散にも反対し、その完全禁止と全廃をめざすものであり、どんな小さなことでも原水爆の禁止に役立つ政策および行動を支持し、どんな小さな原水爆の脅威をおよぼす政策および行動に反対」(1965年2月1日原水禁結成大会で確認された「原水爆禁止運動の基本原則」)してきました。核兵器禁止条約の採択によって、核兵器禁止から核兵器廃絶への道が開かれようとしています。日本政府に核兵器禁止条約への署名・批准を求め、この道を推し進めることは原水禁運動の責務です。
日本被団協が提起し、私たちも協力してきた「ヒロシマ・ナガサキの被害者が訴える核兵器廃絶国際署名」のとりくみを続けていきます。「核兵器禁止条約」が国連で採択された中で、日本政府に条約を批准するよう求めるとともに、核兵器保有国の条約への参加を促し、ヒバクシャと国民の悲願である「核兵器禁止条約」の実効化を図らなくてはなりません。
■おわりに-安倍政権の命をないがしろにする核政策の暴走を止めよう
朝鮮の度重なる核実験やミサイル発射、米トランプ政権の「力による平和」「核戦力の強化」などによって、世界終末時計は2018年1月25日に残り2分を指しました。水爆実験が繰り返されていた1953年と並び最短となっています。米国とソ連(当時)が部分的核実験禁止条約を結んだ1963年は、12分前に戻っています。核兵器禁止条約が発効しようとしている今、私たちは、対話と協調を基本に、核兵器廃絶へ確実な一歩を踏み出さなくてはなりません。「核先制不使用宣言」「即時警戒体勢の解除」「核兵器の更新の禁止」など、核廃絶、平和へのとりくみに、やるべき事は多くあります。
「核と人類は共存できない」原水禁運動が発してきたこの言葉は、私たちの命の尊厳から生まれてくるものです。暴走する安倍政権は、特定秘密保護法・戦争法(安全保障関連法)・共謀罪法・働き方改革・IR法の制定、そして原因究明もおざなりに相次ぐ原発再稼動と、私たちの命をないがしろにする政策をすすめてきました。安倍政権が当初から主張していた「戦後レジュームからの脱却」は、平和と民主主義、基本的人権を叩き潰すものなのです。平和と民主主義、基本的人権の日本国憲法の理念の下、これまでの原水禁運動の正鵠に胸を張り、私たちの道をゆるぎない信念を持って進もうではありませんか。あらためて「核と人類は共存できない」ことを確認しましょう。原水禁運動は、安倍政権の核抑止による安全保障政策と原発推進政策に、最後まで闘い続けます。
ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ、ノーモア・フクシマ、ノーモア・ウォー、ノーモア・ヒバクシャ