原子力機構・内部被ばく・細胞を断ち切るα線
大洗町成田町の日本原子力研究開発機構(原子力機構)大洗研究開発センターで6日に発生した事故は7日、国内最悪の内部被ばく事故に発展した。作業員から2万2千ベクレルの放射性物質が検出され、「半端な被ばく量ではない」(原子力規制委員会)事態に。専門家も「初めて見る数字」と驚いた。原子力機構の安全対策が十分だったかについても今後の焦点になる。
プルトニウムは人体に影響が大きいアルファ線を出し、体内に取り込まれると肺や骨などに長くとどまる。そのため、「ゼロか1かの厳格な管理が求められる」(原子力機構)。
5人の治療に当たっている量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所(千葉市、放医研)の明石真言執行役は7日、50代の男性職員の肺で2万2千ベクレルの放射性物質が測定されたことについて「知る限り始めて見る数字だ」と驚きの表情を浮かべた。
被ばくで直ちに健康被害が出ることは考えにくいと指摘しながらも、「長期的には発がんリスクが上がるのが今までの科学的な知見の中ではっきりしている」と話した。10年以上の長期間観察する必要があるとの認識も示した。
放医研によると、7日正午ごろに緊急被ばく医療施設で5人を受け入れ、うち4人の皮膚には放射性物質が付いていたため、除染した。現在は5人全員に体内に取り込まれた放射性物質を体外に排出させる「キレート剤」の投与などをしているという。
当面は薬剤の投与を続けながら排せつ物や肺内のデータ分析を進め、核種の特定や正確な被ばく線量評価を行う。並行して今後の治療方針も検討する。明石執行役は5人とも疲労の色が濃いと明かし、「早く検査を終えて休んでもらい、不安を取り除くことも重要」と話した。
作業員は6日夜、大洗町の事故現場から東海村村松の原子力機構核燃料サイクル工学研究所に移送され、内部被ばく検査を受けた。
茨城新聞の取材に対し、5人の検査を担当した同研究所の百瀬琢麿副所長は7日、「推定被ばく線量は決して小さくない値。予想以上の数字だった」と説明。
その上で、短時間で大量の放射線を外部被ばくした1999年の東海村臨界事故と今回の違いを強調し、「すぐに健康影響が出るとは考えていないが、長期的には発がんなどの影響が出ることを想定しないといけない」と語った。
50代の男性職員の今後50年間の積算の推定被ばく線量は12シーベルトで、1日当たりの平均に換算すると3ミリシーベルトになる。最初の1年間の被ばく線量は1・1シーベルトと推定され、その後、被ばく線量は時間の経過とともに徐々に低下していくとされる。
体内へ総量36万ベクレルか
原子力機構の作業員被ばく事故
日本原子力研究開発機構「大洗研究開発センター」(茨城県大洗町)の作業員被ばく事故で、肺から2万2千ベクレルの放射性物質プルトニウムが計測された50代の男性職員について、機構がこの計測値を基に、男性職員が体内に取り込んだ放射性物質の総量を36万ベクレルと推計したことが8日、機構への取材で分かった。
前例のない高レベルの内部被ばくをしており、機構などは、長期的な健康影響につながるかどうか調べる。
機構によると、男性職員は、肺で2万2千ベクレルが測定されていることから、放射性物質は鼻から気管支を経て、血液に入り込み、内臓や骨にも取り込まれた可能性があると推定される。