2016年10月27日
石川県知事 谷本正憲 様
さよなら!志賀原発ネットワーク
共同代表 岩淵 正明 新明 宏 中垣 たか子
申 入 書
去る9月28日、志賀原子力発電所2号機で原子炉建屋に6.6トンもの雨水が流入し漏電・地絡事故が発生しました。これは、流入した雨水量がもっと多ければ重要度の高い安全機能を喪失していた可能性も否定できないと指摘されている重大な事故でした。ところが北陸電力は、10月7日になって9月分のマンスリーレポートで初めてこの事実を公表し、しかも「事故・故障等の情報」としてではなく、法令および安全協定には該当しないという理由で「機器の修理等の運転保守に関する情報」として記載しました。
しかし、地震に加えて津波の襲来により過酷事故に発展した福島原発事故の教訓を踏まえて制定された新規制基準において、溢水対策は重要なポイントの一つです。もし重要施設が被水することの重大性を見過ごしたとすれば、原発の危険性についての認識をまったく欠いており、福島事故から何ら学んでいないことになり、これでは「北陸電力には原発運転の資格なし」と言わざるを得ません。
10月3日に県の原子力環境安全管理協議会が開催されましたが、この事故についての報告はありませんでした。ところがその翌日、10月4日には原子力規制庁において、北陸電力の東京支社原子力・技術チーム統括(課長)らが「志賀原発2号機建屋への雨水の流入による地絡警報の発生について」という件名で説明を行なっているのですから、遅くともこの時点では重大事故であるとの認識を持てたはずです。にもかかわらずマンスリーレポートに掲載しただけで、10月19日の原子力規制委員会で議題に取り上げられ各委員から事故発生後の対応等々について相当に厳しく指摘されるまで、北陸電力は事故についての記者会見を行なっていません。北陸電力のホームページにもこの事故に関する記事はまったくなく、21日に原子力規制庁から報告書を提出するよう指示を受けた件が、24日になってようやく掲載されました。
これでは、1999年6月に臨界事故を起こしながら2007年3月に発覚するまで隠蔽し続けた北陸電力の隠蔽体質が、いまも変わっていないことになります。臨界事故が発覚した後、「隠さない風土と安全文化の構築」というスローガンを掲げて社内改革に取り組み再発防止策を講じて、県はその成果を確認して再稼働を認めたはずでした。しかし実態は「隠さない風土」も「安全文化」も看板だけ、さらに事故後の対応を見れば「原発を安全に管理・運転する能力」にも疑問があることになります。
そこで、以下、石川県に要請いたします。
要 請 事 項
1.県はこの事故について、北陸電力からいつ、どのような報告を受けたのか、その後、どう対応したのか等、事故発生から現在までの経緯、および県としての認識について明らかにすること。
2.北陸電力に対して、現在申請中の志賀原発2号機に関する適合性審査の申請取り下げを求めること。
3.今回の事故の教訓をふまえ「安全協定」および「連絡基準に係る覚書」の見直しを行なうこと。
4.県の原子力安全専門委員会を開催し、企業体質の問題も含めた事故原因の徹底究明、および県の対応についての徹底的な検証を求めること。
雨水流入による漏電事故 全電源喪失の危機!事件
事故発生~その後の対応について経過まとめ
9月28日 8:55 トレンチ排水ポンプ異常(排水槽満水)警報発生
13:04 漏電警報器動作、警報発生(その後リセット)
13:09 警報5回発生(以降継続) これで過酷事故発生時に対応できるか?
(途中経過は省略、詳細は10/19規制委員会の資料を参照)
16:02 非常用電気品(C)室への水の流入停止 最初の警報から7時間後
9月29日 県、志賀町の担当者、志賀原発に立入り調査(志賀原子力規制事務所の規制官も)
(北電からの通報は 前日(9/28)にあった)
10月3日 県の「原子力安全管理協議会」開催、この事故に関する報告は全くなし
10月4日 北電 東京支社 原子力・技術チーム統括(課長)、原子力規制庁にて
安全規制管理官らと面談し、「志賀原子力発電所2号機原子炉建屋への雨水の
流入による地絡警報の発生」について説明
10月7日 北電、9月分のマンスリーレポート公表 「機器の修理等の運転保守に関する情」
としてレポートの最後に記載、 重大性の認識なし? 小さく見せようとした?
10月8日 事故発生について、マンスリーレポートの記載に基づくマスコミ報道
10月14日 北電 東京支社 副支社長ほか3名、原子力規制庁にて 再度、説明
10月19日 第37回「原子力規制委委員会」開催、議題として取り上げられ【重要度の高
い安全機能を喪失していた可能性もある】と各委員が問題点を厳しく指摘
〃 「原子力規制委委員会」臨時会議、北電 金井社長、西野副社長、規制委へ
10月20日 各紙で大きく報道される。見出し「重大事態」、「機能喪失の恐れあった」等
10月21日 規制庁より、報告書を提出するように指示
10月24日 北電、この事故に関連して、はじめてホームページに掲載
タイトルは「志賀原子力発電所2号機における雨水流入事象に対する原子力
規制庁からの指示について」
★他の原発で このような事故の例はない
柏崎刈羽および福島第一で、地震後に雨水侵入の例あり。いずれも、地震による建屋の損傷箇所から水が入り大きな問題となったが、他には今回の志賀のような例はない。
◆雨水の大量流入による漏電・地絡事故に関する問題点◆
(1)安管協では報告なし
・北電が報告しなかっただけでなく、県、志賀町、志賀原子力規制事務所(規制庁の現地
事務補)は、いずれも事故発生の当日(9/28)に知っていたにもかかわらず、北電に報告
を求めず。
→ 県は事故の重大性を認識できなかったのか?
県は北電の事故隠し・情報隠しに加担したのではないか?
これでは、いったい何のための安管協なのか?
(2)事故の重大性について、認識を欠いているのではないか
・もし運転中なら重大事故の可能性があり、結果オーライで済むことではない。
・原子力規制委員会で委員より「由々しき事態」という指摘も。
・そもそも、原発の危険性について認識が甘いのではないか。
「放射能が漏れなければ事故ではない」という対応では、あまりに不安
(3)事故原因、あまりにお粗末・低次元
・当日、志賀町内で道路冠水や浸水などの被害はなし。
・電力会社は、電気に関してプロ中のプロではないのか?その電力会社が自社の発電施設
で雨水浸入による漏電事故とは・・・ 「想定外」では済まされない。
・今回の事故で、コンクリートのひび割れが放置されていたことが判明したが、他にも
問題があるのではないか。
(4)事故対応が遅い
・最初の警報(8:55)から漏電警報(13:04)まで4時間以上、雨水流入を止め
るまでに7時間、 これで過酷事故発生の緊急時に対応できるのか?
(5)北電の体質
・1999年6月に極めて重大な事故・臨界事故を起こしながら2007年3月まで隠蔽し続け
た前歴あり
・その後、「隠さない風土と安全文化の構築」とスローガンを掲げていたが、実態は?
・事故を起こすたびに、問題を矮小化し、小手先の「再発防止策」を打ち出すことの繰り
返しで、体質変わっていないのではないか。
(6)県の対応
・県の危機管理能力、安全意識や安全文化も問われている。
・県の対応に問題はなかったか、しっかり検証を。
<総括>
9.28警報後4時間放置、雨水が原子炉建屋を浸水漏電6.6tも。あと30tで全電源喪失メルトダウン。北陸電力に原発を運転する資格も能力も、責任感、緊張感もない。監督できない石川県と規制事務所。運転禁止!運営主体の交替!関係者の処分を!緩んだ企業に原発を任せるのはカジノより危険だ。