対県交渉の経過と県側の回答および県幹部の発言内容
「中島浩・県土木部長に対する申し入れ」(4月10日)
Q.「大東亜聖戦大碑」の設置を許可したことは誤りであったことを認め、設置許可を速やかに取り消すこと。
A.都市公園法にのっとって慎重に判断した結果であり、許可を取り消す考えはない。
聖戦という文字は事前に承知していたが、そういった碑文の内容は個人の思想・信条にかかわるもので、
許可する際の判断材料にはならない。
Q.許可を取り消した上で、県の責任において「聖戦大碑」を撤去させること。
A.取り消す考えがないので、撤去もあり得ない。
Q.1995年の国会決議ならびに村山首相談話に示された歴史認識を踏まえ、中国や韓国をはじめとする
近隣諸国との平和友好、親善に配慮した行政に努めること。
A.これまでもそうしてきたつもりだし、これからも同様である。
「公開質問状の内容と県側による回答」(中島土木部長名で文書回答、6月8日付け)
Q.「大東亜戦争」や「聖戦」、「八紘為宇」という言葉を県はどのように理解しているのか。
A.大東亜戦争などの言葉は、先の大戦当時、我が国で使われていた言葉と理解している。
Q.今日的な政府の統一見解(1995年の村山談話)をどのように考えているのか。
A.政府の統一見解に対し、県は同様の認識を持つものと理解している。
Q.今回の設置許可は、中国や韓国との友好関係を著しく阻害するものであると思うが、県はどのように考えるのか。
A.設置された記念碑の碑名等の内容が、国会決議や政府見解の歴史認識と齟齬しており、許可した県も同様な歴史認識であるとの誤解を与えたとすれば遺憾である。
Q.「ひめゆり学徒隊」、「鉄血勤皇隊」の無断刻銘が発覚し、沖縄で大問題に発展したところであるが、設置を許可した当事者として、この問題は全く無関係であると考えているのか。
A.無断刻銘については、コメントする立場にない。
Q.都市公園法に基づいて許可を出す場合、碑文の内容等は判断材料にならないと一旦答弁しておきながら、一定の制限事項として「公共の福祉」をあげたが、これは明らかに矛盾しているのではないか。
A.都市公園法の目的が、公共の福祉の増進に資することを説明したものである。
Q.設置者の側は、昨年8月4日に公園内で「完成記念式典」を催し、かつ毎年恒例の行事として「大東亜聖戦祭」を開くと言っているが、これは同法第十条の二第四項(公衆の都市公園の利用に著しい支障をおよぼすおそれのある行為の禁止)に反しているのではないか。
A.同項の規定は、国の設置に係る都市公園に適用されるものであり、県の設置した都市公園には適用されないものである。
Q.日付のない申請書を受理したのはなぜか。
A.日付が記入されていない申請書を受理したことについては、当日申請者本人が直接持参しており、その日を申請の日と確認した上で、同日付けで受理したものである。
Q.NHKの報道によれば、「この碑は宗教色を完全に否定できない」との見解を県が示したということだが、これは設置許可の取り消しにつながる問題ではないのか。
A.設置許可申請者は、記念碑(大東亜聖戦大碑)を建立する目的の委員会であり、設置許可の取消原因にはあたらないと考える。
Q.碑名以外の碑文は申請書に記載されていないが、それを確認せずに許可したのはなぜか。また、これは同法第十一条の 一項の三(偽りその他不正な手段により許可を受けた場合は許可を取り消すことができる)に該当するもので、許可の取り消しにあたるのではないか。
A.碑名等に表されている歴史認識等の内容の確認は、都市公園法の審査の範囲にない。
Q.同法の規定によれば、この大碑は「教養施設」であるとの解釈だが、何をもって教養というのか。
A.本件は、都市公園法第二条第二項第六号に規定する教養施設で、都市公園施行令第四条第五項に具体的に例示されている中の記念碑に該当する。
Q.建立委員会の側は、県による設置許可が出される以前の段階で、すでに地鎮祭・工事着工を開始しているが、この行為は違法かつ許可の取り消しに該当するものではないのか。
A.事前着工があったかどうかについては、当時、承知していない。なお、事前着工が事実であるとするならば、その行為は遺憾である。
Q.先の三月議会において土木部長は、「大東亜聖戦大碑は来園者の追憶のよすが」と答弁したが、あの碑を見て何をどのように追憶するというのか。
A.碑が設置されている本多の森公園は、石川護国神社や戦没者を慰霊する類の記念碑等が設置されており、碑は周辺の環境等と密接、顕著なゆかりを持つものであり、来園者が碑を眺めることにより、様々な思いをめぐらすことができる。そういった追憶のよすがになるという理解をしている。
Q.都市公園「本多の森公園」の維持・管理に関する年間予算はいくらか。
A.本多の森公園の維持管理費は、金沢市中心部の県営都市公園(中央公園等)を一括して予算を計上しており、122,873千円の中に含まれている。
「県幹部による主な公式発言」
●谷本正憲・石川県知事
「碑文の聖戦は政府見解とは明らかに違う。個人的には行き過ぎた表現だと思う」、「都市公園法上問題ないので、許可せざるを得なかった」、「政府見解と異なるものが将来 も建立されることになれば、県の本意ではない」(いずれも記者会見で)
●杉本勇寿・石川県副知事
「碑文の内容に関しては、国会決議や政府見解と異なるわけで、そういう意味で県民 の皆さんに誤解を与えたことはお詫びしたい」、「設置許可そのものについては、都市公 園法にもとづくもので何ら問題はない。ただし、碑文の内容については都市公園内に存 在するものとして必ずしも適当ではない」、「たまたま護国神社の側から県に対して、無 償貸与してきたが社用の管理面からいっても、この際返していただきたいという連絡が 5月28日にあった」、「県として特に反対する根拠もないので、神社庁からの正式な連絡を待って適正に判断したいと考えている」、「そもそもの出発は、県立球場に入るための通路としてたまたま確保したもの。それが自動継続で今日まで続いてきたわけだが、すでに野球場もなく、本来の目的が失われた以上、この際返すのが適当と判断した」、「私も戦争犠牲者の一人で、父親も護国神社に奉られている。だからといって戦争を美化するつもりもないし、戦争の悲惨さは皆さん以上に理解しているつもりだ」、「多くの浄財を集めて建てられた碑であることも事実。戦争に対する考え方はいろいろあり、護国神社の中にあるものであれば特に問題はないと考える」(いずれも、県民の会の申し入れに答えて)
「(設置を)許可した責任は永遠に負い続けねばならない」(社民党国会調査団に対して)