防衛大学校いじめ国賠訴訟、東京高裁不当判決に抗議する声明

東京高裁不当判決に対し抗議する声明

2025年12月8日 防衛大学校いじめ国賠訴訟弁護団

1(判決の結論)

2013年4月に防衛大学校に入学した元学生が、 上級生から学生間指導に名を借りた理不尽な仕打ちや嫌がらせを受けるなどのいじめを受けたことで適応障害やうつ病、さらにはPTSDまでも発症し、言葉を発することが困難になったことについて、 国及び上級生1名を被告として損害賠償を求めていた訴訟において、東京高等裁判所第11民事部(三木素子裁判長)は、2025年12月8日、元学生の控訴をいずれも棄却する判決を言い渡した。

2(判決の理由)

判決は、上級生からの元学生に対する不法行為、及び、教官らの安全配慮義務違反のいずれについても、いじめとは認められないとの理由で、違法性を否定している。しかしながら、上級生からの元学生に対する不法行為には、暴行などの有形力を行使したものや当時の教官らも不適切な指導と評価するものがあった。

また、元学生が2年生の時に上級生からの不適切な指導を原因として過呼吸を発症 したことを、教官らは認識していたにもかかわらず、 加害者である上級生に対して不 十分な指導しか行わなかったことで、 元学生が3年生に進級した直後にも同じ上級生 から不適切な指導を受けて、同じように過呼吸を発症することを防止できなかったと いう出来事があった。

元学生に対する理不尽な仕打ちや不適切な指導をいじめと評価しないとしても、こ れらの行為の違法性は当然に認められるべきであったが、判決はこれらの行為につい ても、いじめではないとの理由で違法性を否定したのである。

3 (最後に)

防衛大学校では、上級生が下級生を指導する学生間指導が広く行われているが、 学 生間指導では指導に名を借りた理不尽な仕打ちや嫌がらせが蔓延しており、いじめの 温床となっている。しかも、学生間指導として理不尽な仕打ちや嫌がらせを受けた下 級生が上級生になると、今度は自分が受けた理不尽な仕打ちや嫌がらせを下級生に対 して繰り返すという、負の連鎖が絶えることなく続いている。

防衛大学校は、 幹部自衛官の養成機関である。 幹部自衛官の養成課程において、 人 権意識が欠落した理不尽な仕打ちや嫌がらせがまかり通る現状を許すのでは、 自衛隊 全体において人権意識を涵養し、ハラスメントをはじめとした人権侵害を防止、根絶 することは到底実現できない。

東京高裁の判決は、 防衛大学校における規律の乱れや不祥事の横行に目をつぶり、 被害者の救済を拒否する極めて不当な判決である。 弁護団としては、このような不当 な判決に断固として抗議するものである。

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