政府が、いよいよ核燃料サイクル政策の破綻を認めざるを得ない時がきた。核燃料サイクル政策とは、使用済燃料のウランやプルトニウムを化学処理(再処理)して繰り返し使用するエネルギー政策であり、その政策の中核に位置付けられるのが再処理技術、青森県六ケ所村に建設中の再処理工場である。
日本原燃株式会社(原燃)は、8月29日、『再処理施設・廃棄物管理施設・MOX燃料加工施設のしゅん工時期見直しに伴う工事計画の変更届出』を発表した。
変更の概要は、①再処理施設および廃棄物管理施設の工事計画において、完成目標を「2024年度上期のできるだけ早期」から「2026年度中」への変更、②MOX燃料加工施設の工事計画において、完成目標を「2024年度上期」から「2027年度中」へ変更とする2点である。
今回、発表された青森県六ケ所村で建設中の再処理工場の完成目標の延期は27回目となり、あわせてMOX燃料加工工場の完工延期も8回目となった。
原燃側は、完工延期の要因として原子力規制委員会からの耐震評価のほか、追加工事などを挙げているが、1989年に事業許可を申請し、1997年に完成する計画から幾度もトラブルを繰り返し、工事着工から30年を過ぎても実現せず、いまだ確立されない核燃料サイクル全体への信頼は完全に失墜している。
また原燃の増田宏尚社長が記者会見で「過去の設計に固執しすぎた」「見通しの立て方が悪かった」と発言したが、30年以上かけていまだ設計管理が出来ていない計画を受け入れること自体が無理難題であり、決して市民の理解を得られるものでは無い。
核燃料サイクル政策は、兆単位で投入してきた税金と電力料金を無駄にし、技術的にも極めて困難であり、現実性を欠いたものである。そもそも建設計画当初に稼働していた40基の原子力発電所という前提自体が大きく変わっている。
原水禁はこれまで、原子力政策自体が破綻しており、抜本的な政策の見直しが急務であることを訴えてきた。そして、原子力政策を盾に「核」の問題にしがみつく姿勢、核燃料サイクル政策を継続するために確立されていない技術に税金を注ぎ込む政府の迷走は、無責任そのものであると考える。
原燃が示す「楽観的な独自の見解」をもとにした工事計画を鵜呑みにすることなく、政府は、核燃料サイクルの破綻を認め、今すぐ撤退の道筋を示すべきである。そして、いまこそ破綻した原子力政策のもとで稼働する原発を即時停止させることを、原水禁は強く求める。
2024年8月30日
原水爆禁止日本国民会議
共同議長 川野浩一
金子哲夫
染 裕