ロシアのCTBT批准撤回とイスラエルの閣僚による原爆投下容認発言どちらも許さず、改めて核廃絶を強く訴える(原水禁声明)
① 11月2日、ロシアが包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回した。ロシアは2000年にCTBTを批准し、これまで核実験禁止という規範を守る姿勢を示してきた。CTBT発効には発効要件国(44ヶ国)すべての批准が必要とされる。ロシアは発効要件国であり、署名・批准国の中で最大の核兵器保有国である。そのロシアがCTBTの批准を撤回したことは、国際社会の核軍縮・核不拡散を進める大きな流れに逆行し、CTBTの発効に向けたこれまでの努力に反することになる。
② 11月6日、イスラエルの閣僚であるアミハイ・エリヤフ エルサレム問題・遺産相が地元ラジオ局「コル・バラマ」のインタビューに答え、パレスチナ自治区ガザに原爆を投下して「皆殺し」にする手法を容認するかとの質問に対し、「それも一つの選択肢だ」と発言した。ベンヤミン・ネタニヤフ首相はこの発言について、「現実からかけ離れている」とし、「イスラエルは、非戦闘員に被害を出さないという、国際法の高い基準のもとに行動している」と説明したうえで、エリヤフ問題・遺産相の閣議への出席を凍結することを決めた。イスラエルは核を保有しているとされているが、否定も肯定もしない政策をこれまで貫いてきた。長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)によると、イスラエルは2023年3月時点で、90発の核弾頭を保有していると推定されている。アラブ連盟のアハメド・アブルゲイド事務局長は、原爆投下を一つの選択肢だとした発言を受け、「イスラエルが核兵器を保有している」証しだとし、そのことが「公然の秘密」になっていると指摘したうえで、原爆投下を容認する発言は「イスラエル人がパレスチナ人に抱いている人種差別的な見方を裏付けている」と非難した。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の長期化と、パレスチナ自治区ガザでの戦闘状況の悪化が招く、国際社会全体の不安定さと危うさは増大する一方である。その結果として核兵器開発が容認され、核兵器使用・原爆投下の結果を招くことなど、万が一にもあってはならない。核兵器使用・原爆投下の未来には、決して進んではならないのだ。
これまで広島・長崎の被爆の実相を国際社会で訴え続けてきた被爆者が、「核兵器の非人道性」の国際理解を促してきた。この積み重ねがこれまで、広島・長崎を最後に、戦争での核兵器使用を阻み、現在までの歴史を紡いできた。人の命よりも尊いものなどない、そして人の命の尊厳を守ることが最も重要である。それが原水禁運動の原点であり、重要な理念だ。
そのことからも、国際社会における核兵器使用や原爆投下容認に向かうすべての動きに対して、私たちは明確に「NO」をつきつける。もう二度と、被爆の惨状が繰り返されるようなことなど、あってはならない。ロシアやイスラエルのように、核兵器使用を敵対する国への威嚇に用いることを、許すことはできない。
原水禁は改めて、核廃絶を訴える市民社会の声が重要であり、その声の高まりによって、世界全体での核廃絶と平和への大きな流れを作り出していくことを決意する。「核と人類は共存できない」、この理念の国際理解を深めていく原水禁運動の、着実な前進こそが今、最も重要であると考える。
2023年11月14日
原水爆禁止日本国民会議
共同議長 川野 浩一
金子 哲夫
藤本 泰成