ウクライナへの武器輸出の拡大を危惧する
日本政府は武器ではなく人道援助の拡充を
岸田文雄首相は 5 月 21 日、ウクライナのゼレンスキー大統領と広島で会談し、自衛
隊車両を提供するなどウクライナ支援を拡充すると約束しました。同日、防衛省が公表
した「ウクライナへの装備品等の提供について」によれば、1/2t トラック、高機動車、資
材運搬車を合計100台規模で提供するとしています。高機動車は不整地走行性能が高く、被弾しても走行できるタイヤ特性を持つ車両です。後方支援だけではなく、戦場から戦場への兵員輸送、重火器、弾薬輸送などの戦闘支援に日本の「防衛装備品」が利用されることになります。これまでもウクライナに対しては、2022 年 3 月以来、防弾チョッキ、ヘルメット、小型ドローンなどが提供されてきましたが、軍用車両が現に紛争をしている当事国に提供されるのは初めてのことです。
そもそも日本政府は、アジア・太平洋戦争後半世紀以上に渡り、武器の輸出を原則禁じていました。1967 年 4 月、当時の佐藤栄作首相が国会で、①共産国、②国連決議により武器等の輸出の禁止がされている国、③国際紛争中の当事国またはそのおそれのある国に武器輸出してはならないと答弁して以降、日本政府の運用基準として「武器輸出三原則」が定着していました。しかし、安倍晋三元首相が 2014 年 4 月に、武器の輸出入を原則認める「防衛装備移転三原則」の方針を決定して以降、2015 年には武器等の技術開発の助成を目的とした「安全保障技術研究推進制度」がはじまり、国際武器見本市の開催や出展など、武器輸出入を念頭に置いた政府の動きが加速しました。日本学術会議の会員候補 6 人の任命を菅義偉首相(当時)が拒否したのは、同会議が武器技術の開発に反対し、安全保障技術研究推進制度に抗議の意思を示したことが理由と思われます。
その後、武器等を他国と共同開発し、武器輸出入をさらに拡大していくこと、また規
模が縮小していた国内の軍需産業を支援するために、岸田首相が 2022 年 12 月、安保三文書でこの防衛装備移転三原則の運用指針の見直しを検討すると明言しています。見直しにむけた協議が続く政府与党内では、殺傷能力のある装備品を輸出できるようにする意向すら示されています。
敵基地攻撃能力の保有と軍事費の大幅拡大の上に進められる武器輸出の緩和は、断じて許されません。ウクライナ支援を口実にしての「幅広い防衛装備品の移転」つまるところ攻撃的な兵器の輸出は、平和憲法をないがしろにし、国際紛争を助長させるものでしかありません。
平和フォーラムは、日本が「死の商人」となることを許しません。岸田政権が進める武
器輸出の緩和を阻み、ウクライナへの人道支援の拡充を政府に強く求めるとりくみを力強くすすめていきます。
2023 年 5 月 25 日
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 藤本泰成
共同代表 勝島一博