金沢市庁舎前広場訴訟控訴審判決を受けて
私たち石川県憲法を守る会は、2017年5月3日憲法記念日の護憲集会を金沢市庁舎前広場で行いたいと申請しました。しかし、金沢市は、これを不許可としました。護憲集会は、特定の主義主張にもとづく示威行為であり、庁舎の管理に支障を及ぼすおそれがあるとの判断でした。
憲法を守ろうという主張が、条例上の根拠を持たない単なる庁内内規に過ぎない管理規則によって、事前検閲・規制の対象とされることへの深い危機意識から本訴訟を提起し、1審判決を得ましたが、憲法上の権利である表現の自由の重要性を全く考慮せず、本件集会で発信されるメッセージに賛同しているかのような外観が形成され、被告の地方公共団体としての中立性を欠くのではないかという疑念が生ずるおそれがあるとか、被告地方公共団体としての中立性に対する疑念を抱いた者からは、被告に対する抗議行動等が想定され、被告の事務又は事業の円滑な遂行が妨げられるおそれがあるから、庁舎の管理上の支障があるなどと根拠となる事実もないのに認定されました。このような判断を受け入れられるはずがなく、直ちに控訴をしました。
憲法第21条の表現・集会の自由は、基本的人権の根幹です。人々が集会を通じて意思を表明することは、民主的な自治を成り立たせる上で極めて重要な権利であり、最大限尊重されなければなりません。権力者の圧政に抗議し、個人の尊厳と自由を求めて止むに止まれぬ声を上げ、身の危険を顧みず闘った幾多の人々の結集の舞台は広場でした。広場はあくまでも市民のものです。
しかるに、本日、名古屋高等裁判所金沢支部は、憲法上の重要な権利である表現の自由が侵害されているという状況に対して、1審と同じく、権利の重要性やその意義を一顧だにせず、中立性への疑念や、ありもしない抗議行動を想定する等の空想を重ね、市民の権利を擁護することに目をつむった判決を出しました。
抗議の意を表明するとともに、私たちは、速やかに上告し、市民の表現の自由を守る適正な判断がなされるよう、闘いを進める所存です。
2021(令和3)年9月8日
金沢市庁舎前広場訴訟原告団及び弁護団一同