福井県知事、県内で乾式貯蔵を検討! 高校生大使が「ノーベル平和賞」対象に

福井県知事、県内乾式貯蔵検討と ―崩れる再処理正当化論

 関西電力の3つの原子力発電所を抱える福井県の西川一誠知事は、2019年3月7日、知事選(4月7日投開票)に向けた政策発表の記者会見で、原子力発電所の使用済み燃料を空冷式の貯蔵容器に入れて敷地内を含む県内で保管する可能性も検討すると明らかにしました。これは、原発の貯蔵プールの空き容量不足のため再処理をするしかないとの議論の根拠を崩すものです。
再処理推進派は、2005年の原子力政策大綱策定時以来、次のような論法で再処理の正当化を図ってきました。「まもなく各地の原発の使用済み燃料プールが満杯になる。原発現地の市町村や県は使用済み燃料の地元外搬出を求めていて、地元での乾式貯蔵を認めてくれない。搬出先は六ヶ所村再処理工場の受け入れプールしかない。これも満杯。早く工場を動かし、燃料を再処理してこのプールに空きを作るしかない。でないと原発のプールが満杯になって原発は運転停止になる。だから工場の早期運転を!」福井県は、1990年代末以来、使用済み燃料は県外に搬出するよう求めてきました。西川知事も再三、県外搬出を主張してきました。

関電の県外搬出約束と知事選
2017年11月27日に知事が大飯原発3、4号機の再稼働に同意した際、県外保管施設について「2018年中に具体的な計画地点を示す」と関電は約束しています。20年に候補地を確保、30年頃操業という計画です。ところが、2018年12月16日に関電は、計画地点提示断念との方針を知事に伝えます。20年に確保の計画には変わりないとのことです。同月28日の定例記者会見で知事は、原発停止などの罰則を与える必要ないとの考えを示しました。
知事の3月7日発表の『元気ビジョン2019』には「使用済燃料の中間貯蔵施設の立地地点の確定を国・事業者に強く要請。中間貯蔵施設搬出までの安全な保管方法について地元市町とともに検討」とあります。知事による2015年3月16日の『福井ふるさと元気宣言』は、「使用済燃料の中間貯蔵施設の県外立地を国・事業者に強く求める」とだけ述べていました。この変化をもたらした背景として、上述の関西電力の提示断念の事態、対立候補の杉本達治前副知事の方針、そして、原発受け入れ自治体の首長らの発言が挙げられます。
記者会見で知事は「(県外に)中間貯蔵施設ができるまでの若干の期間、一時保管するという議論も並行して起こりうる。乾式貯蔵を含め、そういう議論はする」と説明しています。西川知事の下で副知事を務めた杉本氏は「物事を決めつけてやりきることがいいこととは思わない。(乾式など)何が安全か、立地、準立地自治体を含めてよく話をしながら進めていく」との考えを示していました(福井新聞2018年12月7日)。
選挙に重要な影響力を持つ立地自治体首長の昨年の発言は次のようなものです(明記以外は福井新聞から)。
野瀬豊高浜町長
「県内での貯蔵を俎上(そじょう)に載せてもいいのかなと思う」(11月30日)。
中塚寛おおい町長
「町を預かるものとして、地域住民の安全確保が第一」「(乾式貯蔵は)選択肢の一つであることは間違いない」(8月29日)「住民の安心安全を考えたとき、乾式貯蔵も一つの選択肢となり得る」(12月14日。中日新聞)。
山口治太郎美浜町長
「(乾式貯蔵を)前向きにとらえて練る必要がある」「乾式貯蔵の方が発電所の安全性が高まるという話なので」(12月4日)。(美浜町では山口町長が勇退し、2月19日の選挙で戸嶋秀樹前副町長が「後継者」として無投票当選。)
また、日本原子力発電の敦賀原発を抱える敦賀市の渕上隆信市長(全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)会長)は、今年1月4日の記者会見で「安全性を高める点で乾式貯蔵もあり得る、との議論になってくるのではないか…規制委員長が安全と明確に発言したので、敷地内での乾式貯蔵の導入に対してはあまりナーバスにならなくてもよくなってきた」と述べています。

「大きな議論が必要」と原子力規制員会委員長
福井新聞は、原子力規制委員会の更田豊志委員長が2018年11月28日の定例会見で、「サイト内で貯留されているケースにおいては、使用済燃料プールの貯蔵量が多くなるよりは…むしろ乾式キャスクでの貯蔵を望みたい」と改めて述べたことが最近の首長らの発言の背景にあると指摘しています。規制委の2012年9月の発足以来、当時の田中俊一委員長と更田委員長代理は、たびたび、プール貯蔵より乾式貯蔵の方が安全だとし、5年から10年ほどプールで冷やした燃料は乾式貯蔵に移すべきだと発言してきました。これは、2013年の福島第一原発の事故の教訓だと言います。4号機のプールでは火災が心配されたが、同原発の乾式貯蔵施設(日本で導入された二つの乾式貯蔵施設一つ)の方は津波に襲われながら容器自体や燃料は健全だったからとの説明です。規制委は、このような考え方から、乾式貯蔵促進のために、3月13日、申請手続きを簡素化し、建屋なしの貯蔵も認める規則改正案を正式決定しました。
福島事故以前に乾式貯蔵を導入していたもう一つの原発は東海第二原発。事故後原子力規制委に申請をしているのは以下の通りです。中部電力2015年1月26日申請(新基準の下での建屋なし貯蔵検討中)、四国電力伊方原発(2018年5月25日申請)、九州電力玄海原発(2019年1月22日申請)。
更田現委員長は、2月13日の記者会見で、再稼働の現状からすると六ヶ所再処理工場は無用な施設になるのではないかと問われ、「大きな議論が必要」と答えています。田中元委員長は、3月1日都内での講演会で、再処理政策について「個人的にはやらない方がよい」、本格稼働すれば保有量増大と指摘しました。2021年の再処理工場竣工予定を控え大きな議論を巻き起こせるでしょうか。
(「核情報」主宰田窪雅文)

※この核燃政策に対する提案が原因なのか、4月7日の福井県知事選は、対立候補である自民党候補の圧勝となった。西川氏は、元福島県知事の佐藤氏同様、政治的に抹殺されたのか。

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《投稿コーナー》高校生平和大使にノーベル平和賞を!ノルウェーで再アピール

 3月3~7日、高校生平和大使3名が、広島・長崎両市長の親書を携え、ノーベル平和賞のノミネートに向けてのアピールと現地高校生世代との交流を目的として、2018年に引き続きノルウェーを訪問しました。参加した3名の報告文をお伝えします。

「スピード・実行力のあるオスロ市を見習って」 広島・英数学館高等学校3年 船井木奈美
私は2018年に続き、2回目のノルウェー・オスロ市の訪問となった。1年ぶりのオスロ市は、大きな変化を遂げていた。
オスロ市は環境問題に立ち向かうべく、車の交通量の大幅な削減を行い、EUから2019年度の欧州グリーン首都賞を受賞していた。訪問中の3月5日、ノルウェー政府が核兵器禁止条約に署名しないことを表明した。これに対しオスロ市長は、「政府が条約に署名するよう、オスロ市が政府に圧力をかけていく」と、私たちに決意を語った。ノルウェーも日本と同様、「核の傘」国の立場にあるが、オスロ市の核兵器廃絶に向けた意志は強固に見えた。オスロ市は核兵器問題をはじめとする数々の問題に対し、常に意欲的に取り組んでいる。オスロ市のスピード・実行力を是非とも見習いたい。
オスロ商業高校やNGOで現地高校生と交流し、被爆の実相や私たちの活動を紹介した。生徒からの質問で、核兵器の実在数や保有国、「核の傘」の言葉の意味を聞かれ、日本の若者と同じく、核兵器にまつわる知識の乏しさが問題だと感じた。しかし、短時間の交流の中で「どうしたら高校生平和大使になれるの?」「学校で高校生1万人署名を集めて日本に送るね!」という声が上がり、核兵器廃絶への関心の高まりを目の当たりにし、私達の活動の意義を再確認できた。ノルウェー訪問により、高校生平和大使のネットワークがまた一つ構築され、核兵器廃絶のメッセージが世界に広がる予感がした。


左からオスロ市のマリアンネ・ボルゲン市長、
中村さん、 山口さん、船井さん

「再訪」 長崎・活水高等学校3年 中村涼香
今回は日本と同じ核の傘にあるノルウェーが国会で核兵器禁止条約に署名しないことを決定したタイミングで訪問することとなった。そういった意味でもノルウェー外務省を含む各所で軍縮大使などに向けて広島と長崎の被爆の実相や核兵器廃絶の必要性を訴えることができたのは非常に意義のあることであったと思う。また2度目の訪問となった今回、私達の活動が少しずつノルウェーの地でも認知されていることを実感した。今回初めて訪問した在ノルウェー日本国大使館を除き全ての訪問先で英語を用いて自分たちの言葉で直接話すことでより多くのことを伝えることができた。現在、SNSなど世界中が一瞬でつながることのできる媒体が数多く存在する中で直接話すことがいかに重要でその影響力が大きいかを感じた。オスロ商業高校やNGOを通して現地の中学生と交流した時には自分たちができることは何か、どうしたら活動に参加できるのかという質問も多く、私達と同じ核兵器の廃絶を願う仲間を増やすことができた。また私自身訪問を通して学んだことも多く、まだまだ若者が知るべきことは多いことを実感した。そういったことも含め今回の訪問は全てこの活動の次のステップにつながる重要なものであった。私が今回の訪問で見て聞いて学んだことは全て次の高校生にしっかりと引き継いでいきたいと思う。

「若い力」 長崎・活水高等学校1年 山口雪乃
現地では、核兵器廃絶を訴えると同時に自分たちの活動をアピールしてきましたが、交流をしたオスロ商業高校やNGO団体の皆さんの平和活動に対する関心の高さにとても驚きました。どの学生と話をしても、日本の学生と交流をするときよりも活発な話し合いをすることができ、自分自身の意識も以前よりさらに高められたように思います。特に、NGO団体NoToNuclearWeaponsの若者との交流では高校生1万人署名活動の広がりとこれからの可能性を感じました。私たちのこれまでの活動を説明すると、とても関心を持ったようで、「ノルウェーの若者には非核化に向けて何ができるか、日本とノルウェーがNPT条約に署名していない事をどう思うか、ノルウェーと日本の若者が協力できることは何か」など、多くの質問を受けました。私たちが説明したことに対して自分たちもそれを受けて何か行動を起こそうとする姿勢に強く心を打たれ、日本の同世代の若者にも彼らのように積極的に平和活動に取り組む若者がいるという事を伝えたいと思いました。交流した5人の学生は署名活動の存在を知り、自分たちも署名をしたい、学校でも署名を呼びかけて平和のために何かしたい」と非常に協力的でした。これからもこうした若者との交流を通じて署名活動を世界中に広げることで平和活動に関心をもつ若者を増やせるのではないかと期待しています。平和な未来を担う私たち若者が互いに協力しあって、それを実現することが私の願いです。

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