2018年12月19日
防衛計画の大綱および中期防衛力整備計画の閣議決定に抗議する
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 藤本泰成
12月18日、国家安全保障会議及び閣議において、2019年度以降の「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と「中期防衛力整備計画(中期防)」が決定された。従来の陸海空自衛隊の一体的運用をめざし、サイバー防衛部隊や宇宙領域専門部隊の新たな領域を加え「多次元統合防衛力」の構築をめざすとした。その上で、「いずも」型護衛艦の改修と「短距離離陸垂直離着陸機(STOVL機:F35Bが予定される)」の導入により事実上の空母化と敵基地攻撃を可能にする長距離巡行ミサイルの導入などを決定した。これは、防衛白書に記載する基本理念「わが国は、憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならない」「わが国は自衛のための必要最小限を超えて、他国に脅威を与えるような強大な軍事力を保持しない」を大きく逸脱するもので許されない。政府がことあるごとに表明してきた「憲法9条は攻撃型空母などを保持することを許さない」とする見解と立場を異にしている。
今回閣議決定された「防衛計画の大綱」は、専守防衛の枠を大きく超え「日米統合軍」を現実化させるものだ。安全保障関連法が想定する、同盟国が攻撃された場合に自国への攻撃とみなして反撃する権利、いわゆる「集団的自衛権」が、日米両軍の一体的運用で行使される状況がつくられようとしている。
決定された中期防では、現行(2014年度~2018年度)より2兆8000億円増の27兆4700億円と過去最大となった。ステルス戦闘機F35の105機の追加取得やイージスアショアなどのミサイル防衛システムなど新規購入装備品の多くが米国製となっている。トランプ政権の要求を丸呑みした感のある防衛大綱・中期防は、借金が1000兆円を超えるきびしい日本の財政状況を反映しているのか。社会保障費などの義務的経費の増大の中で、防衛費だけを聖域としてはならない。
防衛省は、平和フォーラムとの交渉の中で「いずも型護衛艦の改修とSTOVL機の導入は、航空能力の柔軟性を増し、太平洋上において活発化する他国の空母の展開などへの対応に資する」とし、中国軍を意識した発言を行っている。防衛大綱は、中国は、世界一流の軍隊を建設するとして透明性を欠いたまま国防費を増加させているとして、その脅威を強調している。中国政府は、直ちに「日本のやり方は日中関係の改善と発展のためにならない」として、きびしく批判している。朝鮮民主主義人民共和国やロシアの脅威にも言及する日本の防衛のあり方は、憲法の平和主義と平和外交の方針から大きく逸脱し、周辺諸国かとの関係悪化に繋がりかねない。
今回の防衛力整備のあり方は、どれだけの議論に付されたのだろうか。日本の将来のあり方に、決定的影響を与える防衛大綱に議論が尽くされた状況はない。国民的な議論が必要と考える。平和フォーラムは、憲法の平和主義に基づき、東アジア諸国との対話と協調を基本に、共通の安全保障を求めて今後も多面的にとりくんでいくことを表明し、閣議決定された防衛大綱と中期防のあり方に反対し行動する。
以上