『火華・第24号』(3月1日発行)1937年(昭和12年)鶴彬28歳
「火華集」
・タマ除けを産めよ殖やせよ勲章をやろう
・この安日給で妻をもたねばクビになるばかり
・これからどうして食ってゆこうかと新婚の夜を寝つかれず
・免税になるまで生めば飢死が待ち
・葬列めいた花嫁花婿への列へ手をあげるヒットラー
・種豚にされる独逸の女たち
・ユダヤの血を絶てば狂犬の血が残るばかり
・ソビヱットを奪へと缺食の子をふやし
■『火華・26号』(5月1日発行)
「近事片々」
・増税の春を死ねない嘆願書
・ゼネストに入る全線に花見客
・人民に問へばゼネラルストライキ
・アゴヒモをかけ増給を言へぬなり
・祭政一致と言ふてゆるさぬメーデー祭
・5月1日の太陽がない日本の労働者
・『病欠』で来たハイキングのメーデー歌
・空白の頁がつゞくメーデー史
・議事堂でみたされぬ飢がむらがる観音堂
・フジヤマとサクラの国の餓死ニュース
・エノケンの笑ひにつゞく暗い明日
・男らは貧しくひとり,花嫁映画みるばかり
・「ワリビキ」へ貧しさ負ふて列ぶ顔
・クビになる恋と知りつゝする若さ
・殴られる鞭を軍馬は背負わされ
・妾飼ふほど賽銭がありあまり
・闇に咲く人妻米のないあした
・バイブルの背皮にされる羊の死
・泥棒と知れ花魁の恋やぶれ
・喰ふだけのくらしに遠いダイヤの値
・税金のあがったゞけを酒の水
『火華・27号』(6月1日発行)
「すとらいき」
・メーデーのない日本のストライキ
・要求を蹴りアゴヒモがたのみなり
・歯車で噛まれた指で書く指令
・翻る時を待ってる組合旗
・生きてゐるな解雇通知の束がくる
・裏切りをしろと病気の妻の顔
・失業の眼にスカップの募集札
・スカップが増えた工場のすゝけむり
・缶詰にする暴力団を雇ひ入れ
・今からでもおそくないといふ裏切りの勧告書
・総検(総検挙)にダラ幹だけがのこされる
・弾圧がいやならとれといふ歩増し
・くらしには足らぬ歩増しで売る争議
・裏切りの甲斐なく病気の妻が死に
・釈放を解雇通知が待ってゐた
・ダラ幹が争議を売ればあがる株
『川柳人・278号』(7月15日発行)
「蟻食ひ」
・正直に働く蟻を食ふけもの
・蟻たべた腹のへるまで寝るいびき
・蟻食ひの糞殺された蟻ばかり
・蟻食ひの舌がとどかぬ地下の蟻
・蟻の巣を掘る蟻食ひの爪とがれ
・やがて墓穴となる蟻の巣を掘る蟻食ひ
・巣に籠もる蟻にたくわえ尽きてくる
・たべものが尽き穴を押し出る蟻の牙
・どうせ死ぬ蟻で格闘に身を賭ける
・蟻食ひを噛み殺したまゝ死んだ蟻
※蟻食は「資本家」,蟻は「労働者」の比喩でしょう。「蟻たべた腹のへるまで寝るいびき」とはすごい表現です。
■『川柳人・279号』(8月15日発行)
・パンを追ふ群衆となって金魚血走ってる
・工夫等の汗へすぎてく避暑列車
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