トランプ氏は「制裁の効果がなければ第2段階に移らなければならない」と、軍事行動を強く示唆

米、核資金封じ「最大の制裁」 対北朝鮮 海上密輸を阻止

2018/2/24 23:29
  【ワシントン=永沢毅】米政府は23日、北朝鮮による核・ミサイル開発の資金源を封じるため、中国など9カ国・地域にある海運会社(27社)、船舶(28隻)、1個人の計56を独自の制裁対象に加えた。国連の制裁を逃れ、海上で石炭や石油を積み替える密輸行為を厳しく取り締まる。実効性を高めるには中ロの協力がカギを握る。

 トランプ大統領は23日、ワシントン近郊での講演で「過去最大の制裁だ」と誇った。ムニューシン財務長官は、56の対象数や制裁が与える影響は過去最大だと説明した。

米独自制裁のポイントは「北朝鮮が現時点で使っているすべての船舶」(ムニューシン氏)を対象に加えた点だ。対象の拠点や関係地は北朝鮮、中国、シンガポール、香港、台湾、パナマ、マーシャル諸島、タンザニア、コモロと広範囲。制裁対象は米国内の資産を凍結し、米ドル建ての国際取引をできなくする。船は米国との取引停止や入港禁止の措置をとる。

米財務省によると、28隻のうち北朝鮮船籍は19隻。多くは石油タンカーで、海上でロシア船から千トンを超える石油を受け取った船も含む。それ以外の9隻は北朝鮮から石炭を輸出したり、海上で船を横付けして積み替える「瀬取り」で石油を北朝鮮の船に供給したりした。米財務省は石炭が核・ミサイル開発の資金源とみる。制裁対象となった船は数億円単位の石炭を一度に運べるという。

米国はこれらの船が船名や固有の番号などを偽装し、制裁を逃れようとしていると主張。昨年12月に撮影された北朝鮮船は大連母港の「KUS」と存在しない船名、中国の別船の識別番号を記した。米国は北朝鮮の手口を公表し、関係国と取り締まり強化策を協議している。ロイター通信は23日、米政府が沿岸警備隊をアジア太平洋に派遣し、密輸を阻止する検討に入ったと報じた。

国連北朝鮮制裁委員会で委員を務めた古川勝久氏は「関係国がこれらの船舶をしっかり監視すれば海上での瀬取りは難しくなる。実効性のある措置だが、数年早くてもよかった」と指摘した。

米国連代表部は23日、安保理の北朝鮮制裁委員会に石炭などの密輸に関わる船舶等の追加制裁リストを提出した。詳細は明らかにしていないが、各理事国の異論がなければ週明けにも安保理の制裁対象に加える。

中ロの協力も欠かせない。ムニューシン氏は23日の記者会見で「ロシアと中国は明らかに北朝鮮と貿易してきた2カ国だ」と指摘した。国連によると、北朝鮮産の石炭をロシア産や中国産と偽装して、各国に輸出する手口が横行している。「北朝鮮と第三国との取引を立証するには確たる証拠が必要」(古川氏)として、監視だけにとどまらず公海上で瀬取りする船舶を検査する必要があるとの見方も多い。

中国外務省は24日夜に「米国の独自制裁に断固反対する」との談話を発表し、米国に抗議したと明らかにした。中国企業に国連決議違反があれば法にのっとり厳しく処分するとも強調した。

米国の制裁公表は韓国・平昌冬季五輪の閉会式を間近に控えた時期。トランプ政権は北朝鮮との対話の窓口を閉ざさない構えをみせつつ、高まる南北融和ムードのなかで北朝鮮に接近する韓国にもクギを刺した。トランプ氏は23日の記者会見で「制裁の効果がなければ第2段階に移らなければならない」とし、軍事行動も辞さない強い姿勢を示した。

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