住宅地襲う恐怖 爆発音、黒煙と炎(その1) 女児、間一髪で脱出 近くのこども園「伏せて」
ヘリコプターの墜落現場から約200メートル離れた認定こども園「大立寺幼稚園・子どもの家保育園」の副園長、平尾道代さん(50)は「バーン」という大きな音を聞き、慌てて外に飛び出すと、プロペラが空中で飛び散るのを目撃した。「落ちる」と思い、気付くと園児に向かって「伏せて」と叫んでいた。外にいた3組ほどの園児と保護者が落ちる瞬間を見ていたという。
間もなくして、ヘリが墜落した川口貴士さん(35)方の2階建て住宅の屋根が崩れ落ち、火柱が上がるのが見えた。平尾さんは近くの職員に「119番して」と声を掛け、迎えの時間と重なっていたため保護者に「園児は安全です。迎えには来ないようにしてください」と緊急メールを送った。当時園内には0~5歳児約60人がいた。
その後、平尾さんが墜落現場近くに駆けつけると、川口さんが「娘が軽いけがをしているけれど、大したことない。家はどがんでもいいけん、家族が無事だったのが何よりだ」と話していた。
川口さん方は夫婦と中学1年の長男、小学5年の長女(11)の4人暮らしで、当時家には長女だけがいた。ヘリが落ちたのは東側だが、長女は西側の部屋にいたため軽いけがですんだらしい。近所の住人によると、長女は川口さん方のすぐ隣にあり、一部焼損した祖父母宅から飛び出してきた祖母(69)と一緒に逃げ出した。祖母に抱きしめられた長女はパニック状態で泣いていたという。
上空で爆発音を響かせた後、部品を落下させながら墜落するヘリコプターを目撃した住民は他にも多く、実際に現場の西約200メートルの水田には無数の破片が散らばっていた。
現場から西約800メートル付近のガソリンスタンドで勤務中だった八谷(はちや)充信さん(32)は「『ドンッ』という鈍い音がして、車が電柱に衝突した事故かなと思った。上空で機体を見つけた時は、すでにメインローターが外れた状態で、機体が頭部から落ちていった。爆発した部品もぱらぱらと散らばっていった」と証言する。当時、風が少し吹いていて、曇り空だったが、機体の色も分かるぐらい明るかったという。
住宅地への墜落事故で、多くの住民は米軍ヘリの墜落や不時着などが相次ぐ沖縄の現状に思いをはせた。現場から約300メートルに住む女性(65)は「沖縄のヘリの部品が落ちた事故を連想した。体が震えるような気持ちだった」。
現場から約200メートルに住む会社員、野口一(はじめ)さん(55)は「歯科医に行こうとして家を出た時にドーンという音がして炎が20メートルぐらい上がり、黒い煙が見えた。普段からヘリコプターが飛んでいて、うるさかったが、できるなら、もう上空を通ってほしくない」と訴えた。【池田美欧、宗岡敬介、宮崎隆】
今年度4件目 自衛隊死亡墜落事故
自衛隊機を巡っては、17年5月に北海道北斗市の山中に陸自の連絡偵察機が墜落して乗員4人が死亡するなど、今年度に入ってから死亡事故が既に3件起きており、今回で4件目となる。
最近の主な自衛隊機事故
2005年 4月 新潟県阿賀町の山中に空自の救難捜索機が墜落し乗員4人死亡
07年 3月 鹿児島県徳之島で陸自の輸送ヘリコプターが墜落し乗員4人死亡
09年12月 長崎市沖で海自の哨戒ヘリが墜落し乗員2人死亡
12年 4月 青森県の陸奥湾で海自の哨戒ヘリが護衛艦に接触し墜落し乗員1人死亡
15年 2月 宮崎県えびの市の山中に海自の練習用ヘリが墜落し乗員3人死亡
16年 4月 鹿児島県鹿屋市の山中に空自の飛行点検機が墜落し乗員6人死亡
17年 5月 北海道北斗市の山中に陸自の連絡偵察機が墜落し乗員4人死亡
8月 山口県岩国市の海自岩国航空基地で輸送ヘリが横転し乗員4人負傷
8月 青森県沖で海自の哨戒ヘリが墜落し乗員3人のうち2人死亡、1人行方不明
10月 浜松市の航空自衛隊浜松基地の沖合で空自の救難ヘリコプターが墜落し乗員4人のうち3人死亡、1人行方不明