11.26「志賀原発」再稼働を前提とした非現実的で実効性のない原子力防災訓練に強く抗議する

抗議声明

2017年11月26日(日)

 本日午前8時から志賀原発の事故を想定した石川県原子力防災訓練が実施された。東京電力福島第一原発事故後6回目となる防災訓練である。この間、私たちは再稼働前提の訓練に抗議すると同時に、福島原発事故の教訓を踏まえた実効性ある訓練の実施を求めてきた。                                                                                              石川県はじめ関係自治体は、あろうことか今回も再稼働を前提とし、しかも非現実的で実効性のない訓練を実施した。強く抗議し、以下、問題点を指摘する。

1. 再稼働ではなく「運転停止」の現実に向き合え

(1)志賀再稼働への地ならし

志賀原発直下の断層について、有識者会合は全会一致で活動層との評価書をまとめた。にもかかわらず北陸電力は志賀再稼働の方針をまったく変えていない。こうした中、県が繰り返し再稼働前提の訓練を繰り返すことは、北電の再稼働路線を容認し、あるいは期待しているかのようなメッセージを県民に送ることになる。「敷地内断層の問題の決着が最優先」との谷本知事の発言とも矛盾するものである。

(2)向き合うべきは停止中の原発の危険性

志賀原発は来年度も稼働しないことが確定している。しかし、停止しているとはいえ、使用済燃料貯蔵プールの過酷事故のリスクは変わらない。実際、昨年は雨水大量流入事故が発生し、原子力規制委員会の田中俊一委員長(当時)から冷却機能喪失で「重大事故につながる危険性があった」という深刻な指摘を受けている。雨水流入は論外だが、地震などの自然災害、さらには安倍総理が声高に叫ぶミサイル着弾の危険性や武装集団によるテロ攻撃、サイバーテロなど核燃料が存在する限り、住民は過酷事故のリスクにさらされている。

(3)リアリティのない訓練で緊張感が低下

停止中の原発の危険性に向き合わない訓練は、周辺住民に「停止しているからとりあえず安心」との誤解をもたらし、なにより防災業務従事者の緊張感の低下を招いている。防災訓練は回を積み重ね、習熟度を高めることが重要ではあるが、惰性で回数を重ねてもいざというときの役には立たないと指摘せざるをえない。

2. 実効性のない訓練を何度くり返すのか

(1)「スムーズな避難」ありきの避難訓練

原子力防災における避難訓練は時間との勝負。しかし、あらかじめ決められたごく一部の住民が参加する避難訓練では、避難指示の伝達漏れはなく、避難バスも事前に配車され、自家用車による避難の渋滞もなく、スクリーニングポイントでの順番待ちもない。避難訓練の基本的な流れを確認する訓練かと思えば、課題として残るヨウ素剤の配布や服用指示の訓練は今回もおこなわれない。スムーズな避難を印象付けることを目的とした訓練としか思えない。

(2)どうする?半島先端への避難

訓練全体に手抜き感が漂うが、半島先端方向への避難訓練の削減が顕著である。昨年はスクリーニングポイントを設けず、今回は元気な「要支援者」避難だけである。現実には避難車両の迅速な確保、スクリーニングポイントの場所の選定(能登空港駐車場は冬季や夜間の活用は非現実的)、人員、機材の素早い配置だけでも課題山積、

要支援者の避難先での生活や医療面での支援も課題山積。避難路も里山海道が寸断されれば混乱必死である。計画の実効性を訓練で検証し、課題を明らかにすることが重要であるにもかかわらず、いまだ検証しようとしない。今回も課題から逃げた訓練である。

(3)課題から逃げまくる非現実的訓練

PAZ圏内、UPZ圏内それぞれの住民へのヨウ素剤の配布、服用指示は重要な課題であるが、いまだ必要な住民への配布が可能かどうか検証できていない。観光客など一時滞在者、特に近年増加する外国人旅行者への避難情報の伝達、避難、ヨウ素剤の配布等にも課題が残る。SPEEDIの使用を中止した中、緊急時モニタリングを迅速、的確に実施し、UPZ圏内の住民の避難行動につなげることができるのか、実践的な訓練も求められている。さらには防災業務従事者の被ばく対策と交代要員の確保も重要な課題である。課題を列挙するときりがない。この間実施されている訓練はやりやすい項目をつまみ食いする訓練と言わざるをえない。

3. 繰り返して指摘する「今こそ常識に立ち返れ」

一企業の電気を生み出す一手段に過ぎない志賀原発、6年8カ月停止状態が続いても停電にもならず経済活動にも支障がでない志賀原発、そして今後、稼働する可能性はほとんどないと思われる志賀原発のために今も多くの県民が命や暮らしを脅かされ、財産を奪われ、ふるさとを追われる危険に晒され続けている。このような異常な事態を放置し、さらには覆い隠すかのように防災訓練が繰り返されている。

私たちは毎回、すべての原子力防災関係者に常識に立ち返るよう訴え続けてきた。避難させるべきは住民ではなく核燃料である。北陸電力は人災である原子力災害を未然に防止すため、直ちに志賀原発の廃炉を決断し、活断層上にある核燃料を撤去するよう求める。

石川県平和運動センター

社民党石川県連合

社民党自治体議員団

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