谷本正憲 石川県知事の発言に対する抗議声明(平和フォーラム)
2017年6月23日
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 藤本泰成
報道によると石川県の谷本正憲知事は6月21日、金沢市内で行われた県町長会定期総会後の懇親会で、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)による弾道ミサイル発射に関し「(県内の)北陸電力志賀原発を狙う暴挙をするなら、兵糧攻めにして北朝鮮の国民を餓死させなければならない」と発言した。翌22日に谷本知事は「人命は尊重されなければならない」として前日の発言を「撤回する」としながらも、「北朝鮮の国民に影響が及ぶ可能性があるが、内部から体制が崩壊していくような状況をつくることが必要だ」などと同じような主張を繰り返した。
わたしたちはこうした谷本知事の暴言に対して断固抗議する。
谷本知事の発言は朝鮮に対する敵愾心をいたずらに扇動し在日コリアンへの差別・ヘイトスピーチを助長しかねない。日本にはいまだに韓国、朝鮮、そして在日コリアンに対する差別意識が根強く存在している。さらに近年は「高校無償化制度」からの朝鮮学校排除に象徴されるように、政府・自治体による差別も問題とされている。石川県知事という要職につく者の発言は社会的影響が大きい。谷本知事は公人としての責任を全く自覚していない。
「内部から体制が崩壊していくような状況をつくることが必要」という発言は、東アジアにおける戦争危機を煽るという点で問題である。朝鮮による度重なる核実験やミサイル発射の背景には、日米韓3国による軍事的挑発がある。朝鮮の「体制が崩壊していくような状況」を作ろうとしてきたこれまでの政策が、むしろ朝鮮の態度を硬直化させ核武装の道へと追い込んできたのである。しかし今、韓国では「対話による解決」を掲げる文在寅政権が誕生し、米国のトランプ政権も圧力を加えながらも体制の崩壊までは求めないとする対朝鮮政策を決めたばかりだ。朝鮮の脅威を煽りながら「戦争できる国づくり」を正当化しようとする日本のあり方は許すことはできない。真の平和を願うのであれば、「対話による解決」を目指して取り組んでいかなければならない。
わたしたちは、谷本知事に対して21日・22日の両発言について真摯に謝罪し撤回することを要求する。敵意をむき出しにするのではなく、対話を通じて信頼関係を築いていくことのみが現在の東アジア情勢を打開する唯一の道であること、そして日本国内からヘイトスピーチをなくし真の多文化共生社会を実現する道であることを、谷本知事には理解していただきたい。