2017年6月15日
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 勝島一博
6月15日午前2時30分過ぎに開催された参議院本会議において、自民、公明、維新が、「共謀罪」法案(「組織的犯罪処罰法改正案」)の審議を打ち切って採決を強行し、同日午前7時46分、可決されたことに、私たち平和フォーラムは満身の怒りを込めて強く抗議する。
この参議院本会議に先立って、14日午前中には、参議院法務委員会が開催されていたが、政府・与党は、この「共謀罪」をめぐる法務委員会審議を一方的に打ち切るとともに、委員会採決を省略し、本会議で直接採決を行う「中間報告」によって、「共謀罪」法案の採決を強行した。
この「中間報告」という異例の手法を駆使してまで強引に法案の成立を図った背景には、直近の世論調査で、「共謀罪」法案に関する政府の「説明が不十分とする」回答が、77%に達したことや、森友学園及び、加計学園の疑惑が国会審議の中で深まっていったこと、さらに、これらが原因で安倍内閣の支持率が低下したことにより、政府・与党が6月18日までの会期を延長することなく閉会し、幕引きしようと目論んだ結果である。
こうした政府・与党による強行採決は、委員会審議を否定するものであるばかりか、議会制民主主義を踏みにじる強権的な国会運営であり断じて許されるものではない。
さて、衆・参を通じた国会審議の焦点は、この「共謀罪」法案の目的、及び、その対象やどのような場合に適用されるかについてだった。しかし、審議を重ねるほどに明らかになったのは、テロ対策のためといわれた「共謀罪」法案が、全くテロ対策の役に立たないということであった。
それどころか、政府は、参議院の審議で、環境保護や人権保護を掲げた団体であっても、それが「隠れ蓑」であれば処罰の対象となると答弁し、また、「組織的犯罪集団」の「周辺者」も処罰の対象となるとするなど、捜査機関の恣意的な運用によっては、一般市民でも「組織的犯罪集団」の一員となり得る危険性が逆に明らかになった。改正組織的犯罪処罰法が、政府に批判的な労働組合や市民団体を弾圧するための手段となる危険性はより鮮明となったといえる。
また、この間、政府は、2013年の秘密保護法、2015年の集団的自衛権行使を盛り込んだ憲法違反の戦争法の強行成立、さらに、2016年には「盗聴法・刑事訴訟法」の改悪を通じ、「戦争できる国づくり」を進めてきた。そして、今回の「共謀罪」法案は、1925年に制定された「治安維持法」と同様の内容を含んでおり、「戦争できる国づくり」に向けて、監視社会を強め、これに反対する発言や活動を委縮させ弾圧する危険性を内包していることを強く指摘しなければならない。
一方、共謀罪法案について、プライバシー権に関する国連特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏は、その書簡のなかで、「他の法律と組み合わせて幅広い適用が行われる可能性があり、プライバシーの権利やその他の基本的な国民の自由の行使に深刻な影響を及ぼす」との危惧を表明している他、国際的な人権団体であるアムネスティ・インターナショナル日本やグリンピース・ジャパンからも「民主主義の根幹である表現の自由を脅かすもの」として強い懸念が表明されている。
このように「共謀罪」法案に対する、批判や懸念の声が高まりつつあるにもかかわらず、こうした声を一顧だにせず「共謀罪」法案の採決に邁進した安倍政権は、国際社会の人権感覚からも逸脱した民主主義の破壊者であると言わざるを得ず、一刻も早い退陣を求めていかなければならない。
今後、私たちは、新設された「共謀罪」の危険性について、引き続き国民に広げていくとともに、政府や捜査機関による濫用を未然に防いでいく闘いが求められている。そのため、私たち平和フォーラムは、引き続き、「戦争させない1000人委員会」や、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」に結集し取り組みを強化するとともに、平和フォーラム加盟の中央加盟組織、都道府県運動組織が一体となって中央・地方で、監視社会の強化に反対し基本的人権を守る闘いと安倍退陣に向けた闘いを強化するものである。