2016年4月21日
高浜原発1・2号機の新規制基準適合決定に関する事務局長見解
原水爆禁止日本国民会議(原水禁)
事務局長 藤本泰成
4月20日、原子力規制委員会は、運転開始から40年を経た関西電力高浜原子力発電所1・2号機が新規制基準に適合するとの審査書を正式決定した。東京電力福島第1原発事故後に、原子炉等規制法が改正され原発の運転期間を40年に制限されたが、原子力規制委員会が認める場合は、最長20年の延長が認められるとされた。老朽原発の事故を防ぐという安全対策の空洞化が懸念されたが、正にその通りになった。
今回の審査では、原子炉や原子炉建屋などの耐震性チェックは改修工事後に後回しとされ、新基準への対応も方針や計画が認められたに過ぎない。今年7月7日には運転満了を迎えるため、運転延長には、さらに老朽化のチェックや耐震工事の計画の認可が必要になる。関西電力は、審査終了後に設備の大規模工事を行うとし、地元合意も含めて運転の開始は2019年以降としている。今回の規制委員会の対応は、運転延長ありきで審査を急いでいるとしか考えられない。老朽原発では、放射線による原子炉の脆弱化や建屋強度の低下など検証困難な課題も多い。可燃性ケーブルの安全対策も全長1300kmのうち交換は6割、残りは防火シートで覆うとされている。基準値振動も比較的新しい高浜3・4号機と同等の700ガルにとどまっている。今回の熊本地震が1580ガルを記録したことを考えると極めて低い基準だ。これまでの対応から、相当の費用を投入した改修工事後に、耐震性が問題にされ運転延長が反故になるとは考えられない。審査書の決定によって安全性の審査が終了したとは言えず、40年が迫る中での見切り発車的審査は許すことはできない。
2015年7月2日、福井県越前市の市議会は、運転開始から40年を超える原発の運転延長を行わないことを求める意見書を可決している。大津地裁は3月9日に、稼働中の高浜原発3・4号機の運転差し止めを命じた。新規制基準に照らしても過酷事故の起こる可能性があるとの指摘だ。熊本地震後、4日間で稼働中の九州電力川内原発の運転停止を求める意見が、原子力規制庁に約340件寄せられた。これまでの経験と想像を超える地震に、原発事故の恐怖を感じるのはあたりまえだ。しかし、現在の科学では「原発は安全」と言いきることはできない。
四国電力伊方原発1号機は、安全対策上のコストと電力供給の状況を勘案して廃炉を決定した。経済効率からの廃炉決定は、逆に経済効率を考えての運転延長につながる。関西電力美浜1・2号機、日本原電敦賀1号機、中国電力島根1号機の計5基の廃炉が決まっている。経済の側面からではなく、市民社会の総意である「原発に依存しない社会」の実現のために、市民社会の安全のために、原発の廃炉を進めていかなくてはならない。原発ゼロでも市民の生活に支障がないのは、これまでに確認済みではないか。
福島第1原発事故から5年、市民社会の声を無視して、政府は、原発再稼働そして原発運転延長、原子力発電推進の大きく傾倒している。そのことが、再生可能エネルギーの拡大を拒み、ひいては日本の将来の社会のあり方に大きな影響を与えるに違いない。
原水禁は、今回の高浜原発1・2号機の運転延長に強く反対する。