<社説>着陸帯先行提供 恥ずべき対米従属だ 琉球新報 2015年2月19日
政府は17日、米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設計画で、東村高江集落に最も近いN4地区の着陸帯2カ所について、米側に先行提供することを閣議決定した。
施設区域返還前の先行提供により、米軍は既存の着陸帯に加え、新設着陸帯でのオスプレイ運用が可能になる。今後、訓練が一層激化し、騒音や低周波、高温排気熱など、住民生活や自然環境への影響が悪化するのは避けられない。これは誰の目から見ても米軍基地機能の強化そのものだ。沖縄の基地負担軽減に逆行しており、到底許されない。
北部訓練場の一部返還は、1996年の日米特別行動委員会最終報告に盛り込まれたが、22カ所の着陸帯のうち7カ所を返還し、高江集落を取り囲むように6カ所を新設する内容だ。そもそもこの計画は、着陸帯集約による基地機能強化にほかならない。加えて、多くの希少生物が生息する、やんばるの森を新たに切り開く自然破壊も強く懸念されている。
しかも、新設着陸帯6カ所のオスプレイ使用回数見込みは年間2520回で、オスプレイと交代するCH46Eヘリの1288回から、ほぼ倍増する計画だ。住民らが反発するのは至極当然であり、実際、連日座り込みによる抗議行動が展開されているのは周知の通りだ。
しかしながら政府は着陸帯建設を強行し、あまつさえ、反対運動による建設遅れなどを理由に、着陸帯の引き渡しを前倒しした。住民の声を圧殺し、米軍への配慮をあからさまなまでに優先しているのが実態だ。高江の反対運動などをめぐっては、北部訓練場司令官の海兵隊少佐が「お金をもらっている」「返還された森の上空をオスプレイは飛ばない」などと事実から懸け離れた暴言を述べたことが分かっている。
現在でも訓練場外の森林上空を飛行するオスプレイが確認されており、発言は捏造(ねつぞう)そのものだ。高江の県道70号では、銃を所持した米兵部隊が歩行する姿もたびたび目撃されている。米軍に自由な活動を許す植民地さながらの沖縄の実態が、米側のゆがんだ認識を助長していることは疑いがない。安倍政権は着陸帯の運用と建設を即刻中止することで沖縄の負担軽減を図り、米側の誤った認識も払拭(ふっしょく)すべきだ。