11.3原子力防災訓練に対する「声明」

2014原子力防災訓練に対する声明

 昨日から今日にかけて、志賀原発の過酷事故を想定した原子力防災訓練がおこなわれた。志賀原発は現在、敷地内に活断層が存在する疑いが否定できず、現在、原子力規制委員会専門家チームで確認の調査がおこなわれているところである。こうした中、再稼働を前提とした訓練を行うことは言語道断である。再稼働路線を突き進む安倍政権に対し冒頭、断固抗議する。同時に、この間、敷地内の断層問題の決着が最優先と繰り返し述べてきた谷本知事の発言は何だったのか。県の言行不一致も許すことはできない。

  さて、現在、国内ではいわば脱原発状態が継続中であり、原子力防災を巡る視点も大きく転換すべき段階に入っていると私たちは考える。

 志賀原発の第一回の防災訓練は1992年6月に実施された。同年11月の1号機初臨界を控え、住民の安全・安心を担保することが目的であった。私たちはこの第一回の原子力防災訓練以来、ほぼ隔年でおこなわれてきた住民参加の防災訓練時には常に調査行動を実施し、問題点を指摘し続けてきた。

 問題点を端的に言えば、万が一、大事故が起これば防災計画は破綻し、住民を守れないということであった。

 福島第一原発事故では、防災計画の対象となっていた原発から10km圏をはるかに超えて放射能は拡散し、要援護者をはじめとして多くの住民が高濃度汚染地域に取り残されたり、避難先が高濃度の汚染されていたために、避けることができたはずの被ばくを強いられる結果ともなった。私たちの指摘していたことが、残念ながら現実となったのだ。

 福島第一原発事故後、「過酷事故は起こりうる」という前提で原子力災害対策指針が新たに示され、それに基づき石川県でも原子力防災計画が改訂された。2012年の防災訓練は計画改定前ではあったが、30キロ圏内の住民を初めて30キロ圏外へ避難させる訓練が実施された。住民が被ばくの危険を意識しながらの初めての訓練であったが、フクシマの教訓を踏まえた訓練とは到底言えないものだった。

 2013年の訓練は計画改定後のはじめての訓練であった。住民の被ばくを前提とする計画であるため、計画を真正面から検証することから逃げ、新たな安全神話づくりを意図したと言わざるを得ない訓練であった。

  こうした中、今回、3.11後では3回目となる志賀原発の原子力防災訓練が、はじめて国主催で行われた。「原子力災害時の状況に即した、より実践的な訓練を実施する」とのことだったが、住民参加は少なく、道路の渋滞対策やヨウ素剤配布、あるいはスクリーニングといったまさに実時間訓練を行うべき課題はことごとく除外されていた。災害時要援護者や防災業務従事者の被ばくのリスクも深刻であることや、荒天時における避難の困難さをあらためて確認することができた。私たちが以前から求めていた実践的なブラインド訓練がようやく随所で取り入れられたが、本来、1号機臨界前に訓練を重ね、全防災業務関係者の習熟度を高めておくべきことで、何を今さらと言わざるをえない。

  原子力防災は事故の規模やその影響を常に過小評価しつつ、原発必要論と表裏一体となり原発推進政策の一環として取り組まれてきた。一方、脱原発の立場に立つ私たちも現実に存在する原発に向き合い、住民の命を守るために原子力防災に関わらざるをえなかった。こうした中、原子力防災は立場を越えた共通の課題として議論されてきた経緯をもつ。

 ここで、3.11後まもなく3年8か月を経過しようとしている福島の現状をあらためて確認しておきたい。ひとたび過酷事故が起これば、住民は仮に放射能に命を奪われることは免れても、住居を失い、生業を失い、故郷を失い、コミュニティを失い、経済的補償すら十分になされない。被ばくによる不安と恐怖、そして差別や偏見ともたたかい続けなければならない。原発事故による避難それ自体が重大な人格権侵害である。福島原発事故の現実がこのことを雄弁に語っているではないか。一方で、原発がなければ電気は足りない、経済が立ち行かない、という原発必要論も破綻した。現に全国すべての原発が停止して、すでに1年2ヵ月になるが、電力供給に何ら問題は生じず、この冬の電力供給も余裕があると見込まれているのである。

 私たちは、電気を生み出す一手段に過ぎない原発によって、なぜ住居を失い、生業を失い、故郷を失い、コミュニティを失うようなリスクを負わなければならないのか、原点に返って問い直す時期にいる。住民の生命、財産を守るべき責務を負う自治体が、人災である原発事故に備え、なぜこのような人格権侵害の訓練に加担するのか。人格権侵害の原因である原発の存在そのものに目を向けるべきではないか。

  今、原発の安全神話はすでに崩壊し、さらに必要性神話も破綻したことは明らかである。自治体が住民のためになすべきは、原発の再稼働を前提とした防災訓練ではなく、過酷事故のリスクがある原発の再稼働を許さず、原発に依存しない社会の実現を目指すことである。同時に、停止中の原発のリスクを極力回避するため、国および電力会社に対しては、原子炉から核燃料を取り出し、より安全な場所に移送し、より安全な保管方法の下で管理して、速やかに廃炉にするよう求めるべきである。

  2014年11月3日

  石川県平和運動センター

社民党議員団

 

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