7月8日から始まったイスラエル軍と武装組織ハマスとの戦闘は、2度の「人道的停戦」を挟みながらも、終結の見通しが全く立っていない。パレスチナ自治区ガザでの死者は、7月21日には500人以上、26日には1000人を超えたと報道されている。双方の指導的立場にある者の責任は重い。平和フォーラムは、双方が停戦へ歩み寄ることを、心から望む。
ガザは狭い地域に170万人ものパレスチナ人が生活する人口密集地であるが、現在イスラエル軍によって徹底して封鎖され、「天井のない監獄」とまで言われるほどの逃げ場のない、非人道的な占領状態にある。ガザに住むパレスチナ民衆全体にこのような状況を強制し、徹底攻撃を行うことが許されるだろうか。そもそもイスラエルは、米国の支援の下「鉄のドーム」と言われる防衛システムを構築し、ハマスが発射するロケット弾の約9割を破壊している。兵士18人、民間人2人というイスラエル側の犠牲者数からみても、軍事力に圧倒的格差がある。
アメリカのオバマ大統領は、このような実態を考慮することなく、イスラエルのガザ攻撃を「自衛行為」と支持している。アメリカがこれまでとってきた一方的なイスラエル支持を改め、和平実現に真剣に向き合わなくては、この問題の解決はない。
一方、イスラエルの和平推進派を代表するシモン・ペレス大統領が退任した。後任は、右派リクード出身のリブリン前国会議長であり、対パレスチナ強硬路線の強化が懸念される。シモン・ペレス大統領は「イスラエルはガザ市民の敵ではない」としながらも、「ハマスがガザを人間の盾としている」と非難しながら攻撃を継続している。軍事的に圧倒的優位に立つイスラエルこそが、停戦への積極的な行動を、直ちにとるべきである。
しかしながら、軍事力の圧倒的差異があるからと言ってハマス側の攻撃を容認できるわけではない。自らの同胞の多くを犠牲にしての戦闘が世界の支持を集めることはない。ハマスは、パレスチナ自治政府と暫定統一政府を発足させたのであり、そのことの意味をとらえるならば、停戦の合意に向けてとりくむ責任がある。
そもそも、パレスチナ問題には長い歴史があり、この問題に責任を負うべき国は多い。国家的利害を超えた努力抜きには、問題解決に至るとは思えない。そのために国連の場が果たすべき役割は大きい。
「ガザの市民は隣人で、昔は遊びに行けた。とても複雑な気持ちでいる」。自宅庭にハマスのロケット弾を受けたイスラエル市民の言葉である。いま、傷つき、命を失う人々に何らの罪はない。武力で平和はつくれない。話し合いでしか解決しないのだから、話し合いの場を設けることだ。平和フォーラムは、「一人ひとりの命に寄り添う社会」を求め、世界平和の実現に向け、声を上げ続け、日本の地にあってとりくみをすすめていく。
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 藤本泰成