2014年5月22日
自衛隊機の飛行差し止めで前進をみた
第四次厚木基地爆音訴訟判決についての声明
フォーラム平和・人権・環境 事務局長 藤本 泰成
昨日、5月21日、横浜地方裁判所は、全国初の基地航空機の飛行差し止めを下した。
第四次厚木基地爆音訴訟で7000人の原告が、神奈川県厚木基地における在日アメリカ海軍と海上自衛隊航空機の爆音被害について訴えを行い、2007年12月の提訴以来、6年の審理を経て判決が下された。
これまで、原告は、民事訴訟で飛行の差し止めを求めきたが、裁判所は、自衛隊機の運航は「公権力の行使」にあたるため民事訴訟には適さないとして訴えを退け、米軍機についても「国の支配は及ばない」として、同じく、訴えを退けてきた。
今回、第四次厚木基地爆音訴訟原告団は、自衛隊機の運航や米軍機への滑走路の使用許可は防衛大臣の権限だとして、民事訴訟に加え、行政訴訟での飛行差し止めを求めた。
21日の判決は、自衛隊機については、防衛大臣の権限行使であり、差し止めの対象になるとし、深刻な被害であるから夜間と早朝の飛行を禁じるという判断を下した。これは画期的であり全国の基地騒音訴訟に勇気をあたえる判決だ。
一方、依然として米軍機の飛行は差し止めの対象にならないとして却下した。米軍機とその基地使用は、法と行政処分に基づく措置ではないからという論理だが、私たちとして、とうてい納得できるものではない。
損害賠償については、従来の損害賠償の水準を大きく前進させ、慰謝料額を増額させている。騒音被害の深刻さ、また、爆音の違法性を認めてきた過去の判決を無視しつづけ、爆音を放置してきた国の無作為、また、他の権利侵害訴訟の賠償額との比較などから、賠償水準については評価できる内容だ。
第四次厚木基地爆音訴訟原告団と同弁護団は、この裁判のために、航空機騒音による高血圧症、狭心症等の心臓血管系疾患、高度の睡眠妨害による症状、またWHOを中心とする最新の健康影響についての知見を証拠提示し、人の生存権としての生活権を訴え、判決の前進面に実った。横浜地裁は、「健康被害に直接結び付きうるものであり、相当深刻な被害といえる」と認めている。
しかし、爆音被害の中心である米軍機飛行を止めることができなかった点は、今次判決の前進面を覆うほどの陰の部分を成し、課題を残している。この点は不当判決と言わざるを得ない。
民事訴訟と行政訴訟を尽くしても訴えることのできない、米軍と米軍機飛行の超法規制とは何なのであろうか。
この国の主権はどこにあり、そこに住むものの権利侵害はだれによって救済解決されるのか。米軍機の飛行差し止めにも日本の法が不可触であるなら、米軍の存在な法の上にあるものとなるのか。
オスプレイの飛行訓練をふくめ、基地の「外」での米軍訓練を許す法根拠は、そもそもありえ無い。
私たちは、自衛隊機よりも「相当深刻な被害といえる」米軍機爆音の違法性をひきつづき追及し、安全
保障のためには犠牲がつきものであるという安倍政権の姿勢を糾弾する。
司法が挑戦しなかった「日米の高度な政治判断」に、厚木基地爆音訴訟団とともに大衆行動で挑みたい。