2013年12月24日
南スーダンにおけるPKO活動への銃弾の供与に関する声明
フォーラム平和・人権・環境
代表 福山 真劫
12月23日、日本政府は治安の悪化が著しい南スーダンにおいて国連平和維持活動(PKO)を展開する国連部隊(韓国軍)に対して、弾薬1万発を無償供与することを閣議決定しました。日本政府は、これまで武器輸出三原則に沿って「PKO協力法の物資協力においては武器の供与はしない」ことを方針として、「イラク支援法」や「テロ対策特別措置法」においても武器弾薬の供与は行いませんでした。今回の措置は「武器輸出三原則」と「PKO協力法」の二つの壁を一気に押し破るものです。
国連は南スーダンのPKOへの大幅な増強を勧告しており、情勢がきわめて緊迫したものであることは十分に理解するものも、これまでの政府答弁を覆し、武器輸出三原則がなし崩しになる可能性のある事柄を、閣内の拙速な判断のみで行ってよいとは考えられず、日本の役割が弾薬の無償供与にあるとは考えられません。
日本社会は、侵略戦争の反省にたって、専守防衛に徹し「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と決意しました。その上で、日本社会はどんな状況にあっても人間に銃を向けることを頑迷に拒み続け、諸外国から批判されながらも、そのことによって平和国家としての信頼をつくり上げてきました。平和フォーラムは、そのことこそ一番大切にしていかなくてはならないと考えます。
1万発の弾薬が、どれほどの人間の命を救いどれほどの人間の命を奪うのでしょうか。そして亡くなった人間の向こうに、どれほどの悲しみが存在するのでしょうか。敵と味方、正義と不正義を超えて、悲しみと憎しみが広がっていきます。憎しみの連鎖をつくり出すことに手を貸してはなりません。戦争を未然に防ぐこと、そして話し合いのテーブルを作り出すこと、平和への営みは様々に存在します。国境なき医師団(MSF)の報告によると、南スーダンの4カ所の難民キャンプには約17万人が避難しています。子どもの3分の1が栄養失調、1日に5人子どもたちが亡くなっていく現実があります。日本政府が真剣に難民の生活と向き合うならどれほどの人の命を救うことが出来るのでしょう。
日本への要請は、韓国軍からなされたと報道されていますが、この供与を持って冷え込んだ日韓関係を修復しようとする意図があるとしたら、本末転倒と言わざる得ません。侵略と植民地支配の歴史認識をめぐる対立は、歴史をしっかりと見つめ直すことで解決を図らなくてはなりません。そのことは、平和へ通じる最良の道なのです。
平和フォーラムは、日本政府がこれまでの「武器輸出三原則」と「PKO協力法」での政府方針を堅持し、弾薬の供与などとは異なる方法で南スーダンの人々の平和と安全に尽くすべきであると考えます。特定秘密保護法の強行採決から今後予想される国家安全保障基本法ならびに集団的自衛権の行使容認など、戦争をする国づくりを、私たちは絶対に許しません。日本国憲法の平和主義は、国際社会が戦争の惨禍から学び、つくり上げた「パリ不戦条約」の精神に基づく普遍の理念なのです。
平和フォーラムは、日本政府が平和憲法の理念を守り、専守防衛の方針の下に世界に向けて徹底した平和主義を貫き、そこから考えられる平和へのとりくみに全力を尽くすことを強く要請します。
以 上