2012年2月1日
輪島市の「震災がれき」受け入れに対する声明
石川県平和運動センター 代表 柚木 光
輪島市は「震災がれき」を受け入れ、同市美谷町にある輪島クリーンセンターにて焼却する意向であることを16日明らかにしました。
私たち石川県平和運動センターは、原水爆禁止石川県民会議、社会民主党など多くの団体、勤労者、県民とともに、核兵器とあらたなヒバクシャをつくらないため、一貫して原子力発電所、核燃料施設などに反対してきました。しかし、昨年3月11日発生した東日本大震災により福島第一原子力発電所はレベル7の過酷事故を起こし、大量の放射性物質が日本全国にばらまかれました。多くの国民、とりわけ子どもたちを被曝の危険性にさらす重大な原発事故を繰り返さないため、より多くの市民、働く仲間、有識者などと共に「志賀原発の再稼働反対」の運動を取り組んでいるところです。
このような中で輪島市が、「被災地の復興を支援するため」「困ったときはお互いさま」という互助の精神で支援しようという姿勢は一定の理解はできるものの、こと放射性物質に汚染された「がれき」の受け入れ(焼却・埋め立て等)についてはまったく別物と考えます。なぜなら、放射性物質の拡散、ひいては新たなヒバクシャを生み出す危険性が高まるからです。
地震や津波により発生した大量の「震災がれき」は一般廃棄物として処分されていますが、放射性物質に汚染された「汚染がれき」は「慎重」に管理され処分されなければなりません。しかし被災地には、未処分の「震災がれき」が「汚染がれき」と区別なく放置されており、汚染石材が騒がれている今、福島県も国に対し「安全基準を示せ」と求めているのが現状なのです。
放射性物質に汚染された「がれき」の基準値は昨年6月、密室の中で「セシウム8000Bq/kg以下は一般廃棄物として埋め立て可」と決定されました。その根拠は、現場作業員が年間250日、一日4時間働いたとき、被曝量を1ミリSv未満にすることから算出された数字であり、埋め立て地の住民の健康や安全を考慮した数値ではまったくありません。
私たちは、以下の理由で「汚染がれき」の受け入れを止めるよう要請します。
1 輪島市は、放射線量などを事前に調査し「安全なもの」を受け入れるとしているが、その測定
法は空間放射線量を計測し、そこから放射性物質の含有量を推定するしかありません。震災がれきの放射性物質の量を推計する基礎データはほとんどなく、環境省の推計式も実証分析を行った上でのデータではない。
2 放射性物質ゆえ、「汚染がれき」の搬出・搬入には運搬車を含め密閉された環境など「高度」
な対策が必要となる。また一般道や高速道路で、一般車との接触、放射性物質の漏洩などが起こる危険性が高まる。
3 焼却施設のバグフィルターで「放射性物質」を「99.99%」除去できると環境省は言うが、これは「安定セシウム」の例であり、放射性セシウムでは「サッカーのゴールネットで野球の球をつかまえるようなもの」と青山貞一東京都市大学大学院教授は指摘している。
4 放射性物質の含有量が少量であっても、焼却灰となれば10倍から33倍に濃縮されることは
証明されている。数量が千トン単位となれば大量の放射性物質が焼却残物となる。8000Bq/kg 以下でも問題は山積しているが、8000Bq/kgを超えたものはどのように処分するのか。設備と労力、被曝対策など幾世代にも渡って途方もない予算と責任が伴うことになる。
5 焼却後の残物は長期に管理する必要があるが、どのように維持管理するのかまったく明らかにされておらず不安を一層助長させている。いずれ、セシウムやストロンチウム、プルトニウムなどの猛毒が漏れ出し、農業や漁業などへの影響、環境に及ぼす影響は計り知れません。
6 市町境界を越えて飛散する放射性物質は、輪島市住民のみならず、能登全域の住民に徹底した説明と論議を行わなければ実施するべきではない。