2009年8月11日
横浜市教育委員会 様
石川県平和運動センター
代 表 柚 木 光
2010・2011年度使用中学校用歴史教科書採択に関する抗議文
横浜市教育委員会は8月4日、教育委員会を開催し2010・2011年度使用中学校用歴史教科書について、18採択地域のうち8地域で「新しい歴史教科書をつくる会」が編集した自由社版「新編 新しい歴史教科書」(以下「つくる会」教科書)を採択しました。同社の教科書採択は全国初とのことです。石川県平和運動センターは、横浜市教育委員会の今回の教科書採択に強く抗議します。
この「つくる会」教科書は、日清・日露戦争以降1945年8月の敗戦まで続く日本の侵略戦争を、日本の防衛にとって避けられないものであり帝国主義侵略からアジアを開放した聖戦であるとの立場を明確にしてきました。この歴史観は、「村山首相談話」で示された、過去日本が行った戦争を真摯に反省し新しいアジア諸国との友好関係を築こうとする日本政府の公式見解とは大きく異なることは明らかです。歴史のグローバル・スタンダードを学ばずに、自国の歴史を身勝手に解釈する事は、世界を舞台に活躍するであろう横浜市の子どもたちの将来を阻害する要因になるに違いありません。8月4日の教育委員会では、歴史教科書であるにもかかわらず、そこに貫かれる歴史観や記述内容に触れた議論はありませんでした。子どもたちの将来を左右する教科書採択が慎重に行われたとは到底思われません。
また、今回の教科書採択は、全ての教科書を見比べてどの教科書が最良かを決定する方法ではなく、他の教科書と今年度検定を合格した「つくる会」教科書を比べてどちらがふさわしいかを決定する方法で採択されました。このような方法は、極めて不公正な問題の多いものです。また、議論を見る限り、採択の票を投じた委員の方々に対して、教育現場で教科書を使う教員や保護者の方々の意見がとどいているとも思われません。教科書採択のあり方や手続きも大いに問題ありと言わざるをえません。
横浜市は国内最大の都市として、地方分権時代にリーダーシップを発揮しておられるだけでなく、今年で開港150年をむかえる世界に開かれた国際港湾都市として、国内外に大きな影響力をもつ都市だと私どもは思っております。その横浜市の教育委員会が、このような杜撰といわざるをえない教科書採択手続きを経て、正しい歴史認識と史実に基づく歴史を学ぶ姿勢を放棄する決定をされたことに石川県平和運動センターは驚き、そして怒りを禁じ得ません。全国の教育に対する影響も大いに危惧するものです。横浜市教育委員会は、全ての歴史教科書をもう一度検討し直し、子どもたちの将来のために教科書採択をやり直すことを強く要求します。