2008年原水爆禁止石川県民会議総会 開催
2008年の原水爆禁止石川県民会議の総会が5月19日、フレンドパーク石川で約100人が出席する中で開かれました。
共同代表の1人である宮下登詩子社民党石川県連合代表(県議)のあいさつに続き、来賓の上田弘志連合石川会長、藤田利男石川県勤労協連合会会長、奥田建民主党石川幹事長、西本多美子石川県被爆者友の会事務局長から連帯のあいさつをいただきました。
議事に入り2007年度の経過報告決算が提案・承認され、引き続き2008年度の活動方針案、予算案、会則改正案が提案・採択され、役員案が承認されました。総会宣言が採択された後、全国被爆2世団体連絡協議会の山崎幸治会長(大竹市職労)から「“援護なき差別”から“差別なき援護”へ」と題して記念講演をしていただきました。
総会の最後は、共同代表の1人である嶋垣利春平和運動センター代表が閉会のあいさつを述べ。ガンバロウ三唱で幕をとじました。
第1号議案 2008年度 活動方針(案)
1.はじめに
1.ブッシュ政権の単独行動主義は破綻し、任期を半年あまり残しつつもすでに存在感はなく、初の黒人大統領の誕生か、初の女性大統領の誕生かで世界の関心を集める米国。めざましい経済成長を続けながらも人権抑圧が国際世論の批判を浴びる中国とロシア。冷戦終焉以降20年が経過する中で、古い枠組みと新しい枠組みがせめぎ合い、新しい枠組みの形成が世界各地で模索されています。非核・平和、ヒバクシャの権利確立、脱原発を掲げる原水禁運動は、新しい枠組みの形成の一翼を担う重要な運動体の一つです。
2.世界情勢の特徴として、①イラク・アフガン戦争の泥沼化、米国の軍事戦略の崩壊とあらたな世界平和秩序の模索、②東北アジアにおける米国の中国包囲網政策の見直しと米朝関係の前進、非核平和体制への加速、③米大統領選挙をはじめ、イギリス、オーストラリアなど各国でブッシュ追随政権の終焉、④世界的な貧国の拡大・深刻化と「人間の安全保障」に基づくとりくみの拡大、⑤米国の世界経済支配の崩壊と経済危機の進行、BRICS諸国の台頭、⑥地球環境の深刻化などがあげられます。
3.国内情勢としては、①参議院の与野党逆転、与野党の対立激化、自民党政権とそれを支える官僚体制が崩壊過程に入り、野党や労働団体、市民団体などが結集し、政権交代への流れが加速、②福田政権下でも憲法改悪、日米軍事一体化路線は進行し、それに対抗する平和運動が強化される、③貧困・格差社会の進行と国民生活の破壊が拡大、それに対応する反貧困のたたかいの高揚、④原発推進・プルトニウム利用路線の継続強行と安全神話の崩壊、現地を中心に路線転換を求める粘り強い運動の展開、などがあります。
4.総じて、悪政へ部分的な歯止めをかけ、反撃への態勢は強化されつつありますが、「戦争のできる国づくり」への流れ自体への歯止めはかけ切れていません。県内においても、小松基地の米軍再編反対行動や志賀原発再稼働阻止のたたかいなど、異議を申し立てる勢力の存在感は発揮できていますが、政策転換を実現するには至っていません。政権交代への展望がみえつつある中、さらなる運動の強化が必要です。新しい枠組みの実現へキーを握るのは世論の力であり、その中心を担うのは私たちの運動です。
2.核兵器廃絶へのとりくみ
1.ヒロシマ・ナガサキの原爆投下から63年。いまだ人類は2万7000発ともいわれる核兵器の存在の中で、核戦争の脅威から解き放たれてはいません。核の先制使用を含め、核兵器と非核兵器の一体的運用の促進を掲げたブッシュ政権は、核の保有を正当化するだけでなく、ミサイル防衛の推進など核拡散の流れを生み出しました。インドやパキスタンイスラエルに続きイランも核保有を進めるのではないかとの疑いが強まっています。北朝鮮も核実験を強行しました。NPT体制の危機です。こうした中、米国はインドの核保有を公然と認める「米印原子力協定」を結ぼうとしています。日本を含めた関係国の対応が極めて重要になっています。原水禁国民会議の方針を踏まえ、核軍縮の取り組みを強化します。
2.政府・自民党関係者からの核武装発言が後を絶ちません。非核三原則の法制化の取り組みを、全国の仲間と連帯し進めていきます。
3.8月19日には原子力空母の横須賀母港化が予定されています。在日米軍基地の強化であると同時に、東京湾に30万Kw級の原発が浮かぶことになります。危険な動く原発の配備を阻止するため、7月19日には1万人集会が予定されています。代表派遣を検討します。
4.非核平和行進は、富山県からの引継ぎを含め、県内六ヶ所で実施します。近年、参加者は減少傾向にありますが、核廃絶を求める地域からの重要な取り組みであり、積極的な参加を求めていきます。
5.原水禁世界大会へは、広島・長崎あわせ40人程度の代表派遣をおこないます。大会後にはすみやかな報告集の発行に努めます。
3.ヒバクシャの権利確立のとりくみ
1.高齢化するヒロシマ・ナガサキの被爆者の原爆症認定問題や、戦争責任・戦後補償の問題も含めた在外被爆者の問題、援護施策の対象外となっている被爆二世・三世問題などの解決が迫られています。原水禁国民会議の方針を受け、被爆者課題の解決に向け、積極的にとりくみます。
2.いまだ全貌が明らかにされていない世界各地の核被害者問題や原発・原子力施設のヒバクシャ問題、劣化ウラン問題などについて、原水禁世界大会への参加・学習・討論を通じて学習を深め、その成果を職場に還元していきます。喜友名正さんの労災認定を求める署名にも引き続きとりくみます。
4.脱原発、プルトニウム利用政策の転換を求めるとりくみ
1.六ヶ所再処理工場の稼働、もんじゅの運転再開が年内に予定され、2010年までには伊方、玄海、浜岡、泊の各原発でプルサーマル計画実施が予定されるなど、日本はまさにプルトニウム社会に突入しようとしています。すでに余剰プルトニウムを44トン保有する中、さらに再処理工場を稼働させ、余剰のプルトニウムを生み出すことは、国際的にも核拡散につながるとして問題となっています。
もんじゅの運転再開に反対し、廃炉に向けたとりくみを強化し、全国集会に参加していきます。さらに、プルトニウム利用政策の転換を求め、必要なとりくみを進めます。
2.中越沖地震は原発震災の危険を現実のものとしました。3月には志賀原発も含め全国の原発で新耐震設計審査指針に基づく耐震の再評価が公表され、新たな断層の公表や基準地震動の見直しが示されました。既存原発の安全審査の前提が覆ったのです。耐震危険性は、既存原発を稼働停止、さらには廃炉に追い込むための重要な切り口です。柏崎刈羽原発の廃炉に向け、100万人署名や全国集会への参加など、現地や全国の仲間と連帯しとりくみます。
3.地球温暖化問題で、「原発が温暖化対策の切り札」というキャンペーンが展開されています。洞爺湖サミットでも原発推進が叫ばれることが予想されます。しかし、原発依存の温暖化対策は大量エネルギー消費社会を前提としており、本来おこなうべき対策を遅らせ、温暖化を逆に進めることとなります。原子力開発に偏ったエネルギー開発予算を、再生可能エネルギーや省エネルギーの研究開発や導入に投入することこそ必要です。全国の仲間と連帯し、原発の新増設に反対していきます。
5.志賀原発に反対するとりくみ
1.臨界事故隠しの再発防止対策として、北陸電力が掲げた「隠さない企業づくり」、「経営優先、工程優先から安全最優先の企業づくり」が、スローガン倒れであることが、その後の北陸電力の行動の中ではっきりと示されています。廃炉を視野に入れながら、事故、事件、不祥事の再発防止策の抜本的見直しを要求していきます。
2.耐震問題は、志賀原発の廃炉への重要なテーマです。新耐震設計審査指針によるバックチェックを精査し、その問題点を明らかにしていきます。
3.能登原発運転差止め訴訟原告団・弁護団と連帯し、たたかいの強化をはかります。また、5月31日には「52万人にありがとう!全国署名運動まとめ集会」を開催し、全国署名運動のとりくみを通じて広がった市民団体や全国の多くの仲間との連帯を深め、今後の志賀原発反対運動の拡大・強化につなげていきます。
6.中央行動への参加
1.中央組織や全国の運動との連帯強化は、運動強化の重要なポイントの一つです。広島・長崎の原水禁世界大会への参加をはじめ、もんじゅ集会や6月に予定される柏崎全国集会、7月の原子力空母母港化反対集会などへ、可能な限り代表を派遣していきます。
2.原水禁国民会議へは、北信越ブロックの確認の下、常任執行委員を引き続き派遣します。
7.非核自治体への働きかけ
1.議員団の協力も得ながら、自体体賛助金の要請を引き続きおこないます。
2.県内自治体の非核自治体宣言の決議は100%を達成していますが、宣言を生かした非核政策の充実を求めていきます。また、非核宣言自治体協議会への加盟も働きかけます。
3.11月には非核平和条例を考える全国集会が金沢市内で開催されます。集会の狙いの一つとして、自治体の平和力を引き出すことが掲げられています。自治体労働者や自治体関係者の集会参加を積極的に働きかけます。
8.石川原水禁のとりくみ強化と組織拡大に向けて
1.「あらゆる核に反対する」「核と人類は共存できない」が原水禁運動の原点です。そして非核・平和、ヒバクシャの権利確立、脱原発が原水禁運動の柱です。以上を踏まえつつ、すべての県民に開かれた運動の拡大・強化に努めます。個人会員制度の導入も検討します。
2.運動課題の重点化、構成団体との連携、役割分担を踏まえながら、運動を組み立てます。
3.情報提供体制の充実に努めます。
4.財政基盤の充実に向け、検討を進めます。
総会宣言
63年前、ヒロシマ・ナガサキに投下された原子爆弾は、一瞬にして地上の地獄を作り出し、核時代という不幸な時代の幕を開けてしまいました。そして、いまなお2万7千発余の核兵器が世界に存在し、さらに各地で増え続ける原子力施設によって、人類は核による脅威にさらされ続けています。
2001年に登場したブッシュ政権は、それまでの核軍縮の流れを断ち切り、核の先制使用を正当化し、使える小型核兵器の開発を打ち出しました。2006年には北朝鮮が核実験を強行し、さらにイランの核保有も懸念され、世界はまさに核拡散の危機にあります。被爆国日本は、核廃絶の国際世論形成の先頭に立つべきだと私たちは訴えてきました。しかし、歴代政府の、米国の核の傘に依存しながらの核廃絶の主張は、国際社会では全く説得力をもちません。それどころか政府・与党の政治家からは広島・長崎への原爆投下を容認する発言や、核武装発言が相次いでいます。加えて余剰プルトニウムを44トンも保有しながらも、さらなるプルトニウム生産のために六ヶ所村再処理工場を稼働させようとする政府の原子力政策に、世界各国は核拡散を懸念し、アジア諸国は日本の核武装に疑いの目を向けています。
人類の願いに逆行した一部の核保有国の動き、そして一部の政治家の言動に、自らの命を削りながら核廃絶を訴えてきた被爆者の苛立ちは募ります。ヒロシマ・ナガサキを風化させはなりません。被爆の実相を継承し、石川の原水禁運動をさらに強化していかなければなりません。
原水禁石川県民会議は被爆20年の節目である1965年、ベトナム戦争の戦禍が拡大し、反戦・平和のたたかいが高揚する中で発足しました。しかし43年を経て現在に至るも、人類は平和と核軍縮への確かな道筋を獲得していません。被爆者が高齢化する中で、その権利確立も急務となっています。核の商業利用も拡大し、脱原発への道筋もいまだ築けていません。
県内ではこの間に志賀1、2号機が稼動をはじめました。小松基地でも米軍戦闘機の訓練移転がおこなわれ、日本を米国の核戦略に組み込む米軍再編が進められています。原水禁運動が掲げる非核・平和、ヒバクシャの権利確立、脱原発の課題はますます重要になっていると言わざるをえません。
私たちは本日、原水爆禁止石川県民会議の総会を開催し、新たな組織体制と向こう1年の運動課題を確認しました。6月13日からは珠洲をスタート地点として県内の非核・平和行進がスタートします。一人でも多くの仲間の参加を呼びかけます。そして核の廃絶を一人でも多くの県民に訴えていきたいと思います。本日の総会を新たなスタートとして、すべての核の廃絶と二度とヒバクシャをつくらないたたかいに全力を尽くす決意を参加者一同確認しあい、総会宣言とします。
2008年5月19日
2008年原水爆禁止石川県民会議総会
参加者一同