「再発防止対策検証委員会」報告書に対する抗議声明
北陸電力がまとめた「臨界事故隠しの再発防止策」の妥当性と実施状況を検討する再発防止対策検証委員会は昨日(3月3日)、「再発防止のための仕組みづくりが完了」し、計画の「進捗率が100%に到達したことを確認」し、取り組みが定着したと評価する報告書を永原功北陸電力社長に提出した。志賀原発運転再開へのハードルをひとつ越えたかに見せかけるセレモニーである。石川県平和運動センターは、北陸電力の実態を直視せず、運転再開ありきの報告書をまとめた検証委員会に対し強く抗議する。さらに、「第三者」を偽装した「社外」委員会によって県民を欺き、運転再開に突き進む北陸電力に対しても強く抗議する。
まず何より、この検証委員会は会合も議事録の非公開であり、どのような審議をしたのか、結論に至る経緯を県民は検証しようがない。「隠さない企業風土づくり」を検証するはずの委員会が、北陸電力の「隠す風土」が変わらないことを自ら体現しているのである。
次に報告書の内容について検討するならば、事実関係や原因の究明が全く不十分な中で立案された再発防止対策だという認識が欠けているため、たとえば臨界事故の再発防止対策が、運転員の手順書遵守に全面的に依存し、ハード面での対策が抜け落ちているという根本的な欠陥を見落としたまま、「再発防止のための仕組みづくりが完了」と無批判に結論づけているのである。
さらに、検証委員会が「偽装」委員会だと断言すべき具体的な事例として、昨年12月に発覚した、新たな活断層隠ぺい問題を指摘しなければならない。2003年に志賀原発沖合の褶曲を再評価し、活断層の存在を認識しながら隠ぺいし、昨年3月の臨界事故隠し発覚後の再発防止対策に取り組む中でも、ついに自ら公表しなかったのである。たとえ隠さない仕組みづくりが100%完成したといわれても、結果として「隠す風土」は変っていないのである。謝罪し隠ぺいの経緯を報告した東京電力とは雲泥の差である。これほど明確な事実を突き付けられながら、なぜ全く議論もせず「再発防止の取り組みが定着した」という結論に至るのだろうか。はじめに結論ありきの委員会だと断言せざるをえない。
そもそも、第三者委員会といいながら、その委員の人選を見るならば、第三者の客観性が担保されているとは言い難い。委員長である児島眞平氏は、福井県の「もんじゅ安全性調査検討専門委員会」でも座長を務め、もんじゅの改造工事について、さしたる検討もないままこれで安全は確保されたとし、運転再開への道を大きく切り開いた立役者である。同様の役割を彼に託そうとした北陸電力の人選の狙いはあまりにも明白である。副委員長である石田寛人氏も第三者機関の委員として適切ではない。彼はかつて、科学技術庁の事務次官や原子力局長を務め、志賀原発の建設を国の側から全面的にサポートする役割を担ってきた。すなわち原発の運転資格が問われる北陸電力に、原発の設置許可を与えた中心人物であり、過去の自らの職務の反省を抜きに検証委員会の委員就任は認められない。
北陸電力は、今春の運転再開という作業工程に沿って、なりふり構わず突き進んでいる。永原社長は昨日の報告を受け、運転再開へ「大きな一歩」と表現し、喜びを語っている。検証委員会の存在と審議経過それ自体が、事故隠しの根本原因の一つとされた「工程優先意識」の上に規定されている。「工程優先意識」も、社長を先頭に、全く変わっていないと評価せざるをえない。
石川県平和運動センターは、検証委員会の報告書の妥当性について、全面的に否定する。
県民の安全を守るべき石川県や原子力環境安全管理協議会は、このような運転再開ありきの報告書を無批判に追認し、運転再開容認の判断を下すことなど、絶対にしてはならない。私たちは引き続き、志賀原発の運転再開に反対する県内外の多くの市民と連帯し、危険な志賀原発の実態を追及し、再稼働阻止のたたかいを強化していくことをここに表明する。
2008年3月4日
石川県平和運動センター
代表 嶋 垣 利 春