経済産業大臣
甘利 明 様
抗 議 声 明
電力各社のデータ改ざんや隠ぺいなど不正問題で経済産業省は本日(4月20日)、原子炉等規制法に基づく処分を発表した。核暴走事故を起こし、さらにそれを8年間も隠し続けてきた北陸電力に対しては、保安規定の変更を求める行政処分だけという、信じがたい甘い処分であった。監督官庁としての責任放棄を国民の前に宣言したものと言わざるをえない。
石川県平和運動センターは、今回の事件が公表された当日、事故の深刻さとかつてない悪質な隠ぺい工作であったことを指摘し、このような事態を8年間も見過ごしてきた監督官庁の責任の重大性も指摘してきた。その後、北陸電力宛の抗議文や申入書では、北陸電力がもはや原発を運転する資格がないことを明らかにし、原発からの撤退を求めてきた。原子力安全・保安院に対しても、4月12日、原水禁国民会議や原発現地の住民団体とともに交渉をおこない原子炉設置許可の取り消しを求めてきた。さらに4月13日には報告書の問題点を指摘し、北電の設置許可取り消しを求め、国の責任を明らかにするよう求める声明を発表してきた。
本日の処分は、下記の理由から到底受け入れられるものではなく、直ちに撤回され、原子炉等規制法に基づく原子炉設置許可の取り消しをされるようあらためて要求する。
1.再発防止策は未確立
北陸電力が公表した2本の報告書は、臨界事故の防止にも事故隠しの防止にもつながるものではない。①不正が出尽くし、すべてが明らかにされているとは言えない、②実態は核暴走事故だった、③志賀原発の事故・トラブルの大半は日立絡みであるが、対策が全く記載されていない、④原子力本部移転は隠ぺい体質の改善とは別問題、⑤通報義務違反の重大性に触れていない。⑥BWRには構造的な欠陥がある。このような問題点を残したまま運転を再開することなど到底許されない。
2.処分に至る経緯が全く不透明
過去の事故調査と比べても今回の秘密主義は際だっている。電力会社の報告書に基づき保安規定違反を精査しているとのことであったが(4月12日)、その検討内容は完全に闇の中である。原子力安全・保安院自らの隠ぺい体質、秘密主義が電力会社の隠ぺい体質を助長するものであることを保安院は自覚すべきである。
3.原子力安全・保安院(国)の責任を明らかにすべき
臨界事故隠しの発端は当時の運転管理専門官がだまされ、全く機能していなかったことに起因する。その怒りも、反省も感じられない。監督官庁としての責任放棄を宣言した処分と言わざるをえない。
4.不正隠しを「やり得」と容認
「懺悔をして国に報告したから処分しない」。このような国の姿勢では隠ぺいなど不正がなくなるとは到底思えない。悪しき前例となり、不正・隠ぺいは繰り返されるであろう。
今回の処分に続き、今後は安全協定の当事者である石川県や志賀町の対応が注目される。運転再開に向け、問題の幕引きを図ったとしか言いようのない経済産業省の対応に追随することなく、命の危機にさらされた県民の立場に立って、志賀原発の運転再開を許さないよう強く要求する。
2007年4月20日
石川県平和運動センター 代表 嶋垣 利春