汚染水対策は事実上破綻!(2013.7,2014.1)

発端は1匹のネズミ  (共同通信)2014.1

東京電力福島第1原発事故から3年目の2014年、放射性物質を含む汚染水が地下に広がり、海へ流出し続けている深刻な状況が確認された。トラブルも相次ぎ国際的な懸念が高まる中、「東電任せ」だった国が前面に乗り出す事態に発展した第1原発の1年を振り返る

発端は1匹のネズミだった。3月中旬、停電が起き、大量の使用済み核燃料が入っている複数のプールの冷却システムが停止。全面復旧するまで約29時間もかかり不安が広がったが、仮設配電盤にネズミが侵入しショートしたのが原因だったと後に判明した。
停電の公表が遅れたことも不信感を高め、東電の広瀬直己(ひろせ・なおみ)社長は福島県庁を訪れ「あってはならないことが起きてしまった」と謝罪した。

しかし、その後も地下貯水槽からの汚染水漏れが発覚するなどトラブルが頻発。国会事故調査委員会の黒川清(くろかわ・きよし)元委員長は「事故は明らかにまだ収束していない」と語気を強めた。
その言葉を裏付けるように5月以降、状況は悪化し続けた。観測用井戸の水や護岸付近の海水から放射性物質が相次ぎ検出。電源ケーブルなどが通るトレンチと呼ばれる地下道にたまっている極めて高濃度の汚染水が地下に拡散し、海洋に流出している懸念が浮上した。

だが東電の対応は鈍かった。5月末に井戸水の数値の異常を把握したが、公表したのは6月中旬。原発港湾内の海水の放射性物質濃度も上昇傾向だったにもかかわらず、海洋流出を認めたのはさらに約1カ月後(参院選投票日の翌日)だった。政府は海に流出している汚染水が1日約300トンに上るとの試算を明らかにし、世間を驚かせた。
8月中旬、今度は地上タンクから約300トンの汚染水漏れが発覚。ほかのタンクやタンク群を囲うせきからも次々と漏えいが見つかった。
東電は海洋流出を防ぐため敷地海側の地盤を改良したり、耐久性の高いタンクへの切り替えを決めたりしたが、対応は常に後手に回り、批判は強まる一方だった。

国際的な懸念が高まる中、五輪招致への影響を恐れた政府がようやく重い腰を上げた。9月初旬、地下水流入を防ぐ「凍土遮水壁」設置などに国費投入を発表。「東電任せ」にせず国が前面に出る姿勢をアピールした。
直後の国際オリンピック委員会総会で安倍晋三首相は「状況はコントロールされている」と宣言。しかし、その後も港湾外の外洋で放射性セシウムが検出されるなど、汚染水問題の解決にはほど遠いのが現実だ。
一方、11月には4号機のプールから使用済み核燃料の取り出しが始まり、12月には5、6号機の廃炉も決定。30~40年を要する廃炉工程は新たな段階に入り、今後、1~3号機プールの燃料取り出しや、最大の難関である溶融燃料の取り出し方法の検討を進める。
(共同通信)

troubles2013(汚染水漏れ事故の一覧)

【福島第1原発の現状】 汚染水対策は事実上破綻  海洋流出防げるか不透明

2013/07/29

 福島第1原発からの汚染水の海洋流出を受け、東京電力は護岸の地盤改良など流出防止策を急ぐが、対策の効果は不透明だ。加えて敷地内の汚染水は1日 400トンのペースで増え続け、抜本的な解決策もない。廃炉に向け当面の最重要課題とされた汚染水対策は事実上、破綻している。

 「1リットル当たり23億5千万ベクレル」。原子力規制委員会が汚染水の漏えい源と疑う敷地海側のトレンチ(地下道)にたまっていた水の放射性セ シウム濃度だ。東電が27日、発表した。トレンチが通る2号機タービン建屋東側の一帯では5月以降、観測用井戸で高濃度汚染水の検出が相次いでいる。

 東電は4月、港湾内で長さ約780メートルにわたって鋼管約600本を壁のように打ち込む「海側遮水壁」の工事を始めた。完成は来年9月ごろで、汚染水が海に漏れ出さないよう“念のため”の措置だった。

 ところがわずか約2カ月後、敷地海側や港湾内の海水で高濃度汚染水の検出が相次ぐと、水ガラスという薬液で護岸などの地層を固める「土の壁」の工事に着手せざるを得なくなった。

 トレンチには事故直後に流れ込んだ極めて高濃度の汚染水がたまっている。2011年4月に2号機取水口近くで汚染水漏れがあったことを受け、継ぎ 目部分の縦穴を埋めて水の流れを遮断しているが、本来は配管や電源ケーブルを通すためのトレンチに、防水処理は施されていない。

 東電は早期に汚染水を抜き取ってトレンチを埋める計画だが、ここが汚染源だとすれば、完了までは高濃度の汚染水が漏れ続ける。今月26日に記者会見した 広瀬直己 (ひろせ・なおみ) 社長は「もっと早くやるべきだった」と悔やんだ。

 一方、汚染水をどう減らすのかも重要な課題だ。建屋に流れ込む前の地下水を井戸でくみ上げて海に出す「地下水バイパス」計画は地元の強い反発でめ どが立たない。1~4号機の周囲の地盤を凍らせて地下水流入を防ぐ「凍土遮水壁」は15年の完成を目指すが、世界的に例のない取り組みで効果は未知数だ。 「まずは流入量を減らさないとだめだが、抜本策は挙げられない」と広瀬社長は苦悩をにじませている。

(共同通信)2013/07/29 12:24

カテゴリー: 環境(原水禁、核燃、放射能・食品汚染) パーマリンク

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