志賀町「志賀原発」申し入れ

志賀町「志賀原発」申し入れ (5月9日9:00~志賀町役場)


2011年5月9日
志賀町長 小泉 勝 様

      

申 入 書

 私たちがかねてより警鐘を鳴らしてきた原発震災が、3月11日に発生したマグニチュード9.0の巨大地震により、福島第一原発において現実のものとなってしまいました。巨大地震と大津波によって複数の原発で過酷事故が起きるという世界に前例のない危機的な事態は、発生からほぼ二ヵ月たった今もなお収束の兆しは全く見えません。大気中へも海へも大量の放射能が放出され続け、すでに北半球の各地で放射能が検出されFUKUSHIMAの名は全世界に知られるところとなりました。チェルノブイリ事故に匹敵する「レベル7」の過酷事故ということになっていますが、予断を許さない状況が継続していることに加え、日本の人口密度の高さを考慮すれば、放射能災害の規模とその影響はより深刻なものになるのではないかと危惧されます。福島で今なお進行中の原発震災は、北陸で暮らす私たちにとっても決して他所事、他人事ではありません。
 北陸電力は福島原発事故を踏まえて、「防潮堤の構築」や「非常用電源の確保」等の対策を発表していますが、いずれの対策も津波や電源喪失事故に対応するだけです。中越沖地震の際は柏崎刈羽原発で火災が発生して消防対策が見直され、今回の地震ではもっぱら津波と電源喪失対策がクローズアップされていますが、このような現実に起きたことの後追いだけでは、想定外の事態にはとても対応できません。
 3月11日、福島第一原発では大地震で鉄塔が倒壊し外部電源が失われ、観測された最大加速度は、4月1日になってようやく公表された暫定値によれば、2号機、3号機、5号機で新耐震設計指針のバックチェックで想定した揺れを上回っています。さらに、その後の余震では国も東京電力も「活断層ではない」として評価の対象にしなかった活断層が動いたことが報告されています。しかも、地震発生の翌日3月12日に水素爆発が起きた1号機においては、津波や電源喪失以前に地震で配管が破損し冷却材喪失事故が起きた可能性が指摘されています。観測された揺れが想定の範囲内に辛うじて収まっていた1号機において配管が破損したのであれば、耐震設計の基準地震動の想定が過小だったことになります。
 また、再循環ポンプ系配管やマークⅠ型格納容器など、かねてより耐震脆弱性が指摘されている配管や機器が相当な損傷を被ったのではないかと懸念されているにもかかわらず、その状況は明らかになっておらず、地震による被災状況の情報公開と検証が不可欠です。耐震安全性の根拠が崩れてしまった現実を、まずしっかりと認識するべきであり、小手先の「津波対策」で済ませることは許されません。
 北陸電力の耐震安全性についての立証が不十分であるとして「志賀原発2号機の運転差止め」を命じた金沢地裁判決が指摘していたようなことが、いま福島で現実に起きているのです。原発からの距離が約1kmの福浦断層が安全審査で評価対象になっていないことや、沖合いにある活断層の評価をめぐって議論があることを考慮すると、志賀原発の運転再開はとても認めることはできません。 
 百歩譲って、もし仮に耐震安全性は確保されているとしても、北陸電力が発表した計画によれば、「津波等への安全対策」がすべて講じられるまでには今後2年程度はかかる予定です。ところが北陸電力は、すでに対応した対策だけで、原子炉を再起動するための技術的課題はクリアされたとして、早期の再稼動を目論み、4月14日に開催された石川県原子力環境安全管理協議会で資料として提出された「2号機、第3回定期検査工程」にも、“6月上旬に原子炉起動試験、中旬に発電開始”と明記されています。
 しかし、全ての電源が断たれた場合に備える追加電源が設置されるのは約2年後で、現状では電源喪失時に原子炉を安定した停止状態にするには容量不足です。このままの状態で運転再開を強行することは、とうてい容認できません。
 志賀原発では、定検の際の人為ミスが原因とされる事故・トラブルが頻発しており、「北陸電力には原発を安全に運転管理する能力が、はたして十分に備わっているのか」、「これでは、たとえ地震や津波がなくても、いつどんな事故を起こすか分からない」と、地域住民だけでなく北陸電力管内の消費者らは不安を抱いてきました。現在、福島第一原発で高レベルの放射線量下における過酷な作業が長期化するに伴い全国各地から福島へ作業員の応援派遣が相次ぐ中で、被曝線量の上限を撤廃する方針が打ち出される事態になっています。福島以外の原発の保守や定期検査にあたる作業員を確保するための“当面の間の措置”という、いわば泥縄式の対応です。このように作業員の不足が心配され、とくに専門的知識をもつ技術者の確保が困難な状況下で原発の運転を強行すれば、今後はさらに人為ミスによる事故・トラブルが頻繁に発生するのではないか、ささいな事故が大事故に発展してしまうのではないかと、本当に不安です。
 原発震災が現実のものとなってしまった今でも、北陸電力の「安全性よりも経済性優先」という企業体質は、少しも変わっていません。「安全最優先」を口にしながら、実際には「早期の運転再開のためには安全対策など後回し」という北陸電力の対応は、今まで事故・トラブルが発生するたびに何度となく繰り返されてきたものです。このような北陸電力に、これ以上、原発の運転を任せてはおくのは、原発の潜在的な危険性の大きさを考えると、あまりにも危険です。
 志賀町民および周辺住民らの安全・安心を確保するため、そして、福島で起きてしまった原発震災を北陸で繰り返さぬために、下記の事項を申し入れます。 

1)志賀原発1号機、2号機ともに運転再開を認めず、廃炉にするよう北陸電力に申し入れること。 
 とくに、福島第一原発1号機~4号機と格納容器が同じマークⅠ型の1号機は、すみやかに廃炉にす
 るための措置をとるように、北陸電力に申し入れること。
2)津波などへの対策に使う予定の150億円は、省エネルギーや再生可能エネルギー利用促進のため 
 に活用するよう、北陸電力に申し入れること。
                 

ストップ!プルサーマル・北陸ネットワーク
共同代表 盛本 芳久(石川県議会議員) 
田尻  繁(富山県議会議員)
柚木  光(石川県平和運動センター代表)
堂下 健一(命のネットワーク事務局)
中垣たか子(原発震災を案じる石川県民)

カテゴリー: 志賀原発 パーマリンク

コメントは停止中です。