志賀2号機水素濃度異常上昇に対する抗議声明(4月2日)

志賀原発2号機の原子炉手動停止に関する声明

 全国の多くの市民が再起動に反対し、抗議の声をあげる中、3月26日に原子炉を起動を強行し、試験運転を行っていた志賀原発2号機で、昨日午前11時9分、気体廃棄物処理系の水素濃度が異常上昇した。北陸電力は運転を継続する中で原因究明にあたったが、原因は解明されず、本日午前5時58分、原子炉停止に向けて出力降下を開始した。
 2号機は一昨年のタービン損傷と昨年の臨界事故隠し発覚などで約1年9ヶ月停止しており、その間に北陸電力は「建設の適切性の確認」として、全設備について書類検査を行い、1,317台の機器については開放・分解点検を実施している。引き続き第1回の定期検査では1,724台の機器について開放・分解点検を行い、9,296台については外観点検・性能確認を実施している。これらの総点検作業により、北陸電力は3月4日、「全設備の健全性を確認した」と発表している。
 臨界事故隠しの再発防止策の策定とその100%実施に加え、この設備の健全性確認が、県や志賀町の再起動了承の判断の前提になったと思われる。多くの県民もこれによりトラブルなく志賀原発は運転されるものと信じたのではないか。予想されていた結果とはいえ、このように県民の信頼をまたしても裏切った北陸電力と、それを許してきた県と志賀町、そして原子力安全・保安院の責任は重大である。以下4点、問題点を指摘する。
 今回のトラブルについて、放射能漏れはないとはいえ、水素ガスは爆発を起こしやすい可燃性ガスであり、排ガス対策の重要性は言うまでもない。原因究明はまさにこれからであるが、まず第1に、何より原因の徹底糾明と万全の再発防止対策の確立が求められる。それまでは再起動が認められないことは当然である。今度こそ見切り発車は許されない。
第2に、依然として残る「行程優先意識」を指摘しなければならない。北陸電力は警報発生から約19時間、原発を停止せずに、原因の調査を続けてきた。「安全最優先」はスローガンだけで、GW明けとも言われる営業運転開始の日程を優先した対応であったと言わざるを得ない。昨年12月に女川原発で同様のトラブルが発生しているが、東北電力は原因調査のため、原子炉を緊急停止させている。臨界事故隠しの原因として分析された「行程優先意識」がそのままだということが明らかになった。県もすぐに原子炉を停止して原因の徹底糾明を求めるべきであった。私たちがこれまで指摘してきた緊張関係の無さがまたしても示された。
第3に、通報体制についても検証が必要である。安全協定にもとづく連絡基準では「発電機の出力変化が必要となったと時」とあるが、県や志賀町への連絡は、出力を低下させてから3時間近く経ってからの事後報告である。これでも「速やか」と判断できるならば、連絡基準の見直しが必要である。
最後に、徹底した原因究明は当然として、さらに踏み込むべきは、「全設備の健全性の確認」に漏れがあった事実を踏まえての対策の立案である。今回の原因が設備の健全性に起因するのか、運用に関するのかは現時点では不明であるが、いずれにしても北陸電力が自慢した「健全性の確認」だけでは原発の安全運転は確保されないことが明らかとなった。このようなことが繰り返されることがないよう、北陸電力は再度、ゼロから安全対策の再検討を行うべきである。県や志賀町、そして原子力環境安全管理協議会は、北陸電力の経営優先の判断に追随することなく、住民の安全の確保の立場に立って、志賀原発の安全対策を再度、徹底検証すべきである。

 2008年4月2日
 

石川県平和運動センター
代 表  嶋垣 利春

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